皆様こんにちは、霜柱です。
フランスの作家・哲学者、カトリーヌ・クレマン(Catherine Clément)の『皇妃エリザベート ハプスブルクの美神』(塚本哲也・監修、田辺希久子・訳、創元社)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
時代背景を絡ませてエリザベートの誕生から死までが書かれている
エリザベートは他の方々とは比べ物にならない程の、激動の人生を送っています。決して一言では語り切れない程の。
でも、何よりもフランツ・ヨーゼフと結婚した事が彼女の運命を大きく変えたのは間違いないでしょう。「嫌なら断れば良いじゃん」と今だったら思うかもしれませんが、当時はそんな事は出来ません。ましてや皇帝の希望を断るなんて無理な話です。
結婚後も、姑ゾフィーとの衝突、革命の余韻、民族主義の台頭などが次々と表面化したので、外でも内でも休まる事が無かったと断言して良いでしょう。
本書にはエリザベートだけでなく、家族やルイジ・ルキーニ、その他携わった人達も色々登場します。この時代に興味がある人はその辺りの絡みにも惹き込まれるかもしれません。
モーリス・バレス、E・M・シオラン、ブルーノ・ベッテルハイムなどのエリザベート観も興味深いです。
エリザベートの詩
エリザベートは沢山の詩を書いています。そんなに書いているとは思っていなかったので驚きました。
中でも崇拝者を驢馬に見立てて詩にしていたのは驚いたのと同時に痛快に感じました。しかし、そうしなければならない程、エリザベートの心は孤独で、気持ちを理解してくれる人が周りに殆どいなかったのでしょう。
その詩は一見皮肉ですが、よく読むとエリザベートの深い孤独が表れている様に感じました。
あと、印象に残った詩は「捨てられた女」です。その中の❝私は裏切り、裏切られた❞にエリザベートの今まで歩んだ人生が詰め込まれている様に思えるのは、私だけでしょうか?
簡単なまとめ
エリザベートは今では世界のあちらこちらで映画化やミュージカル化する程の、知名度と人気を博しています。なので、そういった作品を観た方なら本書に魅了されるのではないでしょうか?
綺麗な図版や写真も沢山載っています。装丁も中身も綺麗なので、美術館にいる気分になりました。