皆様こんにちは、霜柱です。
この間、『夢介千両みやげ』の感想を書きました。
今回は役ごとの感想を書いていきます。
役ごとの感想
夢介:彩風咲奈
小田原入生田村庄屋の息子の役。
訛りがとてもあり、いかにも田舎からやって来ましたという喋り方をしています(でも実際の小田原の人にはこんなに訛りはありません、笑)。
彩風さんは訛りや方言のある喋り方が、本当に上手く違和感がありません。作っている感じがせず、素で喋っている様に思えました。
夢介はぼ~っとしている様に観えますが、腕力が強く頭も切れます。
多分、朝月希和さん演じるスリのお銀とは最初に会った時点で、スリと見抜いていたと思います。
夢介は「こういう人が身近にいたら良いな」「こういう人になりたいな」と思わせる理想の人に描かれていました。
ただ、特段格好良い役という訳ではありません。だからこそトップスターが演じるには難役だったと予想します。
しかし、彩風さんは自然体で、人柄や気っ風の良さを滲み出しながら、夢介という素晴らしい人物を見事に具現化させていました。
本当にお見事です。
お銀:朝月希和
「オランダお銀」と呼ばれる女スリの役。
最初は夢介のお金を盗る為に近付きましたが、成功せずむしろスリをするという事に気付かれていました。
しかし、夢介はお銀を番所に突き出すわけでもなく、逆にお銀に100両を渡そうとします。
そんな懐の深い夢介に惚れたお銀は、押しかけ女房となり夢介と一緒に暮らします。
お銀は頼りになる姐さん的な所がありますが、嫉妬深い所も持ち合わせているのです。『CITY HUNTER』で演じた槇村香と重なる部分がありますね。
ただ、夢介もそうですが、このお銀もトップ娘役っぽくない役柄です。勝気な性格で、自分が主導権を握ろうとする傾向があります。
とは言っても、「本当に江戸時代にこの様な女性がいそうだな」と思わせる程の、演技で観客を引き付けたと言えます。
朝月さんは気の強い役も出来れば、可憐な役も出来るので、この役もはまり役だったと言えるでしょう。
総太郎:朝美絢
伊勢屋の放蕩息子の役。
本当に若旦那ならぬバカ旦那という感じで、終始笑いを取っていました。自分で「♪なんせこの顔 この器量 もててもてて しょうがない」と歌っていますが、惚れられても最後は別れています。原因は勿論、総太郎にあり(笑)。
また、「♪泣かせた女は星の数」とも歌っていますが「♪振られた女は星の数」の間違いでしょう(笑)。
総太郎は見ている分には面白くて楽しい人ですが、家族にこういう人がいたら本当に大変だと思います。親が文句を言いたくなるのは当然です。
奏乃はるとさん演じる父親の総兵衛から勘当を告げられた時は、部屋にこもり布団を被って拗ねています。ちょっと情けない姿ですが可愛らしくもありました。
また、格好良く美しい朝美さんがこういう役を演じているからこそ、より観客の笑いを取っていたと言えます。
ここまで三枚目に徹した朝美さんは珍しいのではないでしょうか?
新しい朝美さんを観る事が出来、本当に良かったです。
嘉平:汝鳥伶
夢介の爺やの役。
夢介の事が心配で心配で小田原から出てきます。
初めて夢介の家を訪れた時は、お銀と言い合いになり、彼女の事を悪く言いますが、それがいつの間にか、夢介の悪口に変わっていたのが笑いを誘っていました。
また、嘉平の役柄は『黒い瞳』のサヴェーリィチに少し似ています。
汝鳥さんは登場するとそれだけで、舞台を引き締め、同時に安心感を醸し出してくれます。色々な役を演じていますが、この嘉平という役も汝鳥さんに似合っている役でした。
後、舞台のメイクがいつもよりサッパリしている様に観えました(間近で観れば勿論濃いのでしょうが)。
伊勢屋総兵衛:奏乃はると
伊勢屋の主人で、総太郎の父親の役。
総太郎に手を焼いている事が本当に伝わってきました。それでも何だかんだと許して甘々な対応をしてしまうのは、総太郎が可愛いからでしょう。
しかし、野々花ひまりさん演じるお松を妊娠させてしまった事に対しては、さすがに我慢の限界が越え、総太郎に勘当を言い渡します。
とは言え、最後は夢介のおかげで勘当は解きます。
奏乃さんは安定した演技力で、汝鳥さんと同じく舞台を引き締めていました。
伊勢屋登勢:千風カレン
総兵衛の妻で、総太郎の母親の役。
総兵衛と同じく総太郎に手を焼いています。ただ、総兵衛より甘く、総兵衛が総太郎に勘当を言い渡した時は、そこまでしなくてもという感じで、総太郎を庇います。
総太郎の事を可愛く思っているが、ちょっと過保護な部分を上手く出しながら演じていたと思いました。
大前田源吾:透真かずき
貧乏浪人の役。
その名の通り、貧乏の武士で、まず着ている着物が薄汚いです(笑)。それだけでなく、髭と髷もぼさぼさという状態。
ですので、最初は透真さんだと全然分かりませんでした。
しかし、その分他の役と差別化している役とも言えます。綺麗な見た目ではありませんでしたが、特徴的で重要な役だと思いました。
一つ目の御前:真那春人
偽旗本という役柄。
『CITY HUNTER』の時に演じたジェネラル(将軍)もそうでしたが、言動がいちいち大袈裟な感じでした(良い意味で)。
ただ、今回は和物なので歌舞伎役者のイントネーションだったというのが特徴的です。
悪役で眼帯をしていましたが、その姿も似合っていました。
鬼熊:久城あす
一つ目の乾分の役。
ぼさぼさの髭面で、杵の様な武器を持っている悪人です。
もうこの風貌だけで、鬼熊という名前が似合う様に感じるのは私だけでしょうか?
