皆様こんにちは、霜柱です。
私は先日、雪組公演『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』を観劇し感想を書きました。
今回はその作品の役ごとの感想を書いていこうと思います。
役ごとの感想
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:彩風咲奈
スウェーデンの伯爵で、フランスに留学している役。
やはりスタイルの良さが目に付きますね。足が長くて見栄えがします。
繊細な演技がとても良かったですが、マリー・アントワネットの事に関しては勇ましさも出していた様に感じました。
今作で彩風さんは退団をします。
生粋の雪男として活躍されました。新人の時から注目されていましたが、その分プレッシャーも大きかったでしょう。
ですが、それを乗り越えて雪組のトップスターに就任しました。
ご卒業後もどうか幸多き人生を歩む事を心から祈っております。
マリー・アントワネット:夢白あや
フランス国王ルイ16世の妃の役。
登場した瞬間から目を引きました。類まれなその美しさは他を寄せ付けない程です。惚れ惚れするとか心を射抜かれるというレベルを超えていますね。もう何も言えない状態になってしまいました。
人それぞれ好みはあると思いますが、美しさなら歴代のマリー・アントワネットを演じてきた方々の中で間違いなくトップに入るでしょう。
しかし美しさだけではありません。
憑依をしたその演技力も目を見張る物がありました。特に牢獄でのフェルゼンやメルシー伯爵とのやり取りは、声色や調子などを変えていたのです。夢白さんの演技の力によって、間違いなく屈指の名場面になったと断言して良いでしょう。
一体どのくらいの引き出しがあるのか? ただただ圧倒されるばかりです。
それだけでなく歌も格段に上達。以前はフニャフニャしていて言葉の輪郭がハッキリしておらず決して上手いとは言えませんでしたが、今はしっかりと聴かせる歌唱力になっていました(今作ではエトワールに抜擢!)。
まだまだ夢白さんの進化が止まらない事が確認出来た作品とも言えます。
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:朝美絢
近衛隊隊長(後に衛兵隊隊長)の役。
朝美さんの強みはキリっとした表情と強い目力です。今作でもそれを遺憾なく発揮していました。
今作では普段の男役よりほんの少し高い声になっており、ちょっと儚げな感じにもなっていた様に思えました。
オスカルも過去に色々な方々が演じていますが、美しさという点では夢白さんのマリー・アントワネットと同じくトップに間違いなく入るでしょう。
メルシー伯爵:汝鳥伶
マリー・アントワネットの後見人で、オーストリアの伯爵の役。
汝鳥さんはやはり登場するだけで場を締めます。
特に印象に残ったのは牢獄でのマリー・アントワネットとのやり取りです。
「貴方はもう子供ではないのだから、このステファンと言う人形を取り上げました。しかし今それを返しに来ました」(←一言一句覚えていませんが、こんな感じのニュアンス)を含むやりとりは涙を誘いました。
追随を許さない汝鳥さんの演技は本当に素晴らしいです。
グスタフ3世:夏美よう
スウェーデン国王の役。
国王としての貫禄が強く出ているだけでなく、一言話すだけで聴いている側が背筋がピーンとなってしまう様な威厳がありました。夏美さんの低音ボイスって魅力的ですよね。
それだけではなく、フェルゼンをフランスに行かせようとする時の場面は、王としての器の大きさをしっかりと表現出来ていたのが伝わってきました。
出番は1幕目の終わりの方だけでしたが、しっかりとその存在を観客に印象付けたと言って良いでしょう。
モンゼット侯爵夫人:万里柚美
宮廷の貴族の役。
シッシーナ夫人とのやり取りが観客の笑いを誘っていました。まさか『ベルサイユのばら』でこんなに笑いを誘う場面に出くわすとは思ってもいませんでした。
モンゼット侯爵夫人はオスカルの事を美しいと言いますが、シッシーナ夫人はフェルゼンの方が美しいと言います。ちょっとアホなやり取りでしたが、物語の進行の上で緩急になっていたと思います。
2幕目でも登場しますが、よりによってギロチンの前でまた同じようなやり取りをしたせいで、民衆から貴族という事がバレてしまいます。その後どうなったかは描かれていませんが、多分処刑されたでしょう・・・。
と言うより「何故、こんな場所でそんなやり取りをする?」とツッコみたくなる場面でしたね(笑)。
しょうもないやり取りでも万里さんは品を忘れていなかったので、それが強みだと改めて思いました。
ブイエ将軍:悠真倫
フランス陸軍大臣で、オスカルの上官の役。
悪役ではありませんが、オスカルとは対立しています。
オスカルや平民に対して見下した態度を取っており、「自分の言う事は絶対!」みたいな傲慢さが強く出ていました。それが物語上のスパイスになっていたと思います。
悠真さんは今回も演技がとても上手かったですが、気のせいでしょうか?
