皆様こんにちは、霜柱です。
私はこの間、宙組公演『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』の感想を書きました。
今回はこの作品の役ごとの感想を書いていきます。
役ごとの感想
ジェームズ・ボンド:真風涼帆
MI6のエージェント、コードナンバー「007」の役。
フェリックス・ライター、ルネ・マティス、ヴェスパー・リンドなどと協力してル・シッフルの財源を断ち、パリでのKGBの活動を弱体化させようと力闘します。
もう登場した瞬間から、その格好良さに目を引かれました。
スーツがとても似合うのは勿論ですが、銃を扱う姿も非常に堂に入っていたと言えます。
スーツや銃を扱う姿が似合う男役は他にもいますが、ここまでサマになる男役は意外と限られるかもしれません。
しかし、真風さんはいとも簡単にそれをこなし(実際にそこまで辿り着くのには、血が滲む様な努力をした事は言うまでもありません)、観客を釘付けにするのですから、もう堪りませんね。
日本人でジェームズ・ボンドを演じたのは、多分真風さんが最初でしょう。今後日本人でジェームズ・ボンドを演じる時、真風さんを超えられる人が出てくるのでしょうか?
今作を最後に真風さんは宝塚をご卒業されます。
5年7ヶ月の間、宙組のトップとして活躍。その間にコロナウィルスの世界的流行により、公演の中止が相次ぎ舞台に立てなくなるという、とても辛く悲しい時も経験しました。
それでも、決してめげる事無く宙組を率いてきた真風さん。
組子からの信頼は絶大と言っても過言ではないでしょう。
ご卒業後はどの様な人生を過ごされるかは分かりませんが、お幸せな人生を歩める事を祈っております。
デルフィーヌ:潤花
ソルボンヌ大学の院生、ロマノフ家の公女、ミシェル・バローの恋人の役。
もう登場した瞬間から、その華やかで眩しいお姿に目を奪われました。
ただ、実際のロマノフ家の公女の様な凛とした美しさではなく、お日様の様な明るい、それでいてちょっとセレブの様な美しさだった様に思えます。
ヒッピーっぽい衣装もとても似合っていました。
ロマノフというしがらみを捨てて、全ての人が自由で平等である様に生きるべきだと切望していますが、それが上手く出来ずもどかしい思いを抱いている。そんな複雑な心模様をしっかりと描いていました。
あと観ていて気になった事があります。それは潤さんの声です。
喋っている時の声がちょっとハスキーだったのです(歌っている時は普通でした)。特に語尾にそれが強く表れていました。役作りをする上でその様な声になったのか、それとも喉の調子が悪かったのかは分かりません。もし、喉の調子でしたら、公演中なので難しいとは思いますが無理せずにご自愛してほしい所です。
潤さんも今作で宝塚をご卒業します。
芹香さんと引き続き組むとばかり思っていたので、退団は本当に寂しい限りです。もっと潤さんのトップ娘役のお姿を観たかったですが、ある意味良い引き際とも言えるでしょう。
ご卒業後も幸せで明るい人生を歩める事を祈っております。
ル・シッフル:芹香斗亜
KGBのエージェントの役。
最初は魅力的な雰囲気を身に纏っている謎の青年という感じです。ミシェルやロマノフ家を味方にして、自身の思想に傾倒させます。
口では甘い事を言って惹き付けますが、最後の場面では見捨てようとする、冷酷で自身の欲を叶える事しか考えていなかった人物である事が判明。
彼に協力してくれた仲間やロマノフの家族の命を、「どうでもいい」と平気で切り捨てられる性格です。全くもって共感出来ない悪役だ(笑)。
最後は鷹翔千空さんが演じるイリヤに撃たれて、古城の屋上から落ちて亡くなってしまいます。
ここまで我田引水な悪役は案外珍しい気がします。大概はどこか同情出来る要素があったりしますが、このル・シッフルにはそれがありません。
演じていて難しかったとは思いますが、芹香さんは余裕のある不敵なオーラを纏いながら、見事に演じ切っていました。
次期宙組のトップスターに決まった芹香さん。
2番手の位置にいたのは花組の時代を含めて約8年。非常に長い期間であり、その間に美弥るりかさん、瀬戸かずやさん、愛月ひかるさんが2番手のまま退団しました。芹香さんも2番手のまま退団するのでは?という噂も流れましたが、遂にトップスターになれるのです。
相手役には春乃さくらさんが抜擢されました。
春乃さんが芹香さんの相手役になるとは、誰も予想しなかったでしょう。
このお2人が今後どのようなトップコンビになるのか?