もう少しアニメチックにしたら『がんばれゴエモン』というゲームに出てきてもおかしくなさそうなキャラクターです(笑)。
春駒太夫:愛すみれ
春駒座の娘手品師の役。
手品師という役ですが、手品をしていたのは最初に登場する時と、総太郎を柱に縛り付ける時だけです(笑)。
比較的貫禄があり、時には総太郎を叱ったりして、威勢の良さが出ており、それらが印象に残りました。
ただ、時には色っぽく映る事があり、目を引きました。
台詞回しや声色の使い分けがとても上手く、そこに人生の熟練者という感じが出ていたと思います。
市村忠兵衛:桜路薫
八丁堀・南町奉行所の老同心。実は金の字の叔父(伯父)。
話し方や声色に、やや年老いた感じが出ており、世間の様々な事を見たり対応したりしてきたのだろうという事がしっかり滲み出ていました。
また、いぶし銀の様な良い味をとても醸し出していたのが、観ていて伝わってきました。
桜路さんは若い役より、年の行った役の様が似合う気がします。
三太:和希そら
お銀の仲間でスリの少年の役。年齢は17歳。お糸とは幼馴染。
スリという役柄ですが、根っからの悪という訳ではありません。親がいなく、また妹と弟を養う為にスリをやってしまっているのです。
妹や弟を大事に思う気持ちがとても伝わってきました。もし、三太がお金持ちなら夢介の様になっていたかもしれませんね。
今作では和希さんの出番は多かったです。ソロも少しあり、彩風さんと朝月さんと3人で並んで歌う場面もありました。その場面は何故かちょっとジーンときました。
和希さんは今年で研13ですが、未だに少年の役は嵌まっています。男役で少年の役を1番上手く演じ、ピッタリ似合うのは和希さんと言っても過言ではないでしょう。
また、今作から雪組生になりましたが、とても馴染んでおり、最初から雪組にいる様な雰囲気でした。
宙組にいた時も活躍していましたが、雪組に異動してからはより活躍の場が与えられたと思います。今後の活躍を更に期待します。
浜次:妃華ゆきの
五明楼の芸者の役。
一つ目の御前と組んで、夢介から金を巻き上げようとします。しかし夢介は浜次を本気で案じ、50両を渡します。
そんな心意気の良い夢介に浜次は惚れてしまいます。
着物がとても似合っており、美しい姿でした。特に流し目はあまりにも官能的で、観ていて惚れ惚れしてしまいました。
実際にこの様な人がいたら、とても男性にモテるでしょう。
今作では妃華さんの台詞は多いですが、それだけでなく、ほんの少しですがソロ歌唱もありました。歌は普通でしたが、とにかく目を引く美しい姿なので、とても良い役に出会えたのでは思いました。
悪七:綾凰華
船頭であり、お滝の夫。一つ目の御前の手下でもある役。
いかにも「俺は悪いぜ!」という雰囲気を出しながら登場します。もう質の悪いチンピラという感じでしたね。
夢介を殴ったり、金を巻き上げようとしたり、どうしようもない奴ですが、最後は改心し、お糸のお蕎麦屋を手伝います。
印象に残る役であり、綾さん自身はこの役を楽しんで演じている様に観えました。
ただ、綾さんは今作で宝塚を退団します。『CITY HUNTER』で演じた槇村秀幸がとても格好良く、これから更に色々な役を観る事が出来ると楽しみにしていたので、退団は本当に残念でなりません。
退団後もお幸せな人生を歩む事を祈っています。また、最後まで応援もしております。
お松:野々花ひまり
伊勢屋に務めている女中の役。
総太郎の事を好きになり、更には彼の子を宿します。しかし総太郎は夢白あやさん演じるお糸と婚約してしまい、それを知ったお松は、総太郎と結ばれなきゃ死ぬと言い出します。
総太郎は女性にだらしないですが、そんな彼とそれでも結ばれたいという気持ちにいじらしいと同時に、意志の強さを感じました。
最後は無事に総太郎と結ばれたので、良かったですね。
因みにお松が登場した時、「本当に野々花さんなの?」と思いました。何故なら非常に垢抜けておらず、喋り方もたどたどしかったり訛りがあったからです。
全く洗練されていない姿が逆に目を引きました。
野々花さんも本当に色々な役をこなします。以前から演技は上手かったですが、星南のぞみさんと彩みちるさんの影に隠れてしまっていた印象がありました。
しかし、前作の大劇場公演『CITY HUNTER』を最後に、星南さんは退団、彩さんは月組へ異動したので、その分野々花さんが活躍しやすくなる環境になったと思います。
今後も雪組のお芝居に重要な存在となる事は間違いありません。
