ノルウェーのゴシック・メタル・バンドが2006年にリリースした6thアルバム。
全12曲収録(日本盤ボーナストラック2曲含む)。
バンドメンバー
- Raymond I. Rohonyi:Vocals
- Nell Sigland:Vocals
- Frank Claussen:Guitars
- Vegard K. Thorsen:Guitars
- Hein Frode Hansen:Drums
- Lorentz Aspen:Keyboards
[主なゲストメンバー]
- Magnus Westgaard:Bass
- Sareeta:Violin
ベーシストはEirik T. Saltrøというメンバーが2000年まで在籍していたが、彼が脱退してからは正式なベーシストは入れていない。
今作から女性ボーカリストがLiv Kristine EspenæsからNell Siglandに変わっている。
また、ゲストとしてRAM-ZETで活動しているSareetaがViolinで参加。
各楽曲ごとの感想
①Storm
サビ始まりの曲。
Aメロはヘヴィだがサビになると叙情的になる。全体的に儚さがありながらもノリが良い曲になっている。聴き易くてPOPさもあると思う。
楽器に注目するならピアノだ。特段技巧的という訳ではないが、暗めの雰囲気が良い味を出しているのが良い。
新ボーカリストのNellも活き活きとして歌っており、非常に曲に馴染んでいる。
4分未満に纏まっているのもGOODと言えるだろう。
非常にインパクトに残り、繰り返し聴きたくなる曲だ。
②Silence
ややハイテンポのノリの良い曲。
AメロではRaymondが早いテンポで歌い、サビではNellが活き活きと歌っている。
この曲の特徴は何といってもエレクトロニックなキーボードの音が入る事だろう。それによって曲に華をもたらしていると思った。また、それと打って変わって時折入る切ないピアノも良い。
ダンサブルでありながらも悲し気な雰囲気が漂っているのが印象的。
この曲も4分未満に纏まっているのがGOOD。
③Ashes And Dreams
ミドルテンポでバラード風の曲だ。
悲し気なストリングス風の音を含んだバンド演奏で始まる。この時点で既に引き込まれた。
AメロはRaymond、BメロとサビはNellが歌っている。特にNellの歌声が輝いていると言って良いだろう。
メロディも切なさが溢れていて良い。シンプルだが奇を衒っていない所に好感が持てる。
欲を言うならギターソロがあるとより良かったかもしれない。
それでも、この曲は充分に良くて印象に残りやすいと感じた。
④Voices
ミドルテンポの曲。
バラードではないが激しい曲という訳でもない。
主に歌っているのはNell。
メロディはサビよりもBメロの方が良かった。
この曲は正直、盛り上がりに欠けて、どうしても印象に残りにくかった。何回聴いても「どんな曲だっけ?」となってしまう。
ただ、3分台というコンパクトな時間に纏めているのは好感が持てた。
⑤Fade
暗めで荘厳なピアノから始まる曲。良い出だしだ。
主に歌っているのはNell。
全体的には叙情的でドラマチックな雰囲気がある。個人的にはこういった曲は好きである。ただ、ちょっと物足りなさや冗長さを感じてしまった。6分近くの曲だがせめて5分くらいに纏めて、更に緩急を付けたらより良くなったのではないかと思う。
後は、もう少しシンフォニックさを強めたら、曲に輝きが出たかもしれない。
もしくは、完全なアコースティックにすれば、他の曲と差別化が一層出来た様な気もする。
⑥Begin And End
ノリの良いバンド演奏から始まる。今作の中ではハイテンポの方かもしれない。
主に歌っているのはNellだが、時折入るRaymondの歌はスパイスの様な役割を果たしている。
この曲は前半はまあまあという感じだが、後半になってから多少盛り上がってくる。ただ、個人的には良くも悪くもない印象だ。
⑤と同じく、よりシンフォニックなアレンジをすればもっと良くなったと思う。
⑦Senseless
静かに始まるミドルテンポの曲。
この曲も主に歌っているのはNell。
