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ジェームズ・ヒルトン『チップス先生さようなら』を読んだ感想

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皆様こんにちは、霜柱です。

イギリスの作家、ジェームズ・ヒルトンJames Hilton)の小説『チップス先生さようなら』(菊池重三郎・訳、新潮文庫)を読みました。

今回はこの本の感想を書いていこうと思います。

感想

綺麗で淡い文体

文体が良いですね。綺麗で淡い感じがします。読んでいて何故かホッとする気持ちになれるのです。

私はチップスと同時代を生きてはいませんが、読みふけっている内に当時のイギリスに行った気持ちになりました。
これはヒルトンが人物の内面や風景の空気感を巧みに描写が出来たからだと断言して良いでしょう。

それだけでなく、日本語訳をした菊池重三郎の手腕も大きい。ただ日本語に訳しただけでなく、当時のイギリスの空気感を見事にそのまま日本語にして表す事が出来た、と。そう言い切って良いと思います。

印象に残った登場人物

チップス以外で印象に残った人物はまずキャサリンです。
明るい性格で、躊躇わずにしっかりとチップスに自分の意見を言います。

彼女の存在がチップスの人生に多大な影響を与えた事は言うまでもないでしょう。
こういう奥さんがいたら頼りになりそうですね。

ロールストンという人物も印象に残りました。
学校の教育方針や運営についてチップスと対立します。温かくてユーモアのあるチップスと比べると、彼は機能的で冷たく感じる所があります。

ただ、私はロールストンのいう事にも一理ある気がしました。何でもかんでも新しいやり方にすれば良いとは思いませんが、古いやり方に固執しすぎるのもどうかな?と感じましたね。

伝統と革新。このバランスって本当に難しい・・・。
チップスとロールストンの会話で、しみじみその様に思いました。

印象に残った言葉

作中でチップスはユーモアをいくつも言います。その中で個人的に印象に残った言葉を引用します。

近ごろの政治家は、(略)九ペンスの約束に対して四ペンスを、(略)与える方法を解決したようだな

これはもう読んでいて吹き出しましたよ。物凄い皮肉が込められている。今でもそのまま通用しそうですね。

映画も良かった

この作品は映画化されています。私は事前に1969年のピーター・オトゥール主演のバージョンを、本書を読む前に観ました。

読み終わった後、原作の雰囲気や趣きをしっかりと映像で捉える事が出来ていた、と改めて凄く感じましたね。
オトゥールのチップスも本当に見事だったと言えます。ハマり役と断言して良い。

簡単なまとめ

読んでいると何だか懐かしい気持ちになります。そうなるのはヒルトンの優しく淡い文体が功を奏しているからでしょう。

大きい起承転結みたいのはありません。作中、第一次世界大戦が起きて学校の近くに爆弾が落ちた、という描写がありますが、それは数多ある出来事の1つとして淡々と取り上げている様に思えました。

もしかすると、人によっては刺激が足りない様に感じるかもしれない。

けれども、本書は当時のイギリスの雰囲気を見事に捉えており、読んでいると心が落ち着いてくる。そんな仕上がりになっているので、その様な作品が好きな方は是非読んでみてほしいと思います。

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ABOUT ME
霜柱
ハードロック/ヘヴィメタル(特にメロハー・メロスピ・メロパワ・シンフォニック)を聴いたり、宝塚(全組観劇派)を観たり、スイーツ(特にパフェ)を食べる事が好き。これらを主に気儘なペースで記事にしています。 Xやインスタも気儘に投稿中。