皆様こんにちは、霜柱です。
先日、井上ひさしさんの『ブンとフン』(新潮文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
とにかく笑える!
この本は学生時代に読んだ事があるのですが、今読んでももう本当に面白おかしくて笑えました。スラップスティックな展開がそこかしこで繰り広げられています。
かなりバカバカしい(←褒めてます)作品になっているので、難しい事は考えずに頭の中を空っぽにして読んだ方が楽しめると言えるでしょう。
面白い部分は色々ありますが、特に個人的に噴き出してしまったのは「のりしろ」です。「のりしろ」は紙などを貼り合わせる時、のりをつける部分、という意味ですが、それがページの端に表記されている箇所があるのです。
何故かと言うと、「この本の持つ高い教育的な値打を誤解される恐れがある」からとの事(笑)。ハッキリ言ってしまえば、裸の描写が出てくるのです(全然いやらしくはありません)。その部分だけ読んで誤解させる可能性があるから、そのページの「のりしろ」にのりを付けて綴じなさい、という事なのですが・・・。
もうこの部分は笑いを堪えるのに必死でした。どうしたらこういったアイデアを思いつくのでしょうか?
井上さんの本は『ブンとフン』しか読んだ事がありませんが、かなりノリに乗っているのが文中から伝わってきました。
「とにかく笑いたい!」と思っている人にお薦めの作品だと思います。
笑いの中にも皮肉や風刺が入っている
確かに非常に笑えて面白い小説ですが、所々皮肉や風刺も盛り込まれているのが更に良いと言えます。それが良いスパイスになって、読む者を更に夢中にさせたと感じました。
個人的に印象に残ったのは、
人間に歴史なんかあってもしかたがないと思わない?(略)たとえば、しょうこりもなく戦争などを繰り返しているわ。人間には歴史なんて宝のもちぐされなのよ。
『ブンとフン』は1970年に発売されましたが、令和の2025年になった現在もその状況は全く変わっていません。いやむしろ悪化している様な・・・。
武器は人間の方がずーっと進歩してますの。小はピストルから大は水爆まで、すごい威力! 人間の知恵と努力にはいつも学ばされますわ。
これは悪魔の台詞ですが、物凄い皮肉が効いていますね。悪魔の方が威力が高そうな武器を持っているイメージがありますが違う様です。でも、これって本当に褒められているんですかね?
上記の他にも皮肉や風刺が効いている描写がありますが、それらは今も残念ながら殆ど変わっていないと言って良いでしょう。
繰り返しますが、非常に面白くて笑える小説です。
時代を感じさせる部分はありますが、そんなのは些細な事。もし笑いに飢えているなら、是非『ブンとフン』を読んでみてはいかがでしょうか?