皆様こんにちは、霜柱です。
私は先日、『蒼穹の昴』の感想を書きました。
今回は役ごとの感想を書いていきます。
役ごとの感想
梁文秀(リャンウェンシゥ):彩風咲奈
順桂・王逸の同期で、官吏の役。
白太太のお告げを聞き、科挙で主席という成績を収め、国を改革しようと奮闘しますが、袁世凱らに命を狙われて日本に亡命します。
彩風さんは本公演では『CITY HUNTER』の冴羽獠、『夢介千両みやげ』の夢介の様に、ちょっとアクが強かったり、特徴的な役が続いていたので、今作でようやくオーソドックスな役に巡り合えた事になります。
台詞回しや歌がまた一段と上達しており、特にソロで歌う曲では、伸びやかな歌声を堪能出来る箇所があったので、聴きながら身震いしました。
知性がありながらも温かみのあるこの役は彩風さんにピッタリでした。
ピッタリなのは役柄だけではありません。清朝の衣装も難なく着こなしており、本物の清朝の人がいるのかと思った程です。
李玲玲(リィリンリン):朝月希和
李春児の妹の役。
最初に登場する時はボロの服を纏っていて、子役の様な可愛らしい声で台詞を言います。
綺麗で澄んだ高い声がとても印象に残りました。『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』で演じたユディットを彷彿とさせましたね。
その後段々と成長し洗練されていき、チャイナ服を身に纏った姿はとても美しかったです。
とは言っても、役柄としては地味である事は否めません。
朝月さんは今作で宝塚を卒業します。ですので、もう少し華やかな役を演じてほしかったという気持ちもあります。
しかし、デュエットダンスでは本当に幸せそうに踊っています。
現時点で、5組の中では1番幸福感が目に観えるトップコンビだと感じました。
李春児(リィチュンル):朝美絢
李玲玲の兄の役。
この役では自分の事を「オイラ」と言っており、それがとても可愛らしかったです。
また、「チキショー、チキショー」と言いながら歌う場面や、日本公使館で梁文秀に生きてほしいと泣きすがる場面はとても母性本能をくすぐられました。
勇ましい役ではありませんが、終始愛らしい役柄であり、登場するとちょっと癒されます。
『CITY HUNTER』で演じたミック・エンジェルは格好良く、『夢介千両みやげ』で演じた伊勢屋総太郎は面白く、どれも似合っていましたが、今作の様な愛らしい少年っぽい役もまた似合っていました。
どんどん朝美さんの役の幅が広がっていくので、次はどの様な役を演じるか楽しみになります。
李鴻章(りこうしょう):凪七瑠海
漢人将軍で、袁世凱の上官の役。
ポスターで髭を付けた姿を見た時は「悪役なのかな?」と思いました。何故かと言われると圧倒的に凪七さんだけ雰囲気が違うのです。「ゴゴゴゴゴゴ」とオーラを発している強いボスの様に私は見えました。
しかし、観劇した時はポスターの様に恐い雰囲気ではなく悪役でもありませんでした。
文武両道に優れており、国の事を思って動ける度量のある人物です。
凪七さんは登場した瞬間から舞台を引き締めていました。
一言一言の台詞に重みがあり、また艶のある声なので、凪七さんの台詞や歌声はずっと聴いていたい気持ちになります。
スタイルも良くお髭の姿も似合っていました。
個人的には凪七さんのトップスターになった姿を観たいですが、階段降りでは相変わらずの3番手の位置(泣)。
次に出演するのは星組の全国ツアー『バレンシアの熱い花』『パッション・ダムール・アゲイン!』ですが、何と主演をします!
