皆様こんにちは、霜柱です。
田辺聖子さんの『あかん男』(角川文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
あかんのは男も女も同じ
本書には7の短篇が収録されています。
正直な事を書くと、どの話も登場人物があまりパッとしない感じです。イケてるヒーローやヒロインは全く登場しません。
しかし、その分等身大のリアルな人物像が描かれている気がしました。また、主要な登場人物は皆、どこかしら人間臭くて駄目な部分があります。「あ~あ」って感じです。
その点もある意味愛おしく感じるかもしれませんね。「こういう人いそうだよね」って。
本書のタイトルは「あかん男」で、同タイトルの短篇入っていますが「あかん女」も沢山登場します(笑)。
各短篇について
ここでは各短篇を読んで思った事を簡単に書きます。
あかん男
大変申し訳ないのですが全然面白くなかったです。
全く笑えないですし、結末も私にとっては胸糞だと感じました。読む際は注意した方が良いかもしれません。
主人公の貞三にも原因はあるかもしれませんが、いくら何でも周囲の人に恵まれなさすぎると言えるでしょう。
プレハブ・パーティ
意気込んだ男達の哀れさよ・・・。
「男っていうのは自分で思っている程、イケていないのよ」と釘を刺している様に感じました。
結局別々で寝ているんだから・・・。
ことづて
主人公の吉田サヨは実物ではなく、今後も自分自身の中で理想化した幻想に惚れたまま生きていくのかもしれません。
でも、それも人間的と言えるでしょう。
オチが良かったです。
へらへら
この作品が本書の中で1番面白かったです。
さて、主人公である奥さんと、隣人の旦那の関係は果たしてどうなるのでしょうか?
解説を書いた酒井順子さんは落語の様と評していますが、まさにその通り!
テンポやリズムが良くて、主人公と隣人の旦那のキャラも際立っていました。
是非とも長編で読んでみたい作品です。
さびしがりや
訳アリの人達ばかりです。しかし、その苦悩の中、何とかして生きようという思いが伝わってきました。
狸と霊感
占いに翻弄される人々が滑稽と言うか哀れと言うか・・・。
かげろうの女―右大将道綱の母―
主人公は藤原道綱母です。
夫が藤原兼家ですが、あっちこっちの女性にフラフラと・・・。
現代だったら、サッサと離婚しているでしょうけど、この時代はそうはいかない。
とは言っても、どっちもどっちだなと感じました。
簡単なまとめ
本書は1971年に単行本として発売し、1975年に文庫化されました。
「かげろうの女―右大将道綱の母―」は平安時代の話ですが、それ以外は1970年代を舞台にしているので、何となくその時代の雰囲気を感じます。
しかし、書かれている内容は現代にもそのまま通用すると言えるでしょう。
本書の事を「あたたかなユーモア」と謳っていますが、個人的にはそれはあまり感じられなかったですね。それよりも哀れさを感じました。
私見ですが、好き嫌いが分かれる作品かな、と思います。