それは全く分かりませんが、新しい宙組を作っていってほしいですね。
ゲオルギー・ロマノヴィッチ・ロマノフ大公:寿つかさ
デルフィーヌの従伯父の役。
悪役ではありませんが、ロマノフ家の王位継承者に選ばれ、秘宝のティアラも引き継ぐ事になったデルフィーヌの事を気に入っていません。
そんなゲオルギーにル・シッフルはティアラを手に入れる為に、一緒に協力しようと近づきます。
ル・シッフルの甘い言葉に釣られたゲオルギーは、ティアラを手に入れようとしますが上手くいかず、最後はル・シッフルからも見捨てられてしまいます。
傍から見ると、何とも間抜けな感じもしますが、決して憎めない存在であるとも言えるでしょう。
ちょい悪オヤジの様な雰囲気も良かったと思います。
2008年に宙組の組長に就任し、宙組をずっと支えてくれた寿さん。同期の高翔みず希さんの様に、そのうちに専科に異動するのかと思ってたら、まさかの退団発表。
寿さんが宝塚をご卒業されるなんて夢にも思っていませんでした。宙組の顔だったので、もう宝塚で寿さんを観れなくなるのは本当に寂しく悲しいです。
長い宝塚人生の中、様々な事があったと思いますが、ご卒業後も充実した第2の人生を歩めるよう祈っております。
M長官:松風輝
MI6の長官の役。
パリでのKGBの資金源を断つ事を計画します。
1幕目は出番は多めですが、2幕目はちょっと少なめでした。
しかし、1幕目ではソロがあるので、松風さんの貫禄のある歌声を聴けたのはとても嬉しかったです。
今回は長官という役柄の為か、渋めの雰囲気が強く出ていました。特に目元のメイクにそれを感じさせる工夫がされていたと思います。
今作の公演が終わったら宙組の組長に就任します。
『ロバート・キャパ 魂の記録』ではフーク・ブロックという役を演じていましたが、それももう11年も前。そんな松風さんが組長になるなんて、非常に感慨深いです。
どうか今後も宙組を支えていってほしいです。
ミシェル・バロー:桜木みなと
学生運動過激派のリーダー、デルフィーヌの恋人の役。
五月革命を主導し、自由や平等を訴えていますが、それにより警察に追われる身となります。そんな状態のミシェルをル・シッフルが助け、彼が経営するナイト・クラブ「メゾン・ダムール」で働く事になります。
最初はル・シッフルの思想に惹かれていましたが、後に彼が自身の事しか考えておらず、仲間の事を平気で見捨てる人物だという事に失望。更には天彩峰里さん演じるアナベルに振り回されたり、デルフィーヌからも軽蔑されたりしてしまいます。
役柄としては何とも情けなく決して格好良くはありません。理想に燃えていますが、やる事なす事が空回りする始末です。しかし、それだからこそ愛おしく人間味がある様に観えた存在でもあります。
また、最後の方の場面で甲冑を着る場面がありますが、その際、春乃さくらさん演じるヴェスパーに敵と間違われてサーベルで叩かれていたのは笑いを呼びました(サーベルで叩かれたのはアナベルを庇ったからなのですが)。
桜木さんの繊細な演技も相俟った事により、このミシェルは他の役とは一線を画したと言えます。もしミシェルがいなかったら、この作品は魅力が半減していたのではないでしょうか?
