ドイツのシンフォニック/ゴシック・メタル・バンドが2009年にリリースした3rdアルバム。
全14曲収録(日本盤ボーナストラック2曲含む)。
北欧神話をベースとした作品となっている。タイトルの『NJORD(ニヨルド)』とは北欧神話に登場する神である。
バンドメンバー
- Liv Kristine:Vocals
- Alexander Krull:Vocals,Programming,Samples
- Thorsten Bauer:Guitars,Bass
- Mathias Röderer:Guitars
- Alla Fedynitch:Bass
- Seven Antonopoulos:Drums,Percussion
[主なゲストメンバー]
- Al Dente Choir:Choirs
- Victor Smolski:Recording,Direction (Orchestra)
- Lingua Mortis Orchestra
前作『VINLAND SAGA』でメンバーだったベーシストのChris Lukhaupと、ドラマーのMoritz Neunerは脱退した。新メンバーとして、ベーシストにAlla Fedynitchを、ドラマーにSeven Antonopoulosを迎えた。但し、今作でベースを弾いているのはThorsten Bauerである。
また、当時RAGEのギタリストだったVictor Smolskiがオーケストラのレコーディングに関わっている。
各楽曲ごとの解説と感想
①Njord
民族的なメロディで幕を開けるミドル・テンポの曲。出だしだけ聴くと、未開の森の中にいる様な気持ちになる。
壮大なオーケストラとコーラスが入っており、バンドのサウンドよりオーケストラのサウンドの方が目立つ。4:18からは更に盛り上げる展開となっている。
6分弱の曲だが、少し冗長に感じた。その理由はメロディが印象にイマイチで印象に残りにくいからである。良い曲なのだが、「惜しい感」がある様に思えた。
②My Destiny
Livの可愛らしい歌声とピアノとオーケストラで始まる、ややアップテンポの曲。メタリックでノリが良い曲だ。
全体的に緩急のあるサウンドになっており、ストリングスがここぞという時に入っていて、アクセントになっている。歌メロも印象に残りやすく、ライブでは盛り上がる曲だろう。
③Emerald Island
悲しげなストリングスで始まる、ややアップテンポの曲。
この曲にも壮大なオーケストラ・サウンドが入っている。特に、サビになるとオーケストラが盛り上がり、サビの盛り上がりは曲が進むに連れて、大きくなる。
歌メロも印象に残りやすい良い曲だ。
④Take The Devil In Me
今作で1番お薦めの曲。
ひんやりしたサウンドのピアノとオーケストラから始まる曲。
全体的に入っているオーケストラ・サウンドが曲を壮大にしており、歌メロもとても印象に残る。
Alexanderのデスボイスは、サビの部分に僅かに入っているだけである。Livは可憐な声とオペラティックな声を使い分けて歌っている。
私的には、今作中で1番中毒性のある曲だ。
⑤Scarborough Fair
カバー曲。原曲はSIMON&GARFUNKELである。
ゆったりとしたメロディであり、他曲と比べると、オーケストラもバンドも抑えめで穏やかな演奏だ。原曲を知らない人が聴いたら、LEAVES’ EYESの曲だと思うのではないだろうか?
