ノルウェーのゴシック・メタル・バンドが1998年にリリースした3rdアルバム。
全10曲収録(日本盤ボーナストラック2曲含む)。
バンドメンバー
- Raymond I. Rohonyi:Vocals
- Liv Kristine Espenæs:Vocals
- Frank Claussen:Guitars
- Tommy Olsson:Guitars
- Eirik T. Saltrø:Bass
- Hein Frode Hansen:Drums
- Lorentz Aspen:keyboards,Piano
前作『VELVET DARKNESS THEY FEAR』でメンバーだった2人のギタリスト、Geir FlikkeidとTommy Lindalは脱退し、彼等が抜けた後、新たにFrank ClaussenとTommy Olssonがギタリストとして加入した。
各楽曲ごとの感想
①Cassandra
出だしはピアノとドラムとギターで静かに始まり、AメロではRaymondが暗く呟く様に歌っている。
サビになるとギターとベースのリフがちょっと強めに出てくるが、そんなに激しくはない。
Livは3:35ぐらいからようやく歌い始める。また、Livが歌っている最中のギターのフレーズがキラキラしているのが良かった。
この曲自体はあまりメタルの要素は感じられなかった。だが、音全体にリバーブがかかっていて幻想的でゆったりとした雰囲気に仕上がっているのがポイントだろう。
個人的にはヒーリングミュージックっぽさを感じたので、眠る時に良いかもしれない。
曲の長さは6分45程だが、その長さはそんなに感じなかった。
②Lorelei
今作のお薦め曲!
出だしからとてもノリの良いアップテンポな曲である。サビになるとゆったりとしたテンポになるが、それはむしろ緩急になっている。
曲の構成も1番と2番で少し違うので、聴き飽きさせない工夫をされている気がした。
心地良い激しめのズンズンとしたギターのリフと、リバーブのかかったギターの音色(ファンファンファンみたいな音)のコントラストも良い。
Raymondはノーマルに、Livは消え入りそうな儚い声で歌っているのも印象的だ。
今作の中では異曲だが、非常に中毒性の高い曲に仕上がっている。
非常に素晴らしいと思う。
③Angélique
スローな曲でRaymondとLivはほぼ一緒に歌っている。
ギターはそれ程前面には出て来ず、激しさはあまり無い曲だ。荘厳なキーボードの音色が曲を高貴に仕上げていると言って良いだろう。
全体的にリバーブがかかったサウンドで、且つゆったりとしている甘い雰囲気の曲なので、聴いていると身体が浮いてきて何処かに行ってしまいそうな気持ちになる。
良い曲だとは思う。しかし後半はサビの繰り返しがちょっと多すぎる気がしたので、そこを減らしたら、もっと良くなったと思う。
④Aœde
ゆったりとしたミドルテンポの曲。この曲ではRaymondの方が主に歌っており、サビでは2人で歌っている。
印象に残ったのはAメロでポコポコしたリズミカルなベースの音である。ちょっと面白い音色だと思った。また、リバーブのかかったキーボードも際立っている。
曲自体は時折シンフォニックな要素を感じさせる仕上がりになっており、特に5:49頃からはストリングス風の音色になり、最後はファンファンファンみたいな音になってフェイドアウトする。
悪くはないが良くもないかな・・・。
⑤Siren
スロー寄りのミドルテンポの曲で、打ち込み風の軽いドラムとベースと寂しげなピアノで始まる。
サビになるとシンフォニックなキーボードの音色が登場。曲は終わりに近づくに連れ、ピアノとその後ろで薄く流れているキーボードのみの演奏になてフェイドアウトをする。
この曲はLivがメインに歌っており、曲自体は物悲しい雰囲気なので、彼女の声とピッタリ合っていると思う。
7分強の曲だが、そんなに長さは感じさせなかった。
でも、全体的には良くも悪くもない曲だった気がする。
⑥Venus
高めのピアノの音で始まり、その後シンフォニックなキーボードが展開するミドルテンポの曲。
歌っているのはLivの方が多いが、BメロでのRaymondのデスボイスと、ズンズンとしたギターのリフが曲にアクセントを与えている。
コーラス調のキーボードも良い。
