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DARK MOOR アルバム『PROJECT X』感想

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DARK MOORはスペインのメタルバンド。
初期の頃はメロディック・スピード・メタルを演奏していたが、本作『PROJECT X』ではメロディアス・ハード風の演奏をしている。

PROJECT X』は2015年にリリースされた10thアルバム。
全10曲収録。
初回生産限定盤には2th『THE HALL OF THE OLDEN DREAMS』と3rd『THE GATES OF OBLIVION』から選曲&リメイクした5曲のボーナスディスクが付属している。

私が聴いたのは初回生産限定盤である。

バンドメンバー

  • Alfred Romero:Vocals
  • Enrik Garcia:Guitars
  • Dani Fernández:Bass
  • Roberto Cappa:Drums

[主なゲストメンバー]

  • Ricardo Moreno:Drums

前作『ARS MUSICA』までメンバーだったベーシストのMario Garciaは脱退。ベーシストの座には、以前在籍していたDani Fernándezが戻ってきた。
ただ、レコーディングでベースを弾いているのはRicardo Morenoという人物で、DARK MOORと親交がある間柄との事。

各楽曲ごとの解説と感想

DISC①

①November 3023

1分程のインスト。ウネウネした様なシンセの音が特徴。過去の作品のインスト曲とは雰囲気が違っている。
メロディアスさがあまりなく、DARK MOORっぽくない様に感じた。不協和音も入っていて少し不気味だが、同時に神秘性もある。

ただ、この曲は好き嫌い分かれると思う。私は正直「う~ん・・・」と思ってしまった。

②Abduction

強い風が吹いているかのようなストリングスで始まる曲。

率直に言ってイマイチな曲である。ノリもメロディも弱い。ましてやHR/HM要素がとても薄い。
それに①のインスト曲を除けば、歌入りではこの曲が1曲目になる。アルバムの最初がこれでは正直頭を抱えてしまう
また、悪い意味で隙間を感じる様な音作りをしている気がした。

③Beyond The Stars

美しい響きのピアノから始まる。バラード曲かと思いきや、疾走感やノリのある曲へと変わる。
コーラスが大活躍しており、緩急もしっかりある。楽器ではキーボードも曲を盛り上げたり、雰囲気を出す為に奮闘している。だが、1番は甘い音色のギターやキーボードだと思う。
歌メロも印象に残り、聴く度に味が出る良い曲だ。

④Conspiracy Revealed

出だしやAメロは野性的なR&Rの雰囲気であり、Alfredも声を歪ませて歌っている。だが、サビ(Bメロは無い)になると雰囲気が変わり、神秘的でカラフルなキーボードが加わりメロハーの様になる。Aメロとサビで対比のある曲になっている。

5th『BEYOND THE SEA』に収録されている「Houdini’s Great Escapade」を彷彿とさせるが、そこまで振り切ってはいない。なので、もう少しギターをギンギンにしても良かったのではないかと思う。
歌メロは良くも悪くもない

⑤I Want To Believe

静かな単音リフで始まるバラード風の曲。そこにAlfredの静かでハスキーな歌声が重なり、2番のAメロからバンド演奏になる。サビになるとコーラスも入り、Alfredも感情をより込めて歌い上げる。
タムとスネアを一定のリズムで叩いているドラムが特徴である。
メタル要素は皆無。肝心のメロディは普通という感じだ。

⑥Bon Voyage!

お薦め曲!

出だしと終わりは少しメロスピの香りがする。だがそれ以外の部分はメロハーみたいな雰囲気だ。
メロディは覚えやすくノリも良いので、ライブでは盛り上がる曲になるだろう
楽器はドラムが全体的に目立っている(音量という意味で)。また、ギターは逆にあまり前面に出ておらず、ギターソロもあまりピロピロしていない。
3:01~3:55の間は転調し、その間はハンドクラップが入り、コーラスが目立つ構成になっている。

この曲は名曲である。欲を言うなら、もし2nd~3rdの頃のDARK MOORが演奏していたら、完全に琴線をくすぐるメロスピに仕上がっていたであろう曲だ。

⑦The Existence

ノリの良い、ややハイ・テンポの曲。
サビになるとカラフルなキーボードの音色が出てくる。ストリングスも重なる為、Alfredのボーカルより目立つかもしれない。ただ、歌メロ自体は美メロなのは無い。
ギターソロは出だしが耳をつんざく様な音なので、少しびっくりするかもしれないが、その後は普通になる。

全体的に激しい感じの曲だ(あくまで、このアルバムの中で)。

⑧Imperial Earth

曲展開が変わった曲。声だけを取り上げれば、コーラス→セリフ→コーラス→暫くAlfredのボーカル→セリフの様に進む。
特にセリフの部分が多い曲である。セリフは地球人とエイリアンが会話をしている構成になっている。エイリアンの声は典型的な機械音声の様に加工されている。
荘厳なコーラスが強く印象に残るが、この曲はどこがサビか分からない。DARK MOORにとって実験的な曲の様に思えた

⑨Gabriel

オーソドックスなミドル・テンポのメロハーという感じである。
適度な激しさとメロディアスさを持っている曲だ。だが正直言うと、悪くはないけど良いという訳でもない
安心して聴く事は出来るが、もう一捻りほしかった。ギターソロがもう少し琴線を揺さぶるメロディになっていたら、印象が変わったかもしれない。

