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DARK MOOR アルバム『TAROT』感想

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スペインのメロディック・パワー・メタル・バンドが2007年にリリースした6thアルバム。

全11曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。

バンドメンバー

  • Alfred Romero:Vocals
  • Enrik Garcia:Guitars
  • Dani Fernández:Bass
  • Roberto Cappa:Drums

[主なゲストメンバー]

  • Manda Ophuis:Vocals
  • Andy C.:Drums

新ドラマーとして、Roberto Cappaという人物が、今作から加入したが、レコーディング終了後の加入の為、ドラムを演奏しているのは元メンバーのAndy C.である。
表記が無いが、ガテラル・ボイスをしているのはEnrikだろう。
また、ゲスト女性ボーカルとしてManda Ophuisという人物が参加している。Manda Ophuisは当時、オランダのシンフォニック・メタル・バンド、NEMESEAで歌っていた。

各楽曲ごとの解説と感想

①The Magician

1分半程のインスト。バンド演奏ではなく、オーケストラ風の曲である。
低く暗めのストリングスから始まる曲。荘重な雰囲気で、気品を持った曲である。

②The Chariot

名曲である!!

サビ始まりのミドル・テンポの曲。もう出だしだけで名曲と確信出来る曲である。良い具合に入っている重みのあるストリングスが、曲を荘厳にしており、ゲスト女性ボーカルのMandaの歌声が、Alfredのボーカルと見事に合っている。
また、歌メロも非常に印象に残りやすく、ノリも良い。ツボに嵌まるメロディが多いので、メロディック・メタル・ファンは嬉しくなる曲だと思う。サビの部分はライブでは合唱が起きるだろう。

③The Star

鋭く速いヴァイオリンのリフが印象に残る疾走曲。この曲もメロディが良い曲である。
特に2:38~3:39の間奏は劇的である。Enrikの琴線を揺さぶるギターソロは勿論の事だが、そこにストリングスも重なり、メタル・オーケストラと言ったら大袈裟かもしれないが、その様な感じである。
この曲は特にストリングスが活躍する曲だ。

④Wheel Of Fortune

力強いバンド演奏で始まる疾走曲。この曲もメロディが印象に残りやすい
Alfredの低い声と、ゲストのMandaの女声が非常に良い対比になっている。
また、サビの時に入ってくるキラキラ音や、間奏で少し演奏されるチェンバロの音色が隠し味として、曲を引き立てている様に感じた。

⑤The Emperor

サビ始まりの曲。コーラス隊が活躍する曲である。
やや抑えた様な歌い方をするコーラスが、少し不気味感じるが、それが逆に、この曲の特徴となっている。Enrikのガテラルも少し出てくる。
Alfredはこの曲では低音から高音を、使いこなして歌っている。
ギターリフは激しく演奏しているが、サビでは音量が小さく感じた。もしかしたら、歌を活かす為に、そうしたのかもしれない。

⑥Devil In The Tower

8分弱の長さの曲。展開も多く曲調も変わる。
この曲では2番のAメロ(と言っていいのかな)をEnrikのガテラルでずっと歌っており、2番のサビの後ではAlfredが裏声を駆使しながら、歌っている事に気付くだろう。
また、この曲の特徴は何といってもコーラス隊のアカペラがある事だ。4:21~5:31がその部分であり、同じ歌詞を左と右に振り分けて歌っている。この曲で1番印象に残るのではないだろうか。

歌メロではサビ前のBメロが1番良かった。

⑦Death

ヘヴィで速いギターリフから始まる曲。この曲でもコーラス隊やストリングスが多用されている。
しかし、美しい歌メロはあまり無い。メロディよりも勢いを重視している感じである。
ギターはリフを演奏している時は、音が潰れて聴こえる所があり、あまり良い音ではない。ソロ(3:06~4:00)になると、最初と最後がアメリカのHR風な音色になり、中間はメロスピの様になるという、やや不思議な音作りである。

⑧Lovers

甘い音色のギターで始まるバラード曲。ただバラードといっても、壮大なアレンジなどがある訳ではない。ストリングスは全編に渡って演奏されているが、添え物的な感じである。
この曲では、AlfredのボーカルとMandaのコーラスに焦点を置いている気がした。特に、Alfredは柔らかめの声で歌っているのが印象に残った。

