オーストリアのメロディック・メタル・バンドが2006年にリリースした5thアルバム。
全9曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。
バンドメンバー
- Sabine Edelsbacher:Vocals,Backing Vocals
- Lanvall:Guitars,Piano,Keyboards,Bouzouki,Mandolin,Pipa
- Frank Bindig:Bass
- Roland Navratil:Drums
[主なゲストメンバー]
- Robby Valentine:Backing Vocals&Choirs(Track 1.7.8),Piano Solo(Track 1),Recording
- Dennis Ward:Backing Vocals&Choirs(Track 2.3.5.6,9),Recording
2nd『ARCANA』~4th『SHINE』までセカンドギターを担当していた、Andreas Eiblerは脱退。また、3rd『APHELION』からは正式なベーシストがいなかったが、Frank Bindigが加入した。
ゲストとしてVALENTINE名義で活躍しているRobby Valentineがコーラスとピアノで参加している。
Dennis Wardも引き続き参加している。
各楽曲ごとの解説と感想
①Terra Nova
お薦め曲である。
前奏が無く冒頭から、SabineとRobby Valentineの歌声から始まる曲。その為、意表を突かれた感じを受けるだろう。
メロディがとても印象に残りやすく心地良い。Robby Valentineがコーラスで活躍しており、Sabineの可憐な歌声と相性が良い為、この曲の持つ繊細さや美しさをより引き出している。
4:35からのピアノソロはRobby Valentineが弾いている。
②Flame Of Passion
非常にキャッチーなミドル・テンポの曲である。メタルの要素は薄く、派手な展開は無いが、ノリが良く、一緒に歌いたくなる様なメロディがある曲だ。
CDで聴いていると、少し地味に感じるかもしれないが、案外ライブ映えする曲なのではないだろうかと思う。
③Evermore
異国情緒の雰囲気があるキーボードで始まる曲。ミドル・テンポの曲だが、サビになると、少しテンポが速くなり、ノリが良くなる。疾走曲ではないが、今作の中では速い方かもしれない。
また、この曲にはギターソロが無い。ギターはひたすらリフを弾いて、バッキングに徹している。その様な曲はEDENBRIDGEでは珍しいかもしれない。
④The Most Beautiful Place
美しいバラード曲。この曲の演奏はSabineのボーカルとキーボードのみである。
シンプルな作りだが、その分Sabineの声を最大限に活かしている曲だ。雄大なサウンドをバックに、美しく朗々と歌い上げているSabineの歌声を聴いていると、神聖な場所にいる気持ちになる。
EDENBRIDGEで作曲をしているLanvallの手腕が、どんどん上がっている事を実感出来ると思う。
⑤See You Fading Afar
フランジャーのかかったギターリフから始まる曲。
この曲は正直、全体的にメロディが弱い。間奏の所ではキーボードのリフが出て来て、一瞬「オッ」となるが中途半端な感じだ。
1番のネックはSabineの歌声を、あまり活かせられていない所だろう。
ギターソロが無いので、それとキーボードソロを入れて鮮やかにしても良いのではないだろうか。
⑥On Top Of The World
お薦め曲である。
ゆったりとしたミドル・テンポの曲。ポップで覚えやすいメロディとサウンドが、耳に非常に心地良く響く。
HR/HMの要素が薄いので、物足りなく感じる人がいるかもしれない。しかし、私にとっては中毒性が高く、何回もリピートしてしまう曲なのである。
爽やかでリラックス出来る曲なので、この曲を聴いて伸び伸びとした気分になるのも良いと思う。
⑦Taken Away
暗めのしっとりとしたピアノの演奏から始まるバラード曲。この曲も④の様にバンド演奏ではない。
オーケストラ風のサウンドをバックに、Sabineは力まず優しく歌っている。その歌声を聴いていると、心に落ち着きをもたらしてくれる様に感じるので、疲れた時に聴くと良いかもしれない。
⑧The Grand Design
10分強の大作。出だしはゆったりとしたキーボードとアコースティックギターの演奏なので、微睡む気持ちになるが、その後のサビではメロディックなバンド演奏へと展開していく。
小気味良いサウンドとノリの良いテンポが、聴く者を引っ張ってくれる。
ただ、3:56からはソロのヴァイオリン、マンドリン、ピーパ(中国琵琶)やフラメンコギターの演奏が矢継ぎ早に出てくる。それにより雰囲気がどんどん変わっていく、
6:54~8:04のギターソロは速弾きだけでなく、泣きのサウンドも出てくる。その後の歌メロも琴線に触れるメロディが出てくる。
その為、10分強という長さがあるが、冗長にはなっておらず、むしろ色々聴き所がある曲だと思う。
⑨For Your Eyes Only
日本盤ボーナストラック。カバー曲である。原曲はイギリスの歌手、SHEENA EASTONが1981年に発表している。この曲は映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の主題歌であり、映画と共に大ヒットした。
EDENBRIDGEは原曲に対して忠実にカバーしている。神秘的な雰囲気をもつこの曲は、EDENBRIDGEにピッタリだ。Sabineの歌声はSheenaよりも線が細い声だが、その分この曲の持つ繊細さや不可思議さに合っているので、違和感は全く無い。
原曲を知らない人が聴いたら、こちらがオリジナルと思ってしまうのではないだろうか。
全体的な感想
サウンドはポップなメロディアス・ハードという感じがした。メタルの要素は非常に薄い。ギターはメタリックなサウンドの時もあるが、基本的に激しくない。それはベースとドラムも同じである。
キーボードのサウンドも④⑦を除けば、リード楽器ではなく、ボーカルを支える方に尽力している気がした。その為、今作『THE GRAND DESIGN』で要となっているのはSabineの歌声である。他の作品もそうだが、Sabineの繊細で美しい歌声が活きている。
Sabineの歌声はRobby ValentineとDennis Wardのコーラスと非常に相性が良く、相乗効果が成功していると言える。ただ、その分Sabine自身のコーラスがあまり聴けないという面がある(個人的にはSabineの歌声が複数重なった、あの幻想的で浮遊感のある声が堪らないのだ)。
曲自体は疾走曲はなく、ミドル・テンポが殆どなので、勢いを求める人にとっては物足りなく感じるかもしれない。
しかしキャッチーで聴きやすく、高品質なメロディアスの作品になっているので、激しい以外のHR/HMを聴きたいという人にお薦めである。
私的には、EDENBRIDGEが今までリリースしたアルバムの中では上位にくる。
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