モーリス・メーテルリンク『青い鳥』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
ベルギーの作家、モーリス・メーテルリンク(Maurice Maeterlinck)の『青い鳥』(鈴木豊・訳、角川文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
予想よりも冒険譚だった
『青い鳥』は小さい頃に絵本で読んだだけで、原作を読むのは今回が初。
まず思ったのが「なかなかの冒険譚だな」という事です。
特に〈森の中〉の場面ではチルチルとミチルが命からがらの状態になるのでハラハラしました。「もし、犬や光が助けに来なかったらどうなっていたのか?」と思ってしまった程です。
絵本ではそこまで固唾を飲むような場面は無かった様な・・・。でも、絵本だともしかしたら途中の過程や内容を簡略化している可能性はありますね。
冒険小説ならぬ冒険戯曲としても充分に面白い作品でした。
印象に残った場面
既に書きましたが、〈森の中〉はなかなか緊張感がありました。森の木々達や動物達がチルチルとミチルを襲う場面は迫力があり、容赦が無いなと言えるでしょう。1番手に汗握る場面かもしれません。
まぁ、木々達が襲うのも当然と言えば当然なのかも。長い間ずっと人間達は自然破壊の筆頭者なのですから・・・。
チルチルとミチルは〈思い出の国〉の場面では既に亡くなった祖父母と出会います。
ユーモアがあってわちゃわちゃする姿にほっこりしました。しかし、同時に何故か涙を誘う様な場面だった気もします。
まだ人間界に生まれていない子供達が沢山登場する〈未来の王国〉も印象的でした。
色々な子供達が登場して賑やかです。誕生前の子供達は皆早く生まれたがっています。
でも、私は「本当に生まれたい?止めた方が良いかもよ・・・」と思ってしまいました。
『青い鳥』は1908年に発表されました。その時代も色々と大変な事はあったでしょう。でも比べる訳ではありませんが、2025年現在は当時よりも混沌としている気がします。
「人間として生まれるのは絶対に幸せだ」とは、正直断言しづらくなっている気が・・・。
まぁ、いつの時代、どの様な環境であっても、その人がどう考えるかで未来は良くもなるし悪くもなるのでしょう。
チルチルとミチルの精神的成長
チルチルとミチルは貧しい木こりの家庭です。なので、お金持ちの家庭を羨んでいる描写が最初の方に出てきます。
しかし、旅から帰って来た後は、家が幸せそうな良い雰囲気に変わっているそうです。
私は家の雰囲気は何も変わっていないのではないか、と感じました。変わったのは2