皆様こんにちは、霜柱です。
私はこの間、花組公演『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』を観劇し、その感想をそれぞれ書きました。
今回は『アウグストゥス-尊厳ある者-』で印象に残った、もしくは気になった役ごとの感想を書いていきます。
役ごとの感想
ガイウス・オクタヴィウス:柚香光
カエサルの大甥。ユリウス家の末裔。
もう最初に登場した瞬間から目を引きました。ローマ時代の服装もピッタリと似合っていたので、本当にローマ人の様でした。
オクタヴィウスは後に「尊厳ある者」を意味するアウグストゥスという称号を得ていきます。しかしオクタヴィウスはそれ程、武人らしい感じではなく、また、ちょっと頼りなさそうな所がある人物です。あまり器用な性格ではなさそうに思いました。その為、皆をグイグイ引っ張っていくリーダー的なタイプではなく、皆と共に、場合によっては周りの人に導かれる様な役です。
ただ、これは前の記事と重複しますが、このオクタヴィウスは等身大の柚香さんを表していると思ったのです。柚香さんも、正直あまり器用ではなく、周りを引っ張っていく様なタイプではないでしょう。
その様に見えた為か、今回のオクタヴィウスは格好良さがありながらも、親しみやすく、良い意味で人間臭さが出ている様に感じました。
ポンペイア:華優希
カエサルの政敵、今は亡きポンペイウスの娘。
ポンペイアは父親のポンペイウスをカエサルに殺された為、カエサルに対する憎しみのみで生きています。
その憎しみが、皮肉な事に生きる原動力となってしまっているので、カエサルが殺された後は、ポンペイアも自ら命を絶ってしまいました。神殿の場面に登場する時は既に亡くなっています。
華さんはこの憎しみを抱いた役を、堂々と演じ、憎しみを抱いてる時は本当にそのオーラが目に見える程で怖かったです(笑)。ただ、この様な役でも、華さんは美しく品良く演じていました。
前の記事と重複しますが、華さんが出ている場面で好きなのは、カエサル暗殺未遂後のポンペイアの邸の場面です。短剣を返しに来たオクタヴィウスに対して、低い冷たい声で話しかけますが、感情が爆発寸前の様で観ていて、背筋が冷たくなりました。
この時の華さんの表情・台詞回しが見事です。功労賞を、いえそれ以上の賞を受賞するに値する程の演技力だと言っても過言ではないでしょう。
今作で華さんは退団なので、柚香さんと結ばれる様な役柄にしてほしかったと思いました。しかし、華さんは高い芝居心を持っています。ですので、だからこそこの様な悲劇的な難しい役を当てたのかもしれません。
本当に華さんのお芝居はお見事で感服する他ありません。
マルクス・アントニウス:瀬戸かずや
カエサルに仕えている執政官・軍人。オクタヴィアの婚約者。
オクタヴィウスとは真逆の男らしく荒々しさも持った人物です。また、自身の欲に忠実で猪突猛進な所があります。
最初はオクタヴィウスとは仲間ですが、カエサル暗殺後、オクタヴィウスがカエサルの後継者になった事を聞き反発します。「自分こそが後継者だ!」と宣言し、エジプトに行きパルティア遠征を果たそうとします。
しかし、エジプトでアントニウスは、クレオパトラと結婚をして領地を与えるなど身勝手な事をし、遂にはエジプトの王としてローマに宣戦布告をします。
自身の思うままに歩もうとしますが、自身の手で処刑したブルートゥス達の亡霊を見て、最後は発狂して自刃してしまいます。
瀬戸さんのこの役柄もとても難しい役です。この役は少しですが『カリスタの海に抱かれて』で瀬戸さん自身が演じたセルジオ・グランディーと重なる部分があります。
印象に残ったのは、ローマへ連れ戻そうとやってきたオクタヴィウスと対峙した時の場面です。既にアントニウスは発狂していて、オクタヴィウスの言葉に耳を傾けません。
アントニウスは気の狂った状態で「お前は何の為に生きている?」「お前の夢は何だ?」とオクタヴィウスに問いかけ、最後は自刃します。
この時の瀬戸さんの本当に狂った感じの表情・動作・目つきなどが見事でした。観客もこの瀬戸さんの演技力に驚いたのではないでしょうか?
