スペインのメロディック・スピード・メタル・バンドが2001年にリリースした2ndアルバム。
全11曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。
バンドメンバー
- Elisa C.Martin:Vocals,Backing Vocals
- Enrik Garcia:Guitars,Backing Vocals
- Albert Maroto:Guitars,Backing Vocals
- Anan Kaddouri:Bass
- Jorge Sáez:Drums
- Roberto P.Camus:Keyboards
1st『SHADOWLAND』の頃とメンバーは同じ。
各楽曲ごとの解説と感想
①The Ceremony
1分半程のインスト。バンド演奏ではなく、キーボードのみの演奏である。
大仰でコテコテなストリングスとコーラスが、もう堪らない。少しスピードをダウンし、ハープ音を入れ、より幻想度を上げる所がある。それが琴線をとても揺さぶるのだ。
次の曲への期待感を高め、メロスピ好きなら、このインストだけで引き込まれる筈。
②Somewhere In Dreams
名曲である!!
前曲から繋がった状態で始まるミドル・テンポの曲。始まってすぐの甘い音色のギターから、既に引き込まれる。とてもノリが良く歌メロも印象に残る。
Elisaの力強くも繊細な歌声が堪能出来る曲だ。楽器陣では、ベースとドラムは勢いがある演奏をし、ギターはリフもソロも細やかな演奏をし、キーボードは豪華なサウンドを弾き、曲を構築している。
とても鮮やかで素晴らしい曲だ。
③Maid Of Orleans
この曲も名曲である!!
パワフルな疾走曲である。②よりも激しめの演奏だが、ギターソロは煌びやかな演奏をしており、キーボードの華美な演奏が曲を豪華にしている。
Elisaは歌う箇所により、優しく歌ったり、男勝りの様に力強く歌い、曲にメリハリを付けている。ライブでは間違いなく盛り上がる曲だ。
個人的には3:12~3:43のギターソロと一緒に演奏される、キラキラしたキーボードの音が見事で細やかさを感じる。
④Bells Of Notre Dame
引き続き疾走曲である。この曲でも勿論、琴線を揺さぶるメロディや豪華で派手なサウンドを堪能出来る。
個人的には、歌メロはサビよりもAメロの方が印象に残った。特にAメロではElisaが高い声で歌う所があるが、ギリギリシャウトを使う訳ではない。また、声が割れたり濁ったりせず、むしろ艶やかさを醸し出していた所に力量を感じた。
この曲は2番のサビの途中で、フェイドアウトして終わるが、少し終わるのが早すぎるように感じた。
⑤Sliver Lake
緩急のある曲。主に激しい時が多く、他曲と比べてヘビーである。ギターの音色も甘めでなく鋭い。Elisaはこの曲でも力強い声と優しい声を使い分けている。
曲全体としては、メロディよりも勢いを重視している感じがした。その為、美しい歌メロは少ない。しかし、激しいのが良いという人は好むかもしれない。
⑥Mortal Sin
やや不気味でミステリアスなピアノで始まるミドル・テンポの曲。
正直、イマイチの曲である。
歌メロや楽器陣の演奏、全体的な構成など、どれを取っても非常に弱い。強いて書くなら、Aメロの時の、ややリズミカルなメロディと、その際に演奏されている不気味なストリングスのみが、やや印象に残った。
⑦The Sound Of The Blade
淋しげなピアノで始まるバラード曲。演奏されている楽器はピアノとキーボードのみ。
人によっては、速弾きで琴線を揺さぶるギターの演奏が無いという事で、物足りなく感じる人がいるかもしれない。しかし、その分Elisaのしとやかで憂いのある歌声を聴く事が出来る。
Elisaは男勝りに力強く歌うイメージがあるが、バラードでは繊細に落ち着いた声で、歌う事も出来るのである。バラードが好きな人は是非、この曲を堪能してほしい。
⑧Beyond The Fire
名曲である!!
出だしの濃いキラキラしたキーボード、その後の速弾きのギターを含むバンド演奏の展開を聴いただけで、名曲と判断できる疾走曲である。
歌メロはとてもノリが良く、印象に残りやすい。勢いもあり、所々に琴線を揺さぶる音色やメロディが入っているので、何回も聴きたくなる曲だ。
Elisaの歌声も輝いていてとても良い。
⑨Quest For The Eternal Fame
サビ始まりのミドル・テンポの曲。Bメロになると楽器陣の演奏が激しめになる。
この曲ではキーボードが特に多用されている(ストリングス風の音色や、ハープ風の音色、勿論ピロピロした音もある)。また、コーラスも活躍している。
壮大な雰囲気がありながら、爽やかさも感じる曲である。
キーボードの音が特に好きだという人は、聴くべき曲だと思う。
⑩Hand In Hand
やや激しめのギターリフから始まるミドル・テンポの曲。
この曲では楽器陣は、激しくも輝かしいプレイをしている。Elisaは肩の力を抜いて歌っている様に思えた。
ただ、全体的には良くも悪くもない。歌メロも印象に残らない訳ではないが、インパクトに欠けると思う。ただ、2:48~の間奏はキーボードの豪華な演奏が聴く者を奮い立たせてくれる。また、3:15~3:38の間はギターソロとキーボードソロの掛け合いを聴く事が出来、それらの点は良かった。
⑪The Fall Of Melnibone
10分30秒程の大曲。出だしは静かに始まり、コーラスが合唱する。その後、壮大になった所で、激しいギターリフが入り曲調が変わる。
基本的には疾走曲だが、転調が多く、ヘビーな雰囲気になる部分も出てくる。それでも、豪華なキーボードの音色は散りばめられており、速弾きのギターソロも聴く事が出来る。
しかし曲全体としては、冗長な所もややあり、歌メロが少し弱く感じたというのが正直な感想だ。悪くはないが良くもない曲だと思う。
全体的な感想
今作はメロディック・スピード・メタルの中で名盤と言える。正直、イマイチな曲もあったが、それを踏まえても、今作はメロディック・スピード・メタルの中で格段に素晴らしい作品だ。
豪華に大仰に入っているキーボードの音色や、リフでは激しく、ソロでは琴線を揺さぶる甘い音色のギター、タイトな演奏でリズムを支えるベースとドラム。
そして、時に力強く、時に優しく繊細に歌うElisaのボーカル。それらが全て組み合わさる事によって、輝かしくパワフルなサウンドになっている。
因みにメタルの中でメロディック・スピード・メタルはランクが下の様らしい。それは非常にけしからんことである。今作の様に琴線を揺さぶるメロディが多く含まれているメロディック・スピード・メタルが出てきたからこそ、メタルは今日まで生き残ってきたのだと、私は確信している。
これが仮に(サブジャンル名を挙げるのは気が咎めるが)スラッシュ・メタルやデス・メタル、もしくは王道のヘビー・メタルだけだったら、間違いなくメタル人口は広がらなかったであろう。もしメタルがそういう状態だったなら、私はメタルに嵌まる事は無かっただろう。
人によっては今作『THE HALL OF THE OLDEN DREAMS』は「サウンドが濃すぎる」、「大仰だ」と思うかもしれない。しかし、何回も書くが、琴線を揺さぶるサウンド・劇的なサウンドに興味があるなら、是非聴いてほしい。決して損はしない作品であると思っている。
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