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DARK MOOR アルバム『AUTUMNAL』感想

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スペインのメロディック・パワー/シンフォニック・メタル・バンドが2008年にリリースした7thアルバム。

全11曲収録。

バンドメンバー

  • Alfred Romero:Vocals
  • Enrik Garcia:Guitars
  • Dani Fernández:Bass
  • Roberto Cappa:Drums

[ゲストメンバー]

  • Itea Benedicto:Soprano Voice

ゲストのItea Benedictoは、当時NIOBETHというシンフォニック・メタル・バンドのボーカルとして活動していた。現在はRETRIBUTIONというシンフォニック・ブラック・メタル・バンドのボーカリストである。

各楽曲ごとの解説と感想

①Swan Lake(邦題:スワン・レイク~白鳥の湖)

お薦め曲!

ロシアのクラシックの作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの「白鳥の湖」のカバーである。
出だしから、一聴して分かるあの有名フレーズを、オーケストラを含めたバンド演奏で聴く事が出来る。
とても壮大な仕上がりになっている。特にAlfredの歌唱が冴え渡っており、時にはオペラ歌手の様な低音で朗々と歌っている時もある。
オーケストラとバンド演奏の相互作用が、とても良く合致していて、ドラマティック且つ、繊細で力強い演奏をしている。「メタル・オーケストラ」という言葉がピッタリ合うと思う。
コーラスやIteaのソプラノボイスも、ただの添え物ではなく、楽曲を盛り上げる為に、ここぞという時に活躍している。

前作『TAROT』では「The Moon」という曲で、ベートーヴェンの「運命」と「月光」をアレンジしていたが、こちらの方がよりシンフォニックにアレンジされている。

②On The Hill Of Dreams

お薦め曲!

ノリが良いミドル・テンポの曲。
緩急があり、バンド演奏・ストリングス・ギターソロなど、それぞれがバランスよく構成されていると思う。ギターソロは2:58~3:38の時に弾かれており、最初はメロウな音色だが、後半はもう少し輪郭がハッキリした音色になる。
歌メロも覚えやすく、名曲である。

所で、この曲の出だしが『オペラ座の怪人』の表題曲に似ていると思うのは私だけだろうか?

③Phantom Queen

お薦め曲!

出だしのヴァイオリンの速いリフが印象的な疾走曲。
この曲も壮大なストリングスが導入されている。Aメロでは無いが、それ以外の所では劇的に演奏され、曲をこれでもかという程、盛り上げようとしている。
また、1番のサビの後にAlfredの歌とEnrikのガテラルの掛け合い(1:29~1:48)が出てくる。

壮麗な名曲である。

④And End So Cold

名バラード曲!!

この曲は全体的に哀愁を帯びた雰囲気であり、ストリングスが更に哀しみの気持ちを強くする効果を発揮している。
AlfredはAメロ・Bメロでは感情を抑えた様に歌っているが、サビでは力強く、そして憂いをもたらす声で歌っている。

DARK MOORのバラード曲は他に「The Sound Of The Blade」「Your Symphony」「The Mysterious Maiden」「Green Eyes」などの名曲があるが、この曲は完全にこれらの曲を超えた出来栄えになっていると思う。
聴いていると哀しくなってくる。なのに、何回も聴きたくなる曲である。

⑤Faustus

サビ始まりのミドル・テンポの曲。
ストリングスをバックに、Alfredとコーラス隊が歌唱しているのが印象に残る。ガテラルも入っており、4分程の長さでありながらも、壮大で劇的な曲である。
特に気に入ったのは、3:00~3:24の間奏でギターソロと優美なストリングスの合奏だ。とても圧巻に感じた。

⑥Don’t Look Back

出だしだけ聴くとメロスピっぽい雰囲気の曲だが、すぐにオーケストラ・サウンドが大々的に演奏され、疾走感のあるシンフォニック的な曲になる。
この曲は特にバンド演奏よりもオーケストラ・サウンドが全面に出ている感じがした。
また、印象に残っているのはサビだ。歌詞がただ「Ah! Ah!…」だけなのである。「歌詞は考えなかったのかい?」と最初は思ったが、逆にそれが心地良く流れる美しいメロディを、作っているのかもしれない。

