皆様こんにちは、霜柱です。
私はこの間、『応天の門-若き日の菅原道真の事-』の感想を書きました。
今回はその公演の役ごとの感想を書いていきたいと思います。
役ごとの感想
菅原道真:月城かなと
菅原是善の三男で文章生の役。
門の上に登場した瞬間、その凛々しいお姿に目を奪われました。
演技・歌がとても上手く観ていて安心感がありますね。
亡き兄の吉祥丸(きっしょうまる)について語る場面は感情を吐露したりしますが、今回演じた菅原道真はあまり喜怒哀楽がありません。
ですので、その分感情表現が難しかったと思います。しかし自然に演技をしており、時折笑いを取っていたのも流石と言えるでしょう。
色々な登場人物から慕われたり信頼されたりしていますが、どこか孤独を背負った様な寂しさが滲み出ていたのも良かったです。
因みに今作はある事件を解決する事が目的で、誰かと結ばれる事はありません。
その為、トップコンビの愛や恋の絡みが観たいという方にとっては、ちょっと物足りなく感じる可能性があります。
ですが、誰とも結ばれなくても良いと思います。それがメインではないのですから。もし今作で、愛や恋を入れたら逆に散漫になり、ストーリーが中途半端な仕上げになっていたかもしれませんね。
昭姫(しょうき):海乃美月
唐人の女店主の役。
気が強い姉御肌の気質を持っていますが、流行り病の後遺症で職を失った女性を自分の店で雇う優しい一面も持っています。
特に「世間知らずなお坊ちゃまな事!」(←こんなニュアンスの台詞)と菅原道真に言う時は迫力がありました。
昭姫は主人公の菅原道真と共に事件を解決しようとします。最後はこの2人が結ばれるのかと思いきや、その様な結末にはなりませんでした。
唐の鮮やかな衣装が似合っており、存在感がとてもありました。ふと魅せる仕草や表情が色っぽかったのも良かったです。
トップ娘役が演じる役の中では、結構珍しい役の様に感じましたが、しっかりとこなしていました。
新たな海乃さんを発見出来た気がします。
在原業平:鳳月杏
左近衛権少将で検非違使の長の役。
菅原道真や昭姫と共に事件を解決しようと奮闘します。
真面目な役かと思いきや、良い意味でちょっと軽い所もあったりすので、面白みのあるキャラクターだと思いました。
事件の黒幕に藤原基経が関わっていると知った時は臆病風に吹かれて、手を引いてしまいますが、再び協力して解決へと導きます。
やはり鳳月さんは和物でも、その素晴らしいスタイルは隠せませんね。もう目が引かれますね。
歌も台詞も伸びやかなので、聴いているととても良い気持ちになってきます。
鳳月さんもどの様な役もこなしますね。
桂木(かつらぎ):梨花ますみ
菅原家に仕える女房頭の役。
出番は少しで物語を左右する役ではありませんが、ちょっとコミカルさがあり、良い意味で舞台を緩ませてくれました。
梨花さんは今作の上演が終了した後、月組の組長に就任します。
月組出身なので古巣の月組には約23年ぶりに戻ってきます。ただ、その当時の月組生は梨花さん以外全員ご卒業しています。顔ぶれは全然違いますが、今の月組を支えていってほしいですね。
藤原良房:光月るう
藤原北家の当主で清和邸の後見人、基経・高子兄妹の養父の役。
基経と共に多美子を亡き者にし、高子を入内させようとします。
老齢ですが今回は悪役です。ですので、単に老人っぽく話すのではなく、そこに悪役特有の怖さもしっかり滲み出ていました。もう流石という感じです。
出番も多く、舞台を強固に締めていたと言えます。
光月さんは今作を最後に宝塚をご卒業します。
まさか、光月さんが退団をするなんて思いもしませんでした。ゆくゆくは専科に行って更に活躍されると思っていたので・・・。
ご卒業は本当に寂しいですが、この先もお幸せな人生を歩む事を祈っております。
山路(やまじ):白雪さち花
藤原高子に仕える女房の役。
出番や台詞も少なめでしたが、高子の事を心配し気にかけているお姿が印象に残りました。
清和帝(せいわてい):千海華蘭
13歳の天皇の役。
千海さんは今年で研18になりますが、まさかこの学年で、しかも退団作で13歳の役とは!