ただ、もう少しストリングスを入れるか、バンドの演奏をもう少しゆっくりした物にすれば、他曲との差別化が出来て、より良くなったのではないかと思う。

⑨The Hanged Man

ハードな疾走曲で、バンド全体がタイトな演奏である。
この曲の特徴は、歌詞がはっきり聴き取れない不気味なコーラス(3:12~3:53)と、ギターソロがあちこち(0:10~0:21、1:41~1:52、3:38~4:21、5:09~5:20)に入っている事である。但し、間奏(3:38~4:21)以外は同じフレーズである。

肝心の歌メロだが良くも悪くもないというのが正直な感想だ。

⑩The Moon

11分半の大曲。曲の中に、ドイツのクラシックの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「運命」と「月光」が取り入れられている。
出だしの「運命」の「ダダダダーン」はEnrikのギターで演奏されている。ベタな始まりの様に感じてしまったが、有名過ぎるフレーズだからかもしれない。ただ、それ以降はとてもドラマティック且つ豪華なアレンジが施されている。
4:51~7:17は「月光」のあの有名なフレーズが導入されており、原曲に忠実に演奏している。ピアノ演奏をバックに、ドラム・ベースが脇を固め、Enrikのギターが悲哀を表現しているのを感じた。

Alfredはこの曲でも低音から高音を存分に使って歌唱しており、少しだがハイトーンを出している所もある。コーラス隊が機械みたいな声質(特にサビ)が気になったが、それが逆に印象に残った。

ギターソロやストリングスを多用していて、展開が多くても目まぐるしくなることは無く、11分半の長さを感じさせない構成になっている。その為、ダレる事も無い。

非常に上手くメタル風にアレンジされた曲で素晴らしいと思う。

⑪Mozarts March

日本盤ボーナストラック。オーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「トルコ行進曲」のカバーである。
バンド演奏であり、Enrikのギターソロが主旋律を奏でている。ただ、ギターソロの音は低めであり、琴線を揺さぶったりする事は無い。

悪くは無いのだが、DARK MOORには合わない曲だと思う。「トルコ行進曲」は軽やかに踊りだしそうな明るい曲だ。それに対してDARK MOORの曲は、憂いを持っているのが特徴である。その相反する2つの要素が、ちぐはぐになってしまっている様に感じた
前作『BEYOND THE SEA』ではヴィヴァルディの「四季:冬」をカバーした「Vivaldi’s Winter(日本盤ボーナストラック)」が収録されていたが、それはDARK MOORの要素と合っていたので違和感は無かった。

余談だが、「トルコ行進曲」をカバーしているメタル・バンドは他にもいるが、正直どれもイマイチである。「トルコ行進曲」とメタルの相性が悪いと思うのは私だけだろうか?

全体的な感想

非常に素晴らしい作品であり、DARK MOORを初めて聴く人にもお薦め出来る。メロディも美しく、インパクトの強い曲が多い。また、Enrikの繊細なギターとAlfredの感情豊かな歌唱が非常に相性が良く、聴いていて、とても心を揺さぶられる事が多かった。

アルバムとしては、前半の方に強力な曲が多い気がしたが、それでもコーラスやストリングスを多用して、ドラマティックでメロディアスな世界を築き上げた事は間違いないと言える。
確かに2nd『THE HALL OF THE OLDEN DREAMS』や3rd『THE GATES OF OBLIVION』の様な「クサメロ」感は無いかもしれない。ピロピロしたギターソロや、やや安っぽいキーボードの音色(←褒めてます)は4th『DARK MOOR』から既に薄れてきていた。しかし今作『TAROT』を聴けば、決してメロディが減退した訳ではない事が分かるだろう。いや、むしろ以前よりメロディは満ち満ちている。バンドの演奏の技術や表現力が増し、成熟し充実している事も確認出来る。

曲にも1本太い芯が通ったずっしりとした様なものを感じる(←メロスピのファンは逆にそれが嫌だと言う人もいる)。聴いていて良い意味での安心感がある。単純に過去の焼き増しをするだけでなく、自分達の持ち味を活かし、より進化していこうという思いを感じた。

先にも書いたが、ドラマティックでメロディが充実している作品なので、その様な作品が好きという人は是非聴いてほしい

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ABOUT ME
霜柱
神奈川県在住の30代。ハードロック/ヘヴィメタル(特にメロハー・メロスピ・メロパワ・シンフォニック)と宝塚(全組観劇派)が好きです。 ツイッターも行っており、気儘に呟いています。