お滝:希良々うみ
悪七の妻の役。
悪七と組んで夢介から金を巻き上げようとします。更には総太郎からも金を巻き上げようとする悪い女(笑)。
しかし、夢介の前で演技をしている場面は、いかにもという台詞でちょっと客席から笑いも起きていました。
悪七と一緒に伊勢屋へ行って千両を巻き上げようとする場面では、逆に夢介がお滝を売り飛ばすと脅し、悪七とお滝は悪い事をしたと謝罪をします。
結構難しい役柄だったとは思いますが、希良々さんはそれを上手く演じていました。
猪崎:星加梨杏
一つ目の乾分の役。
この一つ目の輩は悪い奴らばかりで、見た目も悪人という雰囲気です。
ただ、この猪崎だけは雰囲気が違っています。他のキャラとは異なり静かでクールな感じです。
一つ目の乾分の中では目立つ方だったと思います。
金の字:縣千
遊び人金さんと呼ばれている役。
もう登場するだけで、目を引きました。とても筋骨隆々とした感じで格好良かったです。
スターのオーラが溢れており、ただ、座っていたり歩いているだけでも絵になりました。
最初は遊び人風情の姿で登場しますが、正体は南町奉行の遠山金四郎。遠山の金さんという言い方が有名かもしれませんね。
遠山金四郎として最後は登場します。江戸で使用禁止とされている火玉をお銀が使ってしまったので、金四郎の前に連れ出されました。
この時の縣さんはとても威勢が良く迫力がありました。流石に「この背中の桜吹雪、まさか覚えがねえとは言わせねえぜ!」とは言いませんでしたが(笑)。
『CITY HUNTER』では海坊主という宝塚では異色の役を演じただけあって、演技力も素晴らしかったのです。
着物姿・青天もとても似合っていて、「実際にこういう人がいたのでは⁉」と思わせました。
現在縣さんは研8ですが、これから更にどの様に伸びるのか、もっともっと楽しみになりました。
お鶴:花束ゆめ
三太の妹の役。
とても可愛らしかったです。
言葉遣いが何故か凄く丁寧で、それが笑いを取っており、観客に強く印象付ける事に成功したと言えると思います。
お糸:夢白あや
蕎麦屋の娘で春駒の付き人、三太の幼馴染でもある役。
今作に登場する女性は気が強かったり、色っぽかったりするキャラクターが多いですが、このお糸という役は可憐な少女でした。
夢白さんにピッタリの役で、目を引きました。
総太郎が惚れるのも無理はない(笑)。いや、男性なら惚れるまでいかなくても、「あの子可愛くて綺麗!」と思う事は間違いないでしょう。
お糸は家の借金を総太郎が肩代わりする代わりに、彼と結婚しなければいけない状態になります。お糸は総太郎と結婚するくらいなら死ぬと言います。お松とは逆のパターンです(笑)。
しかし、夢介のおかげで、総太郎との縁談は破談になります。描かれてはいませんが、恐らく三太と後に結婚するのでしょう。
夢白さんの可憐さがとても出ていた役だと思います。
亀吉:莉奈くるみ
三太の弟の役。
お鶴と同じく、この亀吉という役も可愛らしかったです。
ただ、お鶴とは違って、いかにもひょうきんな感じが出ていました。「こういう男の子って実際にいそうだよね」と思わせるキャラクターになっていたと思います。
走助:華世京
岡っ引きの役。
まず驚いたのはこの役をまだ研2の華世さんが演じていた事です。
とても研2とは思えない程の自然な演技、歯切れの良い爽やかな声で上級生と対等に舞台に立っていました。
結構目立つ役で、ほんの少しですがソロで歌う場面もありました。良い声です。
今の時点で、上級生と比べても実力が劣らないと思われるのに、この先学年が上がった時、更にどの様に化けるのか?
もう華世さんの今後が楽しみで仕方ありません。最強の役者が雪組に配属して良かったですね。
雪組は芸達者が多い
上記に記載した方々以外も、皆とても演技が上手かったです。「本当に江戸の町に来てしまったのか?」というくらいでした。
上級生から下級生、全員その役になりきっており、少なくとも私が観た限りでは、演技がイマイチな方はいなかったです。
『CITY HUNTER』もそうでしたが、今作もコメディ要素がある作品です。コメディは演じるのが難しいと言われています。
しかし、明るくて楽しく、観ていてハッピーな気持ちになる事が出来る作品に仕上がっていました。
これも雪組生全員の力でしょう。
今後も雪組のお芝居からは目が離せません。
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