ご本人も大層驚いたと思います。
しかし、その学年になってもこの役を瑞々しく且つ若々しく違和感なく演じていたのは、もう千海さんの強みだと断言して良いでしょう。
千海さんも今作を最後に宝塚をご卒業します。
どの様な役もこなし、また月組の顔と言える存在だったので、本当に退団が惜しまれます。
宝塚をご卒業後も、素晴らしい人生になる事を祈っております。
菅原是善(すがわらの これよし):佳城葵
道真の父親で清和帝の侍読の役。
優しい性格の父親です。息子の吉祥丸が亡くなった原因は藤原家の獰猛な狩猟犬に噛まれ、狂犬病にかかり、それが原因で亡くなりました。その際、力のある藤原家には何も言えませんでした。
また、道真が関わっている事件に基経が関わっている事を知り、「藤原家とは関わるな」と言い、道真に軽蔑されます。
一見すると、気が弱く不甲斐ない人物に見えますが、もし藤原家に対して追及をしていたら、もしかすると菅原家は無事で済まなかった可能性もあります。
特に昔は「力のある者が正義でいつでも正しい」ことになっていた時代です。
自分1人だけなら、なりふり構わず出来るかもしれませんが、家族がいたらなかなか動けないでしょう。
佳城さんはその計り知れない苦悩を見事に体現していました。
もしこの時代にカラオケがあったら是善は間違いなく、「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ POISON」って歌っていたでしょう(笑)。
白梅(はくばい):彩みちる
藤原家の女房の役。
ちょっと見た目が緋村剣心っぽいです。
登場した時から、もうとにかく可愛い!!の一言です。家に持って帰りたいぐらい(←コラ!)。
完全に語彙力が無くなっていますが、本当にそれに尽きます。いやぁ、可愛すぎて困っちゃいます(笑)。
見た目も可愛い。動きも可愛い。仕草も可愛い。声も可愛い。話し方も可愛い。
可愛いのオンパレードですね。
「可愛い」しか言ってませんが、「可愛いは正義」だから良いのです。異論は認めません(笑)。
どの場面でもその可愛らしさに目を引かれましたが、特に彩海せらさんが演じる紀長谷雄とワチャワチャしているお姿は何とも愛らしかったです。
彩さんは様々な役をこれでもかという程こなしますが、やはり今作の様な役が1番魅力を発揮出来る気がします。
久しぶりにこの様な役を観る事が出来てとても良かったです。
藤原基経:風間柚乃
良房の甥且つ養嗣子で高子の兄の役。
自分の妹、高子を入内させる為に高子の従妹、多美子を毒殺しようとします。自分の血筋を栄ようとする為なら何でもやりかねない悪党です。
しかし、悪役ですが徹頭徹尾観ながら「憎い!」という役ではなく、道真の亡き兄、吉祥丸を慕うなどの一面もあり、複雑な心境が絡んでいます。
ですので、演じる上でとても難しい役だったと言えるでしょう。しかし、その複雑で一筋縄ではいかない役柄を見事に体現していました。
ソロで歌う歌も迫力と繊細さがあり、心に響きました。
月組の3番手として活躍している風間さん。更なる活躍が楽しみですね。
藤原高子:天紫珠李
良房の姪且つ養女で基経の妹の役。
従妹の多美子が入内する事に対して、高子は反対はしていません。しかし良房・基経親子の奸計に巻き込まれ、入内させられそうになります。
良房・基経親子の思い通りにはなりたくないと思いながらも、それに逆らえない辛さ・苦しみが繊細に表現出来ていました。
演技が良かっただけでなく、見た目もキリっとしていて華があり、気高い美しさが目を引きました。
ソロが少しあったのも良かったです。
藤原常行(ふじわらの ときつら):礼華はる
良相の息子で多美子の兄の役。
