オーストリアのメロディック・メタル・バンドが2003年にリリースした3rdアルバム。
全11曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。
バンドメンバー
- Sabine Edelsbacher:Vocals,Backing Vocals
- Lanvall:Guitars,Piano,Keyboards,Bouzouki
- Andreas Eibler:Guitars
- Roland Navratil:Drums
[ゲストメンバー]
- Stefan Model:Bass
- D.C.Cooper:Vocals(Track 11)
- Dennis Ward:Recording,Mixing
前作『ARCANA』まで在籍していたベーシスト、Kurt Bednarskyは脱退し、新たなベーシストは入れずに4人体制となった。
ベースは全曲、Stefan Modelという人物が弾いている。
ゲストボーカルとして、当時Silent ForceにいたD.C.Cooperが11曲目でSabineとデュエットしている。
また、Dennis Ward(当時PINK CREAM 69)が、1st『SUNRISE IN EDEN』から制作メンバーとして引き続き参加している。
各楽曲ごとの解説と感想
①The Undiscovered Land
シタールの演奏で始まるエキゾチックな曲。全体的に情趣のある雰囲気を持つゆったりとした曲調である。4:27からはテンポが速くなり、プログレシッブ・ロックの様な展開になる。その後の3番のサビも演奏のスピードが速くなり、疾走感が出てくるので、後半になると盛り上がってくる曲だろう。
聴き所が多い曲だと思う。
②Skyward
鮮麗なキーボードの音色が配され、そこにメタリックなギターが重なる疾走曲。
瑞々しいサウンドと活気のあるリズム、そして流れる様な歌メロも印象に残る。メロディック・メタルが好きな人なら気に入る曲であろう。
欲を言えば、この曲を1曲目にした方が、良かったと思う。①も良い曲だが、この曲の方が、初めて聴いた人をより引き付けると思う。
③The Final Curtain
お薦め曲である。
冒頭にキーボードのキラキラ音が2秒入った後すぐ、Sabineのボーカルが入る。しっとりとしているが、少し寂しげな雰囲気があるバラード曲だ。
前作には「A Moment Of Time」というバラード曲があったが、こちらの方が、落ち着いた感じの曲である。
Sabineは表現力が上がって、低音を駆使して感情豊かに歌唱している。その歌声を聴いていると、日常生活の中で、自身の中に積もった塵芥を、取り除いてくれる様な気持ちになる。
④Perennial Dreams
東洋的なメロディを奏でるブズーキから始まる疾走曲。この曲も②と同様に、瑞々しいサウンドと鮮麗なキーボードの音色を聴く事が出来る秀曲である。また、②よりもSabineは低域で歌っており、芯が強い感じがした。低音域も魅力的になってきている。
⑤Fly At Higher Game
疾走感のあるメロディック・メタルだ。どの楽器も力強く演奏しており、聴く者を奮い立たせる力がある。それだけではなく、やはり耳に残る美しいメロディが良い。
⑥As Far As Eyes Can See
お薦め曲である。
少し悲しげなピアノから始まるバラード曲。
サビの部分の歌唱を聴いていると、まるでミュージカルのヒロインが歌っている場面を想像出来る。特に壮大な曲という訳ではないが、それが逆にSabineの歌を目立たせる様になっている。
演奏も良い意味で、前に出ず引いているからこそ、曲の持ち味を充分に活かす事が出来ているのだろう。
⑦On The Verge Of Infinity
日本盤ボーナストラック。ミドル・テンポの曲。
この曲で印象に残るのは、Bメロの時に流れてくるピコピコするキーボードの音である。この音はまるで1990年代に流行ったゲームボーイのソフトの音を思い出させる(現代の子供達はゲームボーイというのを知っているのだろうか?)。
ただ、それ以外はあまり印象に残らない感じが否めない気がする。主な理由はメロディにインパクトがないからだと思う。
多少ユニークな曲ではあるが、情緒感は少なめである。
⑧Deadend Fire
サビ始まりのミドル・テンポの曲。
Sabineの流れる様な歌唱は聴いていて気持ちが良い。しかし楽曲全体に緩急が乏しく、平べったい感じがした。歌メロは良くも悪くもなくという感じである。
もう少しキーボードの装飾音を入れたり、ギターのリフを強くしたら良くなったのではないかと思う。
⑨Farpoint Anywhere
メロディアスなリフから始まる疾走曲。AメロからSabineの聴き手を誘いこむ様な歌声には引き込まれる。ただメロディが少し弱く感じる。
冒頭の部分や間奏のギターソロは良いが、楽曲としては、いまいち盛り上がりに欠けると思った。曲にもう少しキラキラ感が欲しい。
⑩Where Silence Has Lease
波の音とアコースティック・ギターの音色で始まるバラード曲。
この曲の特徴はドラムである。普通にスネアやハイハットを叩いているのではなく、ほぼタムを叩き回しているトリッキーな演奏をしているのである。その為、そのタムのドゥドゥドゥンという音が耳に残る。
歌メロはBメロがなく、Aメロとサビのみであり、その2パートがあまり変化が無いので、ぼ~っと聴いているとサビの部分に入っても気づかないかもしれない。
ただ、3:00頃からギターソロが入り、そのままCメロに入る。Cメロになると、少し曲に艶が出てくるが、もっと聴きたいという所でフェイドアウトあしてしまう。なので、多少もどかしく思ってしまう曲だ。
⑪Red Ball In Blue Sky
名曲である!!
10分弱の大曲。出だしのギターリフに混ざった、美しく幻想的なキーボードの音色から聴く者を引き込ませる。
もうその時点で「この曲は間違いなく良い曲だ」と確信出来る。メロディアスでノリが良く、瑞々しいサウンドが最初から最後まで続く。耳に残るメロディが多く、曲の展開も上手いので、10分弱という長さを感じさせない。
また、この曲には、当時Silent ForceにいたD.C.Cooperがゲストボーカルとして参加している。力強く豊かな感情表現を持つD.C.Cooperの声質は、繊細なSabineの声質と非常に合っており、そのコントラストが曲により輝きをもたらしている。
『APHELION』の中ではこの曲が、私にとって1番のお薦めである。
全体的な感想
清爽感があり、繊細なSabineの歌唱と時に幻想的なキーボードの音色が、異世界へと誘ってくれる。また、ギターソロは甘く心地良い音色で、それが特色となっている。
雰囲気的には前作『ARCANA』と同じ方向だが、今作は更に、メタル・バンドとしての纏まり感がある。Sabineの歌声は前作『ARCANA』迄は中音~高音がメインだったが、今作は低域で歌っている所も多い。歌唱力・表現力も上がっており、声に艶が出てきている。
ギターリフもよりメタリックになっている。ただ、前作『ARCANA』の「全体的な感想」にも書いたが、メタリックになったとはいえ、他のバンドと比べると、大人しい印象を受けるかもしれない。
とは言うものの、曲全体のレベルは高いし、展開が上手く、メロディが印象に残りやすい曲も多い(⑦~⑩は違うかもしれないが)ので、飽きが来ないと思う。
特に⑪の様な10分程の曲の展開がとても上手く、聴き手を引き込む力がある。大袈裟と思うかもしれないが、⑪を聴くだけでも、今作『APHELION』を買う価値があると思っている。
鮮麗で美しいメロディアスな曲が好きな人は是非聴いてほしい。
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