とは言っても、凪七さんがトップスターになる事はないのでしょう。
例えトップスターになれなくても、せめて2番手羽根は背負わせてほしいですね。
順桂(シュンコイ):和希そら
梁文秀・王逸の同期の役。
梁文秀や楊喜楨などと共に国を改革していこうとします。
ただ、他の登場人物より、ちょっと感情的だったり思い込みが激しい部分がある性格です。
場合によっては力を使う事も辞さないと考えています。そこが他の仲間とは違うポイントですね。
西太后を爆殺しようとしますが、失敗して自身が爆死してしまいます。
悲しい結末になってしまう役柄ですが、順桂が国を変えて良くしたいという強い思いは伝わってきました。
それにしても和希さんは歌・演技・ダンス、どれも本当に上手いです。
安定感が抜群で、観ていて安心します。雪組の大事な戦力になっている事は言うまでもありません。
光緒帝(こうしょてい):縣千
清朝第11代皇帝で西太后の甥の役。
ちょっと気の弱い帝という感じで、実質の権力は西太后が握っている事が観て取れました。
しかし、物語が進むに連れて、段々と頼もしくなり成長していく姿も描かれていました。
時代や国が違いますが、この役は『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフと重なる部分がありましたね。
ソロで歌う場面が少しありました。
『Sensational!』の時は活舌が悪く、音程も怪しい所があったので、その時と比べると改善されて上手くなっていたのが聴いていて分かりました。
ミセス・チャン:夢白あや
謎の美女という役柄ですが、実は西太后のスパイ。
ポスター入りした時はその美しさに目を引かれました。ポスターに載るという事は役柄としても、相当重要な役なのだろうと思い期待をしていました。
いざ観てみたら、確かに夢白さんの美貌に目を引かれます。チャイナドレスもとても似合っていました。
ただ、出番は1幕目も2幕目も少ししかなく、思った程登場しません。
原作では重要な役だったと思いますが、正直に書くと今回の宝塚版では、いてもいなくても大して変わらない役柄になっていたのです。
あまりの出番の少なさにがっかりしたのは、私だけではない筈。
次期雪組トップ娘役に決まったのですから、もう少し出番を増やしてくれても良かったのではないか?と思ってしまいました。
白太太(パイタイタイ):京三紗
老占い師の役。
登場した時から、只者の婆さんではない雰囲気が漂っていました。
雰囲気だけでなく、台詞の言い回しが本当に巧みで、痰を絡ませている様な喋り方をしていたので、「どうやってこの声を出しているのだろう?」と気になってしまう程です。
李春児に嘘のお告げを告げた事について、「あの子にどうして本当の事が言えよう」(←この様なニュアンスの台詞)と梁文秀に語っていた場面は涙を誘いました。
本当に感涙ものです。
どの役にも言える事だとは思いますが、この役は単に実力があるだけでは出来ない気がします。
京さんの底力を観た気がしました。
伊藤博文:汝鳥伶
日本の初代内閣総理大臣の役。
登場するのは2幕目の最後の方のみです。
しかし、登場した瞬間「本物の伊藤博文か!?」と思いました。
白いモジャモジャしたお髭とちょっと広いおでこ(失礼!)がしっかりと再現されていたのです。『黎明の風』で吉田茂首相を演じた時もそうでしたが、汝鳥さんは日本の首相を演じさせたら間違いなく宝塚で1番上手いと思います。
今作で演じた伊藤博文は梁文秀に対して「生きて為すべき事をせよ」と言います。
ただ、あまりにもやり取りが短すぎて、あっという間に終わってしまいました。
もう少し汝鳥さんの深い演技を観たかったです。
因みに汝鳥さんは1幕目の最初に、居酒屋の親父の役で登場します。
この役もハッキリ言ってちょい役でしたが、一言発しただけで舞台の空気を変えました。
もう、これはさすがとしか言いようがありません。
西太后:一樹千尋
亡き清朝第9代皇帝・咸豊帝の側室、光緒帝の伯母の役。
男役の一樹さんが西太后を演じると聞いた時は、「どの様にやるんだろう?」と思っていましたが、いざ観てみたら、もう貫禄ありありの西太后でした。
登場した瞬間から、何者も寄せ付けない強いオーラを出していたのです。
観劇後に西太后の実物の写真を見ましたが、実物よりも迫力がある様に感じました。
観劇前は「声をどの様にするのだろう?」と思っていましたが、もう男役のままの声でしたね。
ですので、「男役が女役を演じています」感がありありと出ていました。
もう少し女声っぽくした方が良かったのではないか?と思いましたが、西太后の様な荘重な人物はこれが調度良いのかもしれません。
今作の主役は梁文秀ですが、裏の主役は西太后と言っても過言ではないでしょう。
楊喜楨(ようきてい):夏美よう
大学者改革派の筆頭の役。
優れた知性の持ち主で梁文秀達と共に、国を改革していこうとしますが、栄禄の部下に射殺されてしまいます。
1幕目・2幕目、どちらも出番や台詞が多く、夏美さんの演技やお声を沢山観たり聴けたりしたのが嬉しかったです。
栄禄(えいろく):悠真倫
内務府大臣、西太后側近の権力者の役。
登場した瞬間から「あっしは私利私欲で動く悪い役人でっせ」というオーラがプンプン出ていました(笑)。
特に目や唇の動かし方で、それを表現していたと思います。
また、最後の方の場面で、李鴻章から自身が行った事について言及される場面は、情けない感じが出ていて、小物の悪党を見事に体現していました。