ソロでの歌には悲しみが込められており、その歌声に心を打たれました。
この役は桜木さんの代表作になると言っても過言ではないと思います。
フェリックス・ライター:紫藤りゅう
CIAのエージェントの役。
ルネ・マティス、ヴェスパー・リンドと共にボンドに協力して、KGBを弱体化させようと奮闘します。
シャープでスマートな格好良さが前面に出ており、とても目を引きました。
ただ、気になったのは紫藤さんの体格です。星組にいた時からそうでしたが、かなり細かったのです。「いくら何でも細すぎないか? ちゃんとご飯は食べているのか?」と心配にもなりました。
今作を最後に紫藤さんは宝塚をご卒業します。
宙組に異動してから、より活躍の場が広がりました。まだまだ紫藤さんの男役姿を観たいと思っていただけに、ご卒業は残念でありません。
新しい場でもご活躍出来る事を祈っております。
ルネ・マティス:瑠風輝
フランス情報局のエージェントの役。
フェリックス・ライター、ヴェスパー・リンドと共にボンドに協力して、KGBを弱体化させようと奮闘します。
瑠風さんの演技や歌は、変なクセが無く自然体なので、観ていてとても心地良く安心感があります。
今回演じたルネは格好良い役でしたが、ヴェスパーには頭が上がらなさそうな所には可愛らしさも感じました。
ドクトル・ツバイシュタイン:若翔りつ
ナチスドイツの科学者の役。
登場するのは2幕目の中盤を過ぎた辺りです。
新型爆弾を開発しようとしている頭がちょっとクレイジーな役柄ですが、観た瞬間からある役を彷彿とさせました。
その役とは月組公演『LUNA-月の伝言-』で嘉月絵理さんが演じていたドクトルゲノムです。もう完全にこの役に寄せていったとしか思えません。
因みに『カジノ・ロワイヤル』と『LUNA』、どちらも演出は小池修一郎先生です。
奇怪さとコミカルさが出ており、ソロも長く歌っていたので、少ない出番でもかなりの爪痕を残したと言えるでしょう。
ただ、嘉月さんのドクトルゲノムより若い雰囲気だったので、もう少し声質やメイクで老けた感じを出したら、更に印象に残るぶっ飛んだ役になったと思います。
余談ですが、このドクトル・ツバイシュタインは科学者という役でしたが、エレキギターを持たせて、衣装をバンダナ、レザーチャップス、スパンデックスパンツなどに変えたら、LAメタルのミュージシャンの様に観えると私は感じました(笑)。
アナベル:天彩峰里
ル・シッフルの元恋人で現在は彼の片腕の役。
ル・シッフルの経営するナイト・クラブ「メゾン・ダムール」で歌手を務めていますが、それだけではなく、彼と活動を共にしています。
気の強い性格でミシェルを尻に敷いていますが、とても魅力的な存在です。
最後はミシェルと一緒に警察に捕まってしまいます。描かれてはいませんが、恐らくこの2人は結ばれる事になるでしょう。
ムチを扱う場面がありますが非常に似合っており、観ながらゾクゾクとしました。天彩さんにならムチで叩かれても良いと思ってしまいました。ビシッ!バシッ!と私を打って!(←何を言ってるんだ、このド変態は、笑)
髪型がおかっぱでしたが、それが逆に色気や妖しさを増す為の効果を発揮させていたと感じました。
ソロの歌は言わずもがな聴き応えや迫力がありました。耳福と言えるでしょう。
ただ、階段降りでは残念ながら春乃さんより先に降りてきました。
既に春乃さんが宙組の次期トップ娘役に決まっていたので、当然致し方ない事ですが、宙組に異動してからは天彩さんは活躍していたので、やはり寂しさも覚えましたね。
春乃さんには先を越され、例のあの件もあり、天彩さんが今どの様な心情であるかは想像に難くはありませんが、舞台上ではとても輝いていました。
色々意見はあるかもしれませんが、天彩さんは宙組に、いえ宝塚に必要な人材です。
辛い状況かもしれませんが、どうかめげずに宝塚の舞台に立ち続けて下さい。貴方を必要としているファンは多いのですから。
イリヤ:鷹翔千空
SMERSHに所属している役。