この作品ではアントニウスは悪役の様に描かれていますが、自分自身に忠実だったとも言えると思いました。
瀬戸さんも今作で退団します。瀬戸さんは生粋の花組生なので卒業は本当に寂しいです。
クレオパトラ7世:凪七瑠海
エジプトの女王。
凪七さんは登場するだけで、舞台の雰囲気を締めます。
声は男役の時とあまり変わりませんが、女王としての貫禄や立ち居振る舞いが見事に表現されていたと思います。つっけんどんとした態度も堪りませんでした(笑)。
印象に残った場面はまず、あのディスコみたいな場面でしょう(笑)。ソロで凪七さんが歌うこの場面はショーの一部の様でした。この場面だけ全体から浮いている様にも感じましたが、凪七さんが綺麗なのでOKです(笑)。
もう1つ印象に残った場面は、オクタヴィウスにアントニウスの命たけは助けてほしいと懇願する場面です。気丈に振舞ってましたが、ここでは多少取り乱して、気の弱い部分が出ていました。
凪七さんは男役の時もそうですが、今作でのクレオパトラも見事に色気が出ていました。凪七さんの女役は他の娘役・女役にはない持ち味があり、非常に貴重な存在だと言えます。
ガイウス・ユリウス・カエサル:夏美よう
ローマの政治家・軍人・終身独裁官。
登場しただけで、一声出しただけで夏美さんと分かる風格があります。どっしりと構えており観ていて安心感があり、終身独裁官という肩書を持つカエサルを見事に演じていました。
ただ、実を言うと私のなかでカエサルは轟悠さんのイメージが付いてしまっているのです。月組公演『暁のローマ』を観て、その時の轟さんが堂々として格好良かったのです。
勿論、夏美さんのカエサルも良かったですが、少し年を取り過ぎている感がしてしまいました(笑)。
キケロ:高翔みず希
ローマの政治家・弁護士・哲学者・文筆家。
登場した時はブルートゥスに「貴方が取って代わるべき」みたいな事を言って、カエサルを暗殺させようと促します。
ただ後半は、何か文句を言って人々から非難を受けていました(詳しく覚えていません、すみません)。
高翔さんは灰色の顎髭を付けていて落ち着きがありました。しかし、いつも何かしら文句を言っているおじさんの様で(笑)、役柄的には「なんだかなぁ」という感じでした。
シャーミアン:冴月瑠那
クレオパトラの侍女。
男役の冴月さんが女役を演じました。低めの声を出すのかと思いきや、完全に女声になっており目を瞑って聴いたら冴月さんとは分からないかもしれません。ただ見た目は少し男っぽかったです。また、ややクラブのママみたいな雰囲気がしました(笑)。
冴月さんも今作で退団ですが、やはり最後は男役で終わらせてほしかったと思いました。
アティア:鞠花ゆめ
オクタヴィア、オクタヴィウス姉弟の母親。
しっかりとした気の強い性格です。
ブルートゥス達がユリウス邸に侵入してきた場面では、ポンペイアに「アンタが原因でこうなったんだ!!」(←この様なニュアンスの台詞です)と言い放ちます。
今作で登場する女性人物の中では、我が強い方ですが、同時に家族の事をちゃんと考えている人物という風にも見受けられ、肝っ玉母さんの様な風格がありました。
レオノラ:美花梨乃
ポンペイアの奴隷。
奴隷という役柄ですが、ポンペイアは「もう自由になったのだから仕えなくて良い」と言いますが、それを拒否しポンペイアに仕え続けています。
美花さんはしゃがれ声やイントネーションを駆使して、奴隷(というより侍女)の雰囲気を出していました。また、最後の方の神殿の場面で登場した時は、亡きポンペイアを想う気持ちが伝わってきました。