ハッキリと書いてしまうが、④と同じく盛り上がりやインパクトに欠ける。メロディがイマイチ。
4分30秒程の曲だが、それでも長く感じてしまった。
⑧Exile
不穏な感じの出だしは印象的。
ミドルテンポの曲でベースの音が所々目立つ。
Raymondの歌声で始まるが、サビではNellが歌う。
ただ、全体的な感想としては⑦と同じで、どうにも印象に残らない。やはりメロディが弱い気がする。
⑨Disintegration
ちょっとハードな感じで始まる曲。
1番のAメロはRaymond、サビはNell、2番のAメロは2人で歌っている。
この曲もメロディが印象に残りにくく、やっぱりサビが盛り上がらない。全体的にパンチの弱さを感じてしまう。
だけれども、楽器の展開はやや工夫されていると思った。
⑩Debris
荘厳なコーラス調のキーボードから始まる。
ドラマチックな曲で、Lorentzのキーボードが活躍している曲だ。
Nellの歌声も他の曲と比べて良い。
ただ、曲自体は悪くないと思うが、サビがどうしても・・・盛り上がらないのである。
⑪Beauty In Deconstruction
日本盤ボーナストラック。
バンド演奏から始まる曲で、今作の中ではヘヴィな方である。
スロー寄りのミドルテンポの曲だが・・・、何回も同じ事を書いてしまい申し訳ないが印象に残りにくい。
「どこがサビ?」と言いたくなる曲で、全くもって盛り上がりに欠ける。
⑫Storm (Pride And Fall Club Version)
日本盤ボーナストラック。6分20秒程の曲。
この曲だけ完全に異質である。それもその筈。本当にどこかのクラブでかかりそうな打ち込みのパーティソング風にアレンジされているのだから。
音楽の方が大きくて歌声は少し小さめなMIXになっている。
原曲の雰囲気だが前半はほぼ無いが、後半になるとそれが少し頭を出してくる。
全然メタルの要素が無いアレンジなので好き嫌いが分かれるかもしれない。でも個人的には良いと思ったし、むしろ他の通常の曲より印象に残った。
全体的な感想
今作『STORM』はサウンド的には王道なゴシック・メタルに仕上がっており、良い塩梅でダークな雰囲気に、でも重々しくなりすぎない聴き易い作品に仕上がっている。
また、この作品から女性ボーカリストがLiv Kristine EspenæsからNell Siglandに変わっているが、彼女の声を存分に堪能出来る。Livほど可憐な歌声ではないが、ストレートでハッキリしている歌声は曲に充分に馴染んでいる。
主に歌っているのはNellで、RaymondはNellの歌声を引き立てている役目に徹している気がした。なのでRaymondの歌声をもう少し取り入れた方が良いという意見があるかもしれない。でも個人的には2人の歌の割合のバランスが悪いとは感じなかった。
肝心の曲だが・・・。
どうにもこうにも印象に残りにくい曲が多い。①~③は結構良いが、④以降は「う~ん・・・」という思いが否めない。
その原因はメロディや曲の展開かもしれない。曲と一緒に聴き入ったり盛り上がったりする気持ちになれないのである。展開にダルさを感じてしまう。ハッキリ言ってしまうと冗長なのだ。
曲によってはヘヴィなギターをもっと前面に出すとか、キーボードの音色をもっとシンフォニックな感じにするとかしたら、曲ごとに特徴が出て印象に残りやすくなるのではないだろうか。
ただ、どの曲も出だしは良かった。それだけに非常に勿体ない仕上がりになってしまっている気がする。
また、今作は初期の様な重々しい雰囲気も無ければ、Livの様な歌声を味わえる訳でもない。なので、そういうのを望んでいる人にとっては今作は嵌まらない可能性がある。
だから、「とにかくゴシック・メタルが3度の飯より好きだ!」「THEATRE OF TRAGEDYの曲ならどれも大好きと言える自信がある!」という人向きの様な気がする。
ちょっと厳しい事を書いてしまったが、あくまで私個人の意見だと思って頂ければ幸いである。
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