皆様こんにちは、霜柱です。

フランスの作家/映画監督、ジャン・コクトーJean Cocteau)の『怖るべき子供たち』(東郷青児・訳、角川文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。

感想

美しくも歪な姉弟

本書にはエリザベートとポールの姉弟が登場しますが、読んでいてこの2人って姉弟って感じがしませんでしたね。一概には言えないと思いますが、実際の姉弟がしそうな罵り合いや愛し合いではないと感じたのです。

愛し合いながら憎んでいるという感じですが、そこに一言では表せない複雑な思いがある様な気がしました。2人共大人びていると同時に、子供じみている様な人物像として描かれているのもそう感じさせる理由なのかもしれません。

この2人が何故、そうなってしまったのかは本書を読んでも書いてはありませんが、少なくとも癇癪持ちの父親と病弱な母親の存在が影響を与えている様に思います。

段々とエリザベートとポールの間に溝が・・・

最初、2人は子供ですが物語が進むに連れて少しずつ成長し、2人の見た目に差が出始めます。
エリザベートは年相応の見た目ですが、ポールは実年齢より上に見える。
これは単に見た目だけではなく、2人の内面に差が出てきた事の表れだと私は感じました。

また、ポールの友人であるジェラール、エリザベートが働いている婦人洋服店での仕事仲間のアガートが登場しますが、彼らの登場により、姉弟の仲は更に複雑で不思議なものになっていきます。

本当に何とも言えない奇妙な四角関係だな、とハラハラしました。

悲劇的な終わり方

終わりの方は生と死が入り混じった書き方になっていると言えます。どこか幻想的でこの世ではない様な雰囲気が漂っていた気が。

「ハッピーエンドではないだろうな」と読む前から思ってましたが、いざ結末を読むと形容しがたい気持ちになりました。う~む。

「本当に他に道は無かったのか?」「ジェラールがいたらどうなっていたんだろう?」「それ以前に、エリザベートの夫であるミカエルが事故死してなかったら?」などと考えてしまいました。

エリザベートがポールを自分から離そうとしなかった、というのが原因だったというのは間違いないでしょう。

読みにくさがあるかも

私の読解力が悪いからだと思いますが、何だか読みにくさを感じました。ずっとではありませんが表現や書き方も独特な感じです。
元々のコクトーの原文がそうなのか? それとも東郷青児が訳した時にそうなってしまったのか?

靴の中に入った小石で道を歩いている気分、奥歯に挟まったほうれん草が抜けない気持ちに似ているかもしれません。

途轍もない名言!

本書を読んで途轍もなく素晴らしい名言を見つけました。それを引用します。

富は一つの才能であり、貧もまた同じく才能である。金持ちになった貧乏人はぜいたくに飾りたてた貧乏を作りあげることであろう。

本当にその通りです。ぐうの音も出ません。

簡単なまとめ

怖るべき子供たち』(本によっては❝恐るべき~❞)はフランスを代表する小説でしょう。

読みにくさはありますが、他の訳者が書いたものもあるので、そちらを読むと印象が変わるかもしれません。

姉弟間の閉ざされた不思議な関係に「どういう事だろう?」と疑問に思いながらも、美しい世界観に惹かれるでしょう。

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ABOUT ME
霜柱
ハードロック/ヘヴィメタル(特にメロハー・メロスピ・メロパワ・シンフォニック)を聴いたり、宝塚(全組観劇派)を観たり、スイーツ(特にパフェ)を食べる事が好き。これらを主に気儘なペースで記事にしています。 Xやインスタも気儘に投稿中。