康有為(カンヨウウェイ):奏乃はると
公羊学者の役。
理想の国を作る為に改革をしていこうと考えていますが、理想論で終わってしまっているというのがポイントです。
悪役ではありませんし人が良い性格ですが、光緒帝に発破をかけてちょっと暴走する所に人間味を感じました。
少しですがソロで歌う場面があって良かったです。奏乃さんの歌声は雪組の賜物と言えます。
李蓮英(りれんえい):透真かずき
大総管太監で、栄禄の朋友の役。
1幕目に人力車に乗って登場しますがその際に、梁文秀に「ワシがお主に頭を下げる日は来ない」(←この様なニュアンスの台詞)と厭味ったらしく言って去っていきます。
態度や話し方だけでなく、目の使い方にも人民を見下している態度が観て取れました。
好印象を抱ける役柄ではありませんが、強い印象を残したのは、透真さんの演技力があってこそだと思います。
ただ、他の場面でも登場していたと思いますが、それはちょっと印象に残っていません・・・。
袁世凱(えんせいがい):真那春人
李鴻章の幕僚の役。
1幕目では好印象な人物として登場しましたが、李鴻章が地位を退いた後の2幕目では将軍になっており、態度も偉そうになっています(笑)。
袁世凱も栄禄と同じ様に、自身が手に入れた地位や名誉を守る為だけの人になってしまい、印象がガラリと変わったのがポイントです。
2幕目の後半では、梁文秀を捕えようと躍起になっていますが、焦り過ぎていて空回りしていました。
「あ~、こういう人いるよね」と思わせる人物を上手く体現していたと言えます。
全く今作とは関係無い話ですが、私の以前の職場にある先輩がいました。
その人はアルバイトでしたが、仕事の事を親切に教えて下さり、冷静に物事を判断する方でした。
しかし、社員に登用された途端、態度がガラリと変わり偉そうな振舞いをして、仕事も大雑把になっていったのです。
袁世凱を観ながら、その人の事を思い出してしまいました。
その人は今も同じ職場で働いているのでしょうか? まぁ、どうでも良いですが(笑)。
岡圭之介:久城あす
日本の記者の役。
清朝の変化を外から見ている役で、また、数少ない清朝人以外の人物なので印象に残りました。
本公演では久しぶりに悪役ではない役を演じ、優しく好青年の様な雰囲気が出ていたのが良かったです。
安徳海(アンドーハイ):天月翼
富貴寺で暮らす盲目の胡弓弾き、以前は李蓮英に仕えていた役。
登場した時のインパクトが凄すぎました。「本物の爺さんが舞台にいるのか?」と思わせる程だったのです。
宝塚のメイクと言うとカラフルで煌めいていますが、天月さんのメイクはその逆です。
地味でちょっと薄汚いメイクに仕上がっていました。
どの様にしてメイクをしたのかが気になりますね。
勿論、単にメイクだけでなく、演技にもその老齢さがしっかりと込められており、舞台を引き締めていました。
今作での天月さんには脱帽です!
譚嗣同(タンストン):諏訪さき
康有為の弟子の役。
眼鏡をかけてちょっと訛った喋り方をしている明るいキャラクターです。
梁文秀達と共に国を改革していこうとしますが、最後は袁世凱に処刑をされてしまいます・・・。
李玲玲に淡い恋心を持っており、告白をする場面がありますが振られてしまいます。
明るめのキャラだからこそ、逆に切なさがより伝わってきました。
諏訪さんも芝居が巧みな方であり、色々な役を本当に演じる事が出来ます。
次はどの様な役を演じてくれるかが楽しみになりますね。
隆裕(ロンユイ):野々花ひまり
光緒帝の皇后、西太后の姪の役。
正直出番は少なく、その他大勢に近い役で台詞も少しのみでしたが、皇后の姿は艶やかで印象に残りました。
黒牡丹(ヘイムータン):眞ノ宮るい
京劇の花形役者の役。
眼帯をしている姿がミステリアスで格好良く、登場している時はもう目を引きましたね。
京劇をしている姿もサマになっており、機敏な動きが印象に残りました。
何だか色々付いている衣装だったので、恐らく重かったと思います。それだけでなく、長い槍も振り回すのですから、かなり大変だったでしょう。
1幕目のみの登場ですが、非常にインパクトのある役でした。
王逸(ワンイー):一禾あお
梁文秀・順桂と同期の役。
梁文秀達と共に国の改革を目指しますが、李鴻章に鋭い分析力を見抜かれ彼の部下になります。
台詞や出番が多く目立つ役でした。
実力もあり、特に朗々とした低い歌声は男っぽかったです。これから段々と上級生になるに連れて、より深みと色気のある聴き惚れる様な声になるでしょう。
雪組は巧みなお芝居をする方々が多い
『夢介千両みやげ』の役ごとの感想でも書きましたが、雪組はお芝居が上手い方ばかりです。
『蒼穹の昴』は荘重な物語なので、深みのあるリアルな演技が求められます。
しかし、雪組生は皆お芝居が上手かったので、清朝の世界に見事に連れて行ってくれました。
お芝居と言うと月組が挙がりますが、負けず劣らずなのが雪組と言っても過言ではないでしょう。
ただ、今作では娘役の大部分がその他大勢という役柄でした。
ポスター入りしたミセス・チャンを演じた夢白さんでさえ、出番はあまり無かったのです。
娘役がお好きな方にとっては、その点に関して不満が残る作品になると思います。
とは言え、それでも『蒼穹の昴』を舞台化した事は間違いなく成功と言えるでしょう。
何故なら、そこには「本物の清朝の世界か!?」と見紛う程の素晴らしい舞台があるのですから。
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