全体としては神秘的で浮遊感のあるシンフォニックな曲に仕上がっており、Livの歌声をしっかりと活かしていると言えるだろう。
非常に良い曲だと思う。
⑦Poppæa
荘厳な出だしが良い意味で緊張を与えてくれる。しかし、全体としては軽めのサウンドになっている気がした。
AメロではRaymondとLivはほぼ一緒に歌っており、サビではLivの方が多く歌っている。
神秘的でシンフォニックな曲だ。リバーブのかかったギターが活躍しているが、それを聴いていると魂がどこかに行ってしまいそうな気持ちになる。
この曲も良い曲だと思う。
⑧Bacchante
仄暗い静かなキーボードから始まる曲。
AメロはRaymondが歌っており、楽器の音は控えめ。なので聴いていると気持ち良くなって寝てしまいそうになるが、サビになると楽器の音が強くなる。
4:50頃からRaymondが10秒程、早口の語りの様に歌った後に、ようやくLivも歌いだす。だが、この曲ではLivはコーラスに徹していると言って良いかもしれない。
この曲もシンフォニックなか感じになっている。
しかし、ハッキリ言ってしまうが、ノリもメロディも展開もイマイチで、盛り上がりに欠け冗長さを感じてしまった。
6分40秒程の曲だが、聴いていて辛くなる・・・。
せめて4分台に纏めてくれたらと思う。
⑨Virago
日本盤ボーナストラック。
ギターの音はヘヴィだが、ミドルテンポでゆったりとしているので、そんなに激しくは聴こえないと思う。
また、ディレイがかかったキーボードが特徴的で、それが1番印象に残った。
曲は神秘的な雰囲気があるが、残念ながらこの曲も冗長さを感じてしまった。もう一捻りほしい所である。
5分20秒程の曲だが、この曲も4分台に収めれば間延びせずに済んだかもしれない。
⑩Samantha
日本盤ボーナストラック。
ちょっと軽い音の出だしに「オッ」と思った。リズミカルなドラムとベースとAメロでの煌びやかなキーボードが印象的である。
また、他の曲と比べて、あっさりした仕上がりになっているのも特徴的だろう。
Raymondは基本的にノーマルで歌っているが、時折デスボイスになる時がある。それが力強いので曲にアクセントを与えていると感じた。
全体的には良いと思うが、⑨と同じくもう一捻りあるとより良かったかもしれない。
しかし、4分台に収まっているのはGOODと言える。
全体的な感想
前作『VELVET DARKNESS THEY FEAR』と比べると、シンフォニックな曲が増えている。
特に③④⑥⑦にその要素が強くあるので、シンフォニックな曲が好きな人は気に入ると思う。
ただ、個人的に1番印象的に残ったのは②である。シンフォニックな雰囲気は無い。だが、出だしからとてもノリが良く、起承転結がしっかりと組み立てられている。今作の中でこの曲は異色だが、中毒性が高く何回も聴きたくなる様な気持ちにさせられるのである。
この曲を聴く事が出来ただけでも、儲けものだと私は思う。
とは言っても、アルバム全体で考えると話は残念ながら変わってくる。
聴いて思ったのは冗長な感じを受けてしまった事だ。ハッキリ書くなら無駄に長い曲が存在するのである。特にそう思ったのは⑧⑨だ。もう聴いていて辛くなってくる。先に書いたがせめて4分台に収めてくれたら、曲に締まりが出て構成もハッキリして良くなったのでないかと思ってしまった。
辛辣な事も書いたが、個人的にはこの様なサウンドは好きだ。
何故なら荘厳なキーボードやヘヴィなギターのリフが入っている曲が多く、ドラムの音も力強くハッキリとしているからである。演奏も上手いと思うがMIXも良いのだろう。
後はやっぱり、RaymondとLivの歌声のコントラストが光っている事だ。前作よりも2人の歌声が更に活かせている気がした。
Raymondはノーマルな歌声とデスボイスを使い分けており、Livは可愛らしく儚げに歌うだけでなく、時に艶っぽさも含ませている所もある。なので非常に耳を引き付けられる歌になっていると言えるだろう。
何回も書いているがシンフォニックな要素が強めで、RaymondとLivの男女ツインボーカルが光っている作品となっている。
この手の音楽が好きな人は是非1度聴いてみてほしい。
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