⑩There’s Something In The Skies

滑らかなピアノで始まる、8分程のバラード曲。
Alfredの伸びやかで朗々とした歌声を聴く事が出来る。
4:02から転調し始め、4:51~5:14は軽めのピアノが入り、リズムとメロディが軽快になる。5:15~6:12はミドル・テンポになり、Bメロみたいな感じの雰囲気だ。6:13~7:18はハードになり、ノリも良くなる。聴いていて気持ちが良い。7:19からは転調前の雰囲気に戻る。

転調後が少し冗長に感じる所もあるが、印象に残るメロディは多く良い曲だと思う。だが、転調せず4~5分くらいに纏めていたら名バラード曲になったのではないかと思う。
また、曲をもう少し華やかにして、キラキラしたピアノを入れたらROBBY VALENTINEが演奏してもおかしくない曲になっただろう。

DISC②(初回生産限定盤のみ)

①In The Heart Of Stone

原曲と比べると装飾を落とし、キラキラ感が無くなった印象を受けた。また、ギターの音も地味になっている。ただ、その分ベースの音が目立っている。

原曲を聴いた後に、このリメイク版を聴くと物足りなく感じると思う。しかし、それでも名曲である事に変わりはない

②Maid Of Orleans

アレンジはされていても、出だしを聴くだけで「キター!」という気持ちになった。ただし原曲ほどの高揚感は無い。
ギターとキーボードが地味になっており、幻想度は減退している。
また、歌だが正直言って前任のElisa C.Martinの方が良いと思ってしまう。何故ならElisaは力強く歌い、且つ、感情表現が細やかだからである。Alfredの歌い方は抑揚が無く、変に落ち着いている感じがした。

あと、細かい所だが、間奏の内、3:01~3:11がアレンジされていたのだが、正直残念なアレンジになっていた。

③Nevermore

この曲は原曲と比べても、それほど遜色はないと思った。確かに原曲の持つ力強さや輝きは無いが、上手くアレンジされている。
地味になっても、キーボードの音は多く入っている(原曲よりは減っているが)ので、原曲の方を好む人でも、このリメイク版は受け入れられるのではないだろうか。

ポロンポロンする音色のピアノが心地良かった。

④A New World

この曲もメロウなアレンジがされているが、出だしを聴けば一緒にノリたくなるであろう。
疾走感は保っており、基本的に原曲を忠実にアレンジしている。だが、3:13~3:36の間奏は、原曲ではピロピロしたギターソロ→ピカピカ且つシャンシャンとした音色の輝くキーボードソロだったが、このリメイク版ではゆっくりなギターソロ→速弾きソロに変わっている。
原曲と比べると華美さは減ったが荘厳になった。
また、音量のミックスのバランスが悪いのか、Alfredのボーカルが少し小さくて迫力が無かったのが気になった。

⑤Somewhere In Dreams

全体的には優雅な感じに仕上がっている。他のリメイク版もそうだが、音は丸みを帯びている。
楽器では、キーボードの音色が曲を勇壮にしており、1番活躍している。ベースの音も目立つ。ギターはあまり目立っていないが、ギターソロは良い。
Alfredの歌はあまり力強くないが味わいがある。
原曲程、琴線には触れないが名曲である事に間違いはない。ただ、キーが下がっているから盛り上がりに欠けるかも

全体的な感想

正直に書くと、本作は微妙な感じだというのが本音である。
メロディの質が過去作と比べるとハッキリ言って良くなく印象に残らないからだ。ただ、その中でも③⑥⑩は良いと思う(とは言っても、あくまで本作の中でという意味)。

⑧の様な実験的な曲もあるが、従来のファンからすると好き嫌いが分かれると思う。

全体的にはストリングスのや、ゴスペルの様なコーラスを取り入れて荘厳なサウンドにはなっている。その音に、朗々とした歌声になっているAlfredのボーカルはピッタリ合っている。しかし、それは同時にメタルシンガーじゃなくなってきているという事でもある。このAlfredの歌声で、観客を高揚させたり盛り上げたりするのは難しいのではと思ってしまう。

Enrikのギターも、時には速弾きやヘビーに弾いたりする事もあるが、基本的にはゆったりとした音色だ。特にリフはほぼ後ろで支える役目になっている。

バンドとしての実力が落ちた訳ではないが、曲によっては脱HR/HMになっている曲もある。なのでElisaがボーカルだった頃の作品や、Alfred加入時の作品を先に聴いた人にとっては「なんだかもやもやする」作品かもしれない。
初めて聴く人に「聴かない方が良い」と
言う気は全く無いが、一言「あまりHR/HMっぽくないよ」と告げるべきだろう。

初回生産限定盤のみに付いているDISC②の出来は、初めて聴く人にとっては悪くないだろう。
しかし、原曲を聴いた人が、このリメイクされた曲を聴くと「う~ん・・・」という気持ちになるだろう。何故なら、原曲が持っていた華やかさ・勢い・メロディの輝きが減退しているからである。

リメイク自体は原曲に忠実に再現されているが、あまりにもゆったりしていて曲にキレが無い。
ギターは地味になっているし、AlfredのボーカルもElisaの様な力強さが無い。
原曲を超える事はどのバンドにとっても難しい事だが、このリメイクは賛否が分かれるに違いない。
原曲を聴いてから、このリメイク版を聴いた人は「あぁ、原曲ではここはこうで・・・」などと思いながら聴くだろう。

原曲がカラフルな作品なら、このリメイク版はモノトーンな感じである。

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ABOUT ME
霜柱
神奈川県在住の30代。ハードロック/ヘヴィメタル(特にメロハー・メロスピ・メロパワ・シンフォニック)と宝塚(全組観劇派)が好きです。 ツイッターも行っており、気儘に呟いています。