ケルト風味のある曲で、LEAVES’ EYESの要素と上手く合っている。
Alexanderは叫ばずに歌っている(笑)。
⑥Through Our Veins
ややダークなミドル・テンポの曲。
オーケストラは入っているが、大仰ではなく、バンド演奏を引き立てる役目に徹している気がした。歌メロは良くも悪くもない。
Alexanderは歌っておらず、Livは良い意味で、肩の力を抜いて歌っている様に感じた。
全体的にこぢんまりとしたサウンドになっている。また、ボーカルをSabine Edelsbacherにしたら、そのままEDENBRIDGEの曲として通用しそうである。
⑦Irish Rain
ケルト風味のあるアコースティックの曲。
笛の音色やイリアン・パイプスの音色が、この曲のアクセントや持ち味となっている。
この曲でもAlexanderは歌っていない。Livの優しい歌声に心洗われる気持ちになる曲だ。
⑧Northbound
ミドル・テンポの曲。展開が多めの曲で、2:24~3:00はよりシンフォニックになる。
しかし、歌メロがあまりパッとせず、全体的に印象に残りにくい曲である。
⑨Ragnarok
壮大なオーケストラとコーラスで始まるミドル・テンポの曲。サビでは特にシンフォニックになる。Livはこの曲ではずっとオペラティックに歌っている。
ややダークな雰囲気であり、映画のサントラとして使われてもおかしくない程の、音の厚みであり、それが聴く者を引き付ける。
『ONCE』の頃のNIGHTWISHを思い出させるサウンドだ。
⑩MORGENLAND
バラード曲。Livの歌声とオーケストラのみの演奏である。
とても心地の良い曲で、眠る時に調度良い曲だと思う。時折入るハープやピアノの音が、幻想度を高めている。Livの優しいソフトな歌声が活かされている。
ただ、出だしにパーカッション・風の音・バラライカ?の音が入っているが、正直これはいらない。
⑪The Holy Bond
ミドル・テンポの曲。軽やかでぼやけたギターの「ポンポンポン」の様な音が、出だしやAメロで弾かれる特徴的な曲。
この曲にもオーケストラやコーラスが入っているが、バンド・サウンドの方が前に出ている。特にギターが全面に出ているのを感じた。
ただ、メロディはあまり印象に残らない。
⑫Frøya’s Theme
8分半程のミドル・テンポの曲。
オーケストラやコーラスを駆使し、転調の展開もある。台詞(5:19~5:41、5:54~6:11)や「ビヨーンビヨーンビヨーン」という跳ねた様な音(0:32~1:12、1:27~1:32、5:07~5:48、6:02~6:07)が入っているのが特徴である。
ただ、この跳ねた様な音が、正直演奏の邪魔をしている様に感じた。そして、肝心のメロディが印象に残らず、全体的に散漫な印象を受けた。
⑬Landscape Of The Dead
日本盤ボーナストラック。荘厳なオーケストラで始まるミドル・テンポでノリの良い曲。
ギターのリフが潰れている様な音である。また、歌メロは良くも悪くもない。
ただ、可愛らしく歌うLivの声が印象に残った。
⑭Les Champs De Lavande(邦題:ラヴェンダー畑)
日本盤ボーナストラック。ギターとオーケストラとLivの歌のみの演奏。
歌詞が全編フランス語だが、それ以外は正直印象に残らなかった。
全体的な感想
とても壮大なオーケストラが導入されているシンフォニック・メタルだ。曲によってはバンド・サウンドよりも大きい音で収録されている。これでもかというくらい、オーケストラ・サウンドで攻めてきている作品である。
シンフォニック・メタルに属しているバンドでも、ここまでオーケストラ・サウンドをアルバム全体に取り入れている作品は、滅多にないと思う。
ただ、それは逆に言うなら、バンド演奏では特筆する物が、聴く限り無かったという事にもなる。オーケストラ・サウンドで攻めていると先に書いたが、人によっては「バンド・サウンドが埋もれている」様に感じるかもしれない。
ただ、他に特筆する事はある。それはLiv Kristineの歌声である。可憐な声とオペラティックな声を使い分けるLivの声はLEAVES’ EYESで重要な存在となっている。Livの歌声はEDENBRIDGEのSabine Edelsbacherと通じるものがある様に思えた。
もう1人のボーカリスト、Alexander Krullがデスボイスで少し歌っている(⑥⑦⑩⑪⑭では歌っていない)が、せっかくの壮大なサウンドをぶち壊している感じがしたので、正直必要無いと思ったが、逆にそれが印象に残るという人もいるかもしれない。
今作『NJORD』には、ライブで盛り上がって、観客と一緒に歌えそうな曲も収録されているが、どちらかというと聴き入るタイプの曲が多い。
それゆえ、曲の世界観に浸りたいという人、また、「何よりシンフォニックメタルが好きだ!」という人にお薦めの作品である。
貴方も、この壮大で厚いオーケストラ・サウンドに聴き入ってほしい。
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