皆様こんにちは、霜柱です。
五木寛之さんの『奇妙な味の物語』(集英社文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
読後、不思議でズッシリとした重い物を感じた
この本には17の短編が収録されています。どれも短めで読みやすいですが、タイトル通り本当に奇妙な物語ばかりでした。ちょっとグロいのもあれば、SFっぽい、ホラーっぽいのもあります。どれ1つとして同じ様な作品が無いのも良いですね。
どこかのレストランで食事をした際に、「食べた事がある様で無い味付けだなぁ」みたいな感情に似ているかもしれません。
なので、読み終わった時は不思議な気持ちになったと同時に、胃にズッシリとした重さを感じました。なかなか濃い物語ばかりだったからというのが理由だと思っていますが、それにしても、かなり充実した短編集だと言えます。
描かれている物語の時代設定は1970年代~1980年代辺りなので、時代を感じる部分もありますが、読んでいると自然と鮮明に情景が思い浮かびます。
五木さんの拘りをとても強く感じた作品でした。ただ、それと同時にこの短編を書いていた時の五木さんの心理状態がどうなっていたかもちょっと知りたいです。
短編ごとの感想(みたいなもの)
先に書いた通り、『奇妙な味の物語』は17の短編が収録されています。ここからは短編ごとの感想(というよりメモ?)を本当に簡単に書いていきます。
「ファースト・ラン」・・・随分と大人びた9歳の少年と8歳の少女ですが、既に人生に対して諦観している様に感じました。
「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」・・・人は人に対して嫉妬するだけでなく、物に対しても嫉妬するようです。
「ストレインジ・フルーツ」・・・スティーヴン・キングの短編を彷彿とさせます。あぁ、爪を立てないで!
「ホエン・ユー・アー・スマイリング」・・・過去に自分がされた事を、自分の見習いの少年にしちゃあ駄目でしょ。パワハラの域を超えています。
「スーパー・チルドレン」・・・5人の子供達は大人になったら、どんな感じになるのかが気になりますね。
「赤い桜の森」・・・桜の下に埋まっているのが、まさか人の…。
「サムライ・ホテル」・・・痛い! 痛い! 痛いよー! いくら場所が場所とはいえこんな事をするスタッフがいたらドン引きです。
「無理心中恨返本(むりしんじゅううらみのへんぽん)」・・・タイトルが面白いですね。作家と編集者、どっちもどっちな気がしました。
「カーセックスの怪」・・・車に意志があったから、こんな事になっちゃうなんて、あぁ恐ろしい。
「おさびしい王様」・・・ある意味では、そして誰もいなくなった、という感じですね。合理化も程々に…。
「白いワニの帝国」・・・都市伝説になりそうな話です。
「少年の大志」・・・〈ドクトル〉は本当の医者でも先生でもありません。そんな〈ドクトル〉になりたいという少年はやはり…。
「ああ、お母さんー」・・・もっと淡々とした文章にしたら星新一さんのショートショートになりそうです。
「片頬で笑う男」・・・適度に黙って適度に喋るのが1番良いのでしょう。
「老車の墓場」・・・結論、車は持たない方が良い(笑)。
「幸運な青年たち」・・・相棒は全く幸運ではないと思いますが…。
「優しい女」・・・女はその内に自分が勘違いしていた事を知るでしょう。
とても充実した短編集でした。
機会があったら今度は別の小説を読んでみようと思います。