⑦When The Sun Is Gone

⑥に引き続いて疾走曲である。
この曲もオーケストラ・サウンドが沢山入っている。
豪華且つ壮大で、時折急き立てる様な演奏が、印象に残ると思う。

⑧For Her

管楽器の音色が全体的に散りばめられている、ややハイ・テンポの曲。
この曲は、ストリングスよりも管楽器の音色の方が前に出ている。
勇壮さがあると同時に、どこか郷愁を誘う曲である。また、この曲も壮大な展開だ。

⑨The Enchanted Forest

バラードではないが、スロー・テンポの曲。
あくまで、今作『AUTUMNAL』の中での話だが、この曲はオーケストラが少なく感じた。その為、他曲と比べると、やや大人しい曲に感じるかもしれない。それでも3:03からのサビの繰り返し(1回のみだが)は、オクターブ上になり、Enrikのギターソロも重なる。それらの効果により、グッとくる雰囲気になっている。

⑩The Sphinx

サビの部分がとてもノリが良く、印象に残りやすい
しかし、それ以外は正直イマイチである。オーケストラ・サウンドやギターソロ・歌メロなど、他曲と比べると弱い感じを受けた。

⑪Fallen Leaves Waltz

オーケストラ・サウンドのみのインスト。
ストリングスや管楽器のサウンドを駆使し、壮大で荘厳且つ優美な世界を作り上げている。映画やオペラで使われてもおかしくない曲である。

ただ、この曲を1番最後にした事によって、ボーナストラックの様な印象を受けた。むしろ1曲目に持ってきた方がよりインパクトがあったと思うのだが、そうしなかったのには理由があるのだろうか?

全体的な感想

オーケストラ・サウンドが好きという人には完全にお薦め出来る作品である。どの曲にも大仰と言えるくらいの劇的なオーケストラ・サウンドが導入されている。曲によってはオーケストラ・サウンドの方がバンド演奏よりも前面に出ている。他のシンフォニック・メタル・バンド(NIGHTWISH、EPICA、RHAPSODY OF FIREなど)でも全曲にここまでオーケストラ・サウンドを取り入れている作品はなかなか無いのではないだろうか?

しかし1曲1曲はとても良く、レベルが高いのだが、アルバム全体を通して聴くと、人によってはオーケストラ・サウンドがしつこく感じたりするかもしれない。
疾走曲にもバラード曲にも、オーケストラ・サウンドが沢山入っている。その為、アルバム全体の緩急には欠けている傾向があると思う。

例えば、バンド演奏無しでAlfredのボーカルとオーケストラ・サウンドのみの曲や、バンド演奏が完全に中心でオーケストラ・サウンドは隠し味程度の曲も入っていれば、アルバムに緩急が付き、曲ごとの特徴が際立つ様になったのではないかと思う。

とは言っても、先に書いた様に1曲1曲のレベルは高い。また、どの曲にも哀愁や郷愁(特に④は絶品!!)が漂っており、心を揺さぶられる曲ばかりである。
Alfredの情緒ある歌声とEnrikのメロウなギターの音色が、オーケストラ・サウンドと相俟っている。その為、豪華で壮麗な歌劇を観ている様な気持ちになるであろう。
初期の頃の様なメロスピ感は減退したが、メロディ自体は豊かにあり、シンフォニック・メタルとして昇華している。

最初に書いたがオーケストラ・サウンドが好きという人は、今作『AUTUMNAL』を是非聴いてほしい。
壮大で美しい世界が、貴方を虜にする事は間違いない。

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ABOUT ME
霜柱
神奈川県在住の30代。ハードロック/ヘヴィメタル(特にメロハー・メロスピ・メロパワ・シンフォニック)と宝塚(全組観劇派)が好きです。 ツイッターも行っており、気儘に呟いています。