妹思いの役で、多美子が毒を飲みそうになった時は、庇って自らが犠牲になろうとする程です(一命は取り留めます)。
礼華さんは本当にどんどん洗練されてきており、格好良く華も出てきています。
見栄えだけではありません。今作では台詞も多く、その際の演技も上手かったです。
非常に目立ち存在感がこれでもかという程ありました。
これからの月組の男役の中で、かなり期待値が高いと言えるでしょう。
大師(だいし):結愛かれん
舞師の役。
登場した時から、その見目麗しいお姿に目を奪われ、優雅に舞うそのお姿はとても美しかったです。
欲を言うなら、台詞がもっとあれば嬉しかったですね。
今作で宝塚をご卒業される結愛さん。
最初はスター路線として注目されていた筈ですが、あまり役に恵まれず、いつの間にか路線から外れてしまった印象が正直拭えません。
宝塚をご卒業後は、どの様な人生を送られるかは分かりませんが、ご卒業後もお幸せな人生を歩む事を祈っております。
紀長谷雄(きの はせお):彩海せら
菅原道真の学友の役。
彩海さんも可愛らしかったです。年頃の少年という雰囲気が出ていました。
特に彩さんが演じる白梅と一緒にいて弾けているお姿は、とても印象的でしたね。
この役は彩海さんにピッタリの役だったと言えるでしょう。
大拙:大楠てら
昭姫のお店の用心棒の役。
台詞は一切無く、動きのみで表現していました。
ただ、何よりの特徴はその見た目です。
スキンヘッドで髭を生やしたそのお姿はとても迫力があり、別の意味で目を引きました(笑)。
パッと見は悪役ですが、悪役ではありません。
大楠さんは身長が180cmなので、その効果もあり、より威圧感や怖さなどが出ていたと言えます。
台詞が無く、他の役柄とは見た目も大いに異なっているので、逆に演技が難しかったと思いますが、その堂々とした姿は見事でした。
吉祥丸(きっしょうまる):瑠皇りあ
菅原是善の亡き息子で、道真の兄の役。
登場するのは回想のみで、藤原家の狩猟犬に噛まれて亡くなってしまいます。
正直、救いのない悲しい役と言えるでしょう。
しかし、台詞は多く、ソロもありました。
本物の少年の様な若々しさや初々しさを見事に表現しており、ソロの歌もしっかり歌っていたのが印象に残りました。
もっと洗練され華が出てくれば、かなり化ける様な気がします。
今後の作品で、どの様に変化するかが楽しみですね。
藤原多美子:花妃舞音
良相の娘で常行の異母妹の役。
あどけない可愛らしさが出ていました。
そんなに似ているという訳ではありませんが、声の雰囲気や出し方にやや舞空瞳さんを彷彿とさせた気がします。
あと、気になったのは髪型です。ちょっとヤマンバっぽく観えました。実際の藤原多美子は絶対にこの様な髪形をしてないとは思いますが、原作を忠実に表現したため、そうなったのでしょう。
ですが、逆にそれが特徴とも言えますね。
これからの月組の若手の娘役で期待される存在なので、今後の活躍が楽しみです。
月組は役者揃い
今作は灰原薬先生の漫画『応天の門』が原作です。私はこの原作を未読の状態で観劇しました。
個性的な役が沢山登場しますが、キャラ渋滞を起こす事は無かったです。キャラクターの配分は調度良かったと言えるでしょう。
今作のキャラクターを月組生は見事に演じ切っていました。
【お芝居の月組】は健在です!
月組生は本当に濃密なお芝居をします。月組の舞台を観ていると、本当に舞台上で起きている世界に行った気分になるのです。
勿論他の組のお芝居も良いです。ただ、お芝居に関してのレベルは月組がトップという事は間違いないでしょう。
お読み頂き有難うございました。ブログ村に参加しています。
にほんブログ村