今作では〈悠真色〉がちょっと薄かった様な感じもしました。
ルイ16世:奏乃はると
フランス国王で、マリー・アントワネットの夫の役。
国王としての寛容さ・優しさがとても滲み出ている演技でした。台詞を一言一言噛み締める様に話しているのがとても良かったです。
革命委員会から呼び出しがあって、チュイルリー宮を去る時は堂々としていながらも「もう最期だろう」という覚悟が伝わってきました。
奏乃さんの演技は観ていて本当に安心感を覚えますね。出来たらソロの歌も聴きたかったです。
ヨルゲン陸軍大将:透真かずき
スウェーデン陸軍大将の役。
フェルゼンを何としてでも、フランスに行かせない様にする強固な姿勢が伝わってきました。決してフェルゼンと敵対している訳ではありませんが、スウェーデンの評判を落とさない様にしよう懸命に務めているのが良かったです。
出番は1幕目の終わりの方だけですが存在感をしっかり残しました。
プロバンス伯爵:真那春人
ルイ16世の弟の役。
フェルゼンを小馬鹿にしたり、兄であるルイ16世に呆れていたりと、ちょっと嫌な印象を受ける役柄でした。
しかし、革命委員会から呼び出されたルイ16世について行こうとします。兄を思うその気持ちには心を打たれました。
限られた出番の中でも真那さんの演技力が存分に発揮出来ていた役と言えるでしょう。
デュガゾン:久城あす
フェルゼン邸の執事の役。
主人であるフェルゼンがどこかへ行かない様に神経質になっている感じが、観ていて伝わってきました。
出番は1幕目のみでほんの少ししかありませんでしたが、それでも久城さんの演技が光っていたので、印象に残りました。
シッシーナ夫人:杏野このみ
宮廷の貴族の役。
オスカルとフェルゼン、どちらが美しいかというモンゼット侯爵夫人としており、それが観客の笑いを起こしていました。
モンゼット侯爵夫人とはペアの様で、ツッコミがいない漫才コンビっぽくも観えましたね(笑)。
杏野さんの台詞が多く聴けてとても嬉しかったです。
ジェローデル:諏訪さき
近衛隊少佐で、オスカルの部下の役。
真面目で誠実な人柄が伝わるジェローデルになっていました。非常に落ち着きがあったので観ていて安心感が伝わりました。
役柄としては普通な感じでしたが、逆に難しかったと言えるでしょう。しかし、諏訪さんは台詞を一言一言大切に丁寧に話しており、それにとても好感を覚えましたね。
ロザリー:野々花ひまり
ベルナールの妻の役。
研12ですが良い意味でベテランを感じさせない瑞々しいロザリーになっており、穏やかで優しい雰囲気が観ていて伝わってきました。
しかし、2幕目最初の群衆の場面は打って変わって、力強く迫力のあるダンスを披露しており、その姿は勇壮な女戦士だったと言って良いでしょう。
牢獄の場面では誰よりもマリー・アントワネットの気持ちに寄り添い、か弱い声が胸に染みましたね。
野々花さんは得意の演技やダンスを余す所無く発揮しており、雪組の要になっていると強く思いました。
しかし、野々花さんは今作で宝塚を退団します。
退団発表は驚くと共に寂しさを覚えましたが、退団後もお幸せな人生を歩む事を心から祈っております。
アラン:眞ノ宮るい
衛兵隊の役。
キリっとした雰囲気で、台詞を言う時は力強くハキハキとしていました。
とても良かったですが、もう少し目立たせてほしいとも思ってしまいました。
アンドレ・グランディエ:縣千
オスカルの乳母の孫で、オスカルの幼馴染の役。
