皆様こんにちは、霜柱です。
東京宝塚劇場で雪組公演『夢介千両みやげ』『Sensational!』を観劇して参りました。
今回は、大江戸スクランブル『夢介千両みやげ』(脚本/演出:石田昌也)の感想を書いていきます。
※因みに私は、山手樹一郎さんの原作は読んでいません。
クスッと笑えるハッピーな作品
開演5分前になり緞帳が上がると、招き猫が2匹描かれている画が出てきます。もうそれだけで、この物語は明るいハッピーエンドの作品なんだなと思わせました(これで悲劇的且つバッドエンドなら、それはそれで面白いのかもしれませんが、笑)。
開演時の彩風咲奈さんのご挨拶が、可愛らしい声でした。男役の声ではなく、素の声に近かったです。この時点でほっこりした気持ちになりました。
今作『夢介千両みやげ』は随所に笑いが散りばめられていました。大爆笑というのではありませんが、クスッと笑ってしまう場面ややり取りがふんだんにあったのです。
特に総太郎を演じている朝美絢さんが多く笑いを取っていました。本当にはっちゃけており、朝美さん自身も楽しく演じている様に観えました。
総太郎はかなりのナルシストです。でも朝美さんの様な方なら女にモテるのは当然ですね。前作の大劇場公演『CITY HUNTER』で演じたミック・エンジェルもモテる役でしたが、総太郎は最後には必ず振られます。
「♪泣かせた女は星の数」と歌うのですが、「♪振られた女は星の数」の間違いではないでしょうか(笑)?
明るく笑いが多いですが、最後の方の場面になると夢介が刀を抜いて、殺陣をするシリアスな場面が出てきます。
とは言っても、登場人物は誰も亡くなりません。
洋物なら珍しくはありませんが、和物で誰も亡くならないコメディタッチの作品はとても珍しいでしょう。
観終わった後は、温かい気持ちになり「私も夢介みたいになりたいなぁ」と思いました。
ただ、それにはまずお金が沢山ある事、腕っぷしが強い事、頭が切れる事が必要です。
・・・あぁ、夢介への道は遠すぎる(泣)。
「宝塚は好きだけど、和物はちょっと・・・」という方でも、肩肘張らずに気軽に楽しめる。そんな作品に仕上がっています。
他に気付いた点など
お金が重要な要
夢介は江戸に来てから色々な災いに巻き込まれます。しかし、夢介は持っているお金で解決をしていきます。
そう書くと、何でもかんでも金で解決しようとする心の無い人物に見えますが、そうではありません。
夢介は相手の為にお金を使います。自身の快楽や欲求を満たす事には使わないのです。
彼の気っ風の良さが滲み出ている事が本当に分かります。
私もこういう風にお金を使ってみたい。でもそんなお金はありません(泣)。
夢介の人柄の良さがとても伝わってくる作品ですが、正直それはお金を持っているから、より伝わってくるのでしょう。
もし、夢介が貧乏なら、この物語は成り立たないですし、素寒貧の状態だと心まで貧しくなります。経験者の私が申し上げるのですから、間違いはありません(笑)。
もし夢介が貧乏だったらハッピーエンドにはならなかっただろうと予想します。
因みに1両が幾らか調べてみたのですが、江戸のいつ頃か? またその時代の貨幣制度や社会状況によって、大分価値が違っていたようです。
しかし、大まかですが、「1両=10万円~13万円」とするなら、千両を持っていた夢介は1億円~1億3000万円を持っていたと思われます。
この時代で、そのお金を持っていたら、お金持ちという枠を越えていると言えますね。
格好良い役柄は登場するにはするが・・・
彩風さん演じる夢介は人柄や気っ風が良く、女性からもモテモテですが、この夢介という役柄自体は、正直観ていて「格好良い!」という役柄ではありません。トップスターが演じる役柄としては、非常に珍しいタイプです。
また、朝月希和さんが演じたお銀という役も、あまりヒロインらしくはありません。
本当に「格好良い!」と思わせたのは、金の字を演じた縣千さんです。もう登場した瞬間から、他の方々よりもスターのオーラをバリバリ出していました。あの格好良さは何なんでしょうか? 本当に目を引きます。
最後の場面になると金の字の正体は、南町奉行の遠山金四郎という事が分かります。その時の威勢の良い姿も格好良く迫力があり、先輩方と同等に舞台に立っていました。
今作で1番格好良い役だと私は思います。
朝美さんの総太郎も性格を除けば素敵ですが(笑)、格好良さは出ていませんでした。それよりも茶目っ気を伴った可愛らしい感じでしたね。
ですので、宝塚的な格好良さが出ている役柄は殆どいません。そういうのを求める人にとっては、今作を好まない可能性はあります。
現代の日本人の貧しさ・卑しさを暗に示している気がした
先に書きましたが、夢介は特段格好良いという役柄ではありませんが、その分憧れやすい存在だと思います。
お金はあるが、それを自慢する訳ではない。
腕力はあるが、それを誇示する訳ではない。
頭は良いが、それをひけらかす事はしない。
夢介には色々な物が備わっています。こういう状態だと鼻高々になってしまってもおかしくありませんが、決してそうはならず腰は低いです。
理想像の人として夢介は描かれていると思います。
夢介みたいになりたいと思った人も多いでしょう。
笑いが多く楽しい作品でしたが、同時に「何故石田先生は、このご時世にこういう作品を作ったのだろう?」とも思いました。
現実は夢介の様な人は少なく、むしろ「自分は大物だ、偉いんだ」と強がったり威張ったりする輩の方が多いです。
勿論そんな輩は古今東西に存在し、江戸時代にもいた事は間違いないでしょう。
私も人の事を決して指摘出来る立場ではありません。しかし、あえて書かせていただきます。
現代の日本人、特にコロナ禍になってから日本人は品性がより貧しく、卑しくなった気がしてなりません。
私は原作を読んでいませんし、石田先生がそこまで考えて作ったのかは分かりかねますが、この『夢介千両みやげ』は現代の日本人の心の貧しさ・卑しさに対して警鐘を鳴らしている気がしてならないのです。
当然ですが、全員が夢介になるのは無理です。しかし、ほんの少しでも夢介の行動を見習えば、それだけで日本という国が多少良くなると思うのです。
勘違いしないでほしいのですが、私は「江戸時代の方が良かった」「昔の方が良かった」なんて言う気はさらさらありません。
大体江戸時代に生まれていたら、宝塚を観る事が出来ないじゃないですか(笑)?
そんな時代、ハッキリ言って私は嫌です。
現代の日本人にちょっと絡ませた意見を書きましたが、私の深読みのしすぎでしょうか?
ちょっとシリアスっぽい意見も書きました。
とは言え、繰り返しになりますがこの作品は明るく楽しい、笑いの多いハッピーエンドの作品です。
難しい事は考えずに、楽しく観た方が良いのかもしれませんね。
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