皆様こんにちは、霜柱です。
ドイツの作家、ハンス・エーリヒ・ノサックの『短篇集 死神とのインタヴュー』(神品芳夫・訳、岩波文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
第2次世界大戦の頃の話が殆ど
この本には11の短篇が収録されています。
実を言うと、私は「死神とのインタヴュー」というタイトルに惹かれて、中身がどんなのか全く確認せずに読みました。
なので、収録されている短篇の大部分が、第2次世界大戦中のドイツだった事を知ったのは読み終わってからです。
この頃のドイツといって思い浮かぶのはナチスやヒトラーかもしれません。
しかし、この本にはそういった事は書かれておらず、寧ろ空襲を受けて地獄にいる様な市民達が描かれているのです。
著者のノサック自身もハンブルクにて空襲を経験しています。その影響か、読んでいて非常に生々しく描かれている様に感じましたし、戦争の恐ろしさがこれでもかという程伝わってました。
他とは一線を画す稀有な戦争文学だと言って良いと思います。
印象に残った短篇について
11の短篇が収録されていますが、個人的に印象に残った短篇の感想を簡単に書いていこうと思います。
「人間界についてのある生物の報告」・・・宇宙人?が人間界について語っています。辛辣でありながらも最後は❛人間たちとおなじ生き方をしたい❜と締めているのがポイントですね。
「ドロテーア」・・・ハンブルク空襲時に出会った女性と軍人の男性のお話。途中までは良かったんですが、結末がちょっと雑だった様な…。
「死神とのインタヴュー」・・・一体この社長という人物結局何者なのでしょうか? 安部公房の短篇を彷彿とさせました。
「実費請求」・・・ブラックユーモアに溢れていますね。短篇だからこそインパクトがあるのかもしれませんが、「もし長編だったら、どんな展開になったかな?」と思わせてくれました。
「滅亡」・・・この作品が1番印象に残りました。ルポルタージュ形式で空襲時のハンブルクが描かれています。淡々とした書き方がリアルさを増幅させたと言って良いでしょう。
まとめ
ドイツの作家というと、ゲーテ、ホフマン、トーマス・マン、ヘルマン・ヘッセ、ミヒャエル・エンデなどが有名でしょう。
そういった方々と比べるとハンス・エーリヒ・ノサックは知名度が劣るかもしれません。
しかし、なかなか密度の濃い短篇を書いていた事を、この『短篇集 死神とのインタヴュー』で知れます。特に「滅亡」を読んでほしいですね。
決して明るく楽しい作品ではありませんが、密度の濃い戦争文学だと私は思いました。