自然体の演技が観客を惹きつけたと言って良いでしょう。観ていてスッと入ってくるのです。縣さんは本当に色々な役を演じる事が出来ます。今作では歌も上達していたのが見受けられました。
橋の上で銃に撃たれて倒れる場面はとても難しかったと思いますが、丁寧に自然に演じていたと思います。
ジャンヌ・バロワ・ド・ラ・モット:音彩唯
宮廷の貴族の役。
登場した瞬間、他のキャラクターとは明らかに違う雰囲気を醸し出しており、赤紫色のやや毒々しい輪っかのドレスが似合っていました。
成り上がり貴族の様な役で台詞を話す時は、丁寧な時とそうでない時を上手く混ぜていましたが、とても自然で上手かったです。
2幕目に登場した際は、啖呵を切っており、観ていて圧倒されました。
音彩さんは実力派である事は周知の事実ですが、この様な非常にクセのある役もこなせる事に驚いたと共に、更なる飛躍が楽しみになりましたね。
ベルナール:華世京
革命派の新聞記者で、ロザリーの夫の役。
研5とは思えない堂々とした立ち居振る舞いが素晴らしかったです。上級生に負けず劣らずの勢いがあり、全然新人には見えません。
台詞もハッキリと話しており、更に強弱や調子もしっかり場面ごとに変えていたのが印象的でした。
2幕目最初の群衆のダンスの場面では中心となっており、革命家としての強固な意志を表現出来ていたと思います。
現在、既にこれ程の実力を持っているのですから、研10ぐらいになった時は一体どんな男役になっているのか?
それが非常に楽しみです。
小公子:紀城ゆりや
小公女:華純沙那
小公女:白綺華
1幕目と2幕目の最初にそれぞれ登場します。
3人共可愛らしい雰囲気が出ていましたが、特に華純さんは目を引きました。
王子:星沢ありさ
王女:音綺みあ
それぞれ、マリー・アントワネットとルイ16世の息子と娘の役です。
2人共初々しい演技をしていて、可愛らしかったので目を引きました。
現在、星沢さんは研3、音綺さんは研2なので舞台役者としての実力は、まだまだこれから磨かれると思いますが、既にスターとしてのオーラが出ているので、今後どの様になっていくのかが楽しみです。
芝居巧者な雪組
月組は〈お芝居の月組〉と言われていますが、雪組も負けず劣らずです。
『ベルサイユのばら』は何回も再演していますが、再演は新作とは違う難しさがあるでしょう。
しかし、雪組生は役を演じる時、先に演じていた方をただなぞるだけでなく、それぞれ少しずつ工夫して変えながら役を構築していったのではないかと感じました。
宝塚が『ベルサイユのばら』を初めて舞台化したのは1974年です。そこから既に50年も経過しています。50年も経つと普通は古臭さが出てきてしまってもおかしくないと思いますが、決してそうはならなかったです。
演出を担当した植田紳爾先生、谷正純先生を始めとしたスタッフの手腕も勿論ありますが、やはり雪組生の役者魂が途轍もなく素晴らしかったという事に尽きると思います。
今作『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』で雪組トップスターの彩風さんは退団されますが、後を継ぐ朝美さんが更に雪組を昇華させてくれるでしょう。
今の雪組が凄いと思うと共に、新たな雪組がどの様になるか、それを心待ちにしています。
以上、『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』の役ごとの感想でした。
皆様はどの役が印象に残りましたか?
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