ル・シッフルを監視しており、最後は古城の屋上で彼を射殺し、ティアラの場所をデルフィーヌから聞き出そうと脅します。しかし最後は逃げられてしまい、その願いは叶わずに終わりました。
不穏で危ない雰囲気を纏っているその姿が目を引きました。
男役の色気も段々と出てきており、更に魅力度がアップしていると思います。
今作では出番が少なめだったのが、ちょっと残念でしたが、それでも印象に残る役だったと言えるでしょう。
今後の宙組での活躍が益々楽しみです。
マネーペニー:花宮沙羅
M長官の秘書の役。
役柄的には地味でしたが、いかにも仕事が出来る秘書という雰囲気が出ていました。出番的には少なめでしたが、その限られた出番の中でも舞台を引き締めていた様に思えます。
ヴェスパー・リンド:春乃さくら
英国外務省に所属している役。
ルネ、フェリックスと共にボンドに協力して、KGBの弱体化を狙います。
自身の意見をしっかり言う性格で、キリっとした雰囲気が印象に残りました。
最後の方の場面では銃やサーベルを扱いますが、その姿は男役顔負けの格好良さが出ていたと思います。
エメラルドグリーンの様な色のパンツスーツ姿も、とても似合っていましたね。
正直、華はあまりない気がしますが芸達者で、特に表情が豊かだと感じました。
今作の公演が終わったら宙組のトップ娘役に就任します。
芹香さんとどの様な化学反応を起こすかは未知数ですが、新しくなる宙組に期待です。
イリーナ:水音志保
ニーナ:山吹ひばり
イリーナはデルフィーヌの妹で、ニーナの姉の役。
ニーナはデルフィーヌとイリーナの妹の役。
出番は限られており、だからと言って物語上必要な役という訳でもありません。
ただ、お2人が登場した時は、舞台が華やかになりました。
やはり水音さんは美しく、山吹さんはキュートですね。
宙組に欠かせない娘役と言えます。
グレゴリー・ロマノフ:風色日向
アナトリー・ロマノフ:亜音有星
グレゴリーはゲオルギーの長男の役。
アナトリーはゲオルギーの次男の役。
この兄弟の役も正直、物語上重要ではない役です。
しかし、緊迫してピンと張った空気を良い意味で和らげ、舞台に緩急をもたらす重要な役割を担っていたと思います。
2人共、典型的な苦労知らずのお坊ちゃまで、軽い性格です。親の庇護の元、育ったという感じがしっかり出ていました。
でもこういう男性が結構モテたりするんですよね。現代なら大学のキャンパスに絶対にいそうな気がします(笑)。
ボンドの様に芯のある男ではありませんが、最後の場面で両親が連れ去られる時、勇気を振り絞って立ち向かったのは、やや格好良く見えました。
多分、これをきっかけにこの兄弟は成長して立派な人物になるでしょう。
風色さんと亜音さん、お2人共魅力的な男役ですが、個人的には亜音さんの魅力がより増している様に感じました。
真風涼帆・潤花トップコンビの集大成
先にも書きましたが、真風さんと潤さんは今作『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』を最後に宝塚をご卒業します。
今作はイアン・フレミングの小説『007/カジノ・ロワイヤル』が原作です。ちょっとトンチキっぽく仕上がっていた感じもないではありませんが、それでもお2人の集大成になった作品と言えるでしょう。
スーツ姿で銃を撃つ真風さんは完全にボンドになっていましたし、どこにいてもその華やかさで人目を引く潤さんも美しかったです。
他の方々もそれぞれが適材適所で魅力を発揮していた様に思えます。
個人的には桜木さんが演じたミシェル・バローが特に印象に残りました。情けない役ですが、その分愛おしさもありました。
真風さんと潤さんがご卒業された後は、芹香さんと春乃さんが宙組のトップコンビを引き継ぎます。
持ち味が全く違いますが、充実した宙組をこれからも築き上げていく事でしょう。
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