美花さんも今作で卒業します。お芝居が上手い上級生がまた1人退団するので寂しいです。
アポロドラス:和海しょう
クレオパトラの側近。
クレオパトラが間違った判断を下しそうな時は、しっかり進言をする側近で、エジプト側で、雄一まともな判断を下せる重要な人物と言えます。
実際にこの様な側近・部下がいたら、その上司は恵まれていると言わなければいけないでしょう(笑)。
和海さんは貫禄のある太く低い声を出していて、『はいからさんが通る』の古美売太とは全然違っていたので驚きました。
地味な役柄ですが、結構目立ちました。
大神官:華雅りりか
神殿の長の様な役。
カエサルの遺言を読み上げたり、神殿でオクタヴィウスを迎えたりします。
非常に落ち着きがあり、動きは少ないながらも、とても目立つ役柄でした。
また、声が梨花ますみさんの様だったのに驚きました。
アグリッパ:水美舞斗
オクタヴィウスの補佐役。
オクタヴィウスとは気の置けない仲で、お互いに信頼し合っています。アウグストゥスの事を良い意味で「しょうがないなぁ」という風に思って、共に行動している様に観えました。
溌溂とした明るい青年の様で、爽やかさも感じる役柄でした。銀橋で1人で歌う場面もあり、清々しく歌っていたのがとても印象に残っています。前作『はいからさんが通る』で演じた鬼島森吾が傷を持った役柄だったので、よりそう観えたのかもしれません。
ブルートゥス:永久輝せあ
ローマの軍人。カエサル暗殺に関わった人物。
ブルートゥスは1度カエサルに反旗を翻した事がありましたが、カエサルはそれを許し、自身の側近にしています。その事に感謝をしてカエサルに尽くしました。しかし、カエサルが終身独裁官、実質ローマの王になった事により、周りの意見もありカエサルを暗殺します。
暗殺後、追われる身となり、アントニウスに捕まった後、処刑されてしまいます(実際は自刃の様ですが)。
正直、ここで描かれたブルートゥスは全く格好良くありません。カエサル暗殺前はウジウジしている様子で、周りから説得されてようやく暗殺に踏み切るという受け身の体制です。また、カエサル暗殺時、その後のユリウス邸での振る舞いはハッキリ言って、自棄になって喚いているだけの様に見えてしまいました・・・。
背が高くダンスも上手い永久輝さんの良さが、全く活かされていない役柄で「う~ん、これはなぁ・・・」と思わずにいられませんでした。
オクタヴィア:音くり寿
オクタヴィウスの姉。アントニウスの婚約者。
とても純真な性格で箱入り娘の様な役柄です。どの様な時でも母親のアティアの言う事に従っていて、自分の考えを表に出さない性格です。
しかし、アントニウスが亡くなった後は喪服を着て登場します。アティアから「オクタヴィウスが凱旋するのだから、その服はダメ」みたいな事を言われますが、それを拒否します。
オクタヴィウスは自分の弟で、勿論大事な家族だと認識していますが、クレオパトラと結婚したアントニウスを想う気持ちの方が強いという事を、その場面では表現していると私は思いました。
音さんはどの様な役柄も見事に演じ、今作のこの様な純真無垢な役もこなしました。しかし、役不足の様にも感じました。
マエケナス:聖乃あすか
オクタヴィウスの補佐役。
聖乃さんは格好良く色気のある目でした。
特段、目立つ様な役柄ではありませんでしたが、舞台での凛とした姿は目を引きました。
水美さんが演じたアグリッパとは対照的で、それぞれのキャラクターがしっかり出ていたのが良かったです。
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