皆様こんにちは、霜柱です。
山口瞳の『なんじゃもんじゃ』(角川文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
おじさん2人の旅
本書は主人公と知人のドスト氏(ドストエフスキイに似ているらしい)の、おじさん2人で日本のあちこちを旅する紀行文的な小説となっています。
行く場所は様々です。
屋久杉、身延山、福島競馬場、比叡山、太皷谷稲成神社、瑠璃光寺、吉野梅郷、霊山寺、大東岬、能登、函館など、本当にあちらこちらです。
旅と言っても、そこで楽しんで思い出を作る訳ではありません。2人にはそれぞれ奥さんがいますが、そこからの逃避行らしいです(笑)。
因みに主人公は上品な禿との事(笑)。
取り留めのない2人の会話が良い
2人はよく会話をしますが、取り留めのない話が多いです。しかもそれを真面目な調子で、時に哲学的に話しているので、より面白く感じました。
特にそれぞれの奥さんについて語ってる箇所は時折「ブホッ」と吹き出してしまいました。奥さんが聞いたらどう思うでしょうか(笑)?
ただ、その会話もどこか悲哀があるのです。中年男性の寂しさみたいのが誌面上からジンワリと伝わってくるのも良いですね。
後は❝蟹族の横行❞のシーンも「ガハハ!」と声に出して笑いそうになりました。とても痛快です。そこまで言うか? という感じでした。
因みに「蟹族」って1960年代後半から1970年代に流行った言葉ですが、もう完全に死語ですね。年配でも、この言葉を覚えている方は少ないでしょう。ただ、蟹族に似た様な存在は今もいると思います。
映画化してほしい!
読み終わった後、この作品って映画化したら面白そうに感じました。出来たら山田洋次監督に手掛けてほしいです。山田監督は『男はつらいよ』シリーズを手がけました。
『なんじゃもんじゃ』と山田監督の作品って結構親和性が高いと思うのです。
もし、映画化したら何気無い旅の中で起きる笑いや悲哀を優しく描く様な作品になる気がしますね。
現在とは合わない部分も…
本書は1974年に文庫本として出ました。舞台も1970年代なので結構時代を感じる部分が多いです。
また、実を言うと女性に対する意見が現在から見ると差別っぽくなる様な箇所もありました。なので「現在で同じ事言ったら炎上しそうだなぁ」とも感じたのです。
ただ、そういった意見を絶対的に断定しているのではなく、自嘲的で揺らぎがあったりします。裏を返すと、このおじさん2人も苦悩を抱えながら生きているんだなぁ、とも感じる事が出来ると言えるでしょう。
簡単なまとめ
本書はそんなに起承転結がある訳ではありません。何か大きな出来事が起きて、あれやこれやみたいな展開は一切起きません。もうずっとゆったりな雰囲気でマイペースに綴っている感じです。なので、スリリングな作品を求める方にとっては本作は刺さらないかもしれません。
しかし、先に書いた様に2人の悲哀のあるユーモアや、人生の機微みたいなのを感じてみたい方には面白く読めると思います。