ヘンリック・イプセン『人形の家』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
ノルウェーの劇作家、ヘンリック・イプセン(Henrik Ibsen)が書いた戯曲『人形の家』(矢崎源九郎・訳、新潮文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
有名な結末
実を言うと数年ぶりに本書を読みました。主人公のノラが自分の力で生きていこうと決意をして、夫のヘルメルや子供達を置いて家を出る結末は有名かもしれません。
ただ、ノラは家を出て自分の力で生きて幸せになれるのか? それは勿論描かれてはいないです。読書の想像に任せる感じでしょう。
幸せになるかもしれないし、惨めな目に遭って「家を出なければ良かった」となるかもしれない。
今の時代ならまだしも、本書が1番最初に刊行された1879年なんて今よりも男尊女卑が凄かった筈。なので、この作品が話題を呼んだのは必然と言えますね。
闇を抱える登場人物
フェミニズムを語る時、『人形の家』が挙がる事が多いようですが確かにそういう面はあると思います。
ただ、個人的にはフェミニズムよりも、何かしら問題を抱えている登場人物に注目しました。
主な人物だけ思った事を書いてみます。
ノラ
最後の場面で彼女は自分の父親や夫のヘルメルが、自分を1人の人間として見ているのではなく、都合の良い人形として扱われていた事に気付きます。
確かにそうだったのかもしれません。ただ、本当にそう思っていたのなら、何故もっと早く自分の意見を言ったり行動に移したりしなかったのか? そうも感じてしまいました。
勿論今の時代とは女性に対する考え方や扱いが全然違うので、そう簡単にはいかないのは分かります。それでも読んでいて「気持ちは分かるけどさぁ・・・」と言いたくなりました。
ノラってちょっとワガママで被害者意識が強い部分がある気がします。
ヘルメル
一見、紳士的で優しく見えます。それは事実でしょう。しかしそれはあくまで自分の思い通りに行っている時だけかもしれません。彼の優しさの裏からは傲慢さや「何もかも自分の管理下に置いてやろう」という独裁的な所を感じたのです。
でも、だからと言って「実はヘルメルは悪人」という訳ではありません。一言で語れない人間の感情の複雑さをヘルメルが象徴しているのではないでしょうか?
問題はあれど、個人的には数多いる世の中の夫という存在の中でヘルメルは良い方だと思います。
クログスタット
ちょっといけ好かなくて意地悪な所がある人物です。もし、自分の身近にこんな人がいたら出来たら関わりたくないですね。
でも同時に、登場人物の中で彼が1番現実に即しているとも言えるでしょう。もしかしたら元々はそんな人物ではなかったのかもしれない。
「自分を救ってくれないなら、こうしてやる」みたいな行動を取ったのは窮地に追い詰められてしまったから、やむを得ずそうしてしまったのかもしれませんね。
個人的には本書の中でクログスタットが1番良い味を出していてスパイスの役割を果たしていると感じました。彼が登場しなかったら本書はもっと単調で平坦な物語になっていて、ハラハラ感が無かったと予想します。
クリスチーネ・リンネ夫人
ノラの友人の様な存在で苦労人です。病弱な母親に代わって弟達の面倒を見たり、結婚後は夫を先に亡くしたりしていて、過酷な人生を送っています。
一言では語れない大変な人生を送ったと言えるでしょう。しかし、彼女はそれを鼻にかけて「それに比べて貴方は苦労してないわね」みたいにノラに言います。ノラはノラで実は苦労してるんですけどね。決めつけがましい所があると感じました。
私事ですが昔いた職場に本当にリンネ夫人みたいのがいたのです(笑)。言わずもがな「貴方って苦労してないよね」「薄っぺらい人生よね」と勝手に私の人生を決めつけやがったのです。
・・・まぁ、それはさておき、リンネ夫人も「こういう人、いるいる!」と言える存在でしょう。
因みにリンネ夫人は本書でノラとヘルメルの運命を変えた鍵を握る人物です。
あやふやさ/不確実さ
先に書きましたが、本書はどうしてもフェミニズム的な所に目が行きますが、それだけではありません。
本書は自分という存在のあやふさ、愛の不確実さなどの方に重点を置いている様に思えました。
誰もが何かしら不安を抱えて不安定に生きている・・・。
それは昔も今も変わらないという事ですね。
もしアレンジをしたら
クログスタットがノラに対して偽証の件を突き付けている場面を読んだ時、「もしかしたら、サスペンスにアレンジが出来るんじゃないか?」と思いました。
クログスタットがヘルメル・ノラ夫婦の家を去った後に、彼が何者かに殺害された! なんて展開が起きても不思議ではない様に感じるのは私だけでしょうか?
まぁ、そんな事をしたら展開だけでなく内容が全く別物になってしまいますけどね(笑)。
・・・誰かアレンジしてくれないかな?
簡単なまとめ
やっぱり『人形の家』が今日まで生き残って読まれ続けているのにはちゃんと理由があるんだな、と思いました。
フェミニズム的な部分だけでなく、不完全な人間、善悪の判断なども的確且つ普遍的に描かれていると断言して良いでしょう。
分かりやすい物語でありながら、読了後は考えさせてくれるのです。
また、登場人物は多くはないですが、内容がとても充実しているので、途中で飽きたり間延びしたりはしませんでした。
興味がある方は是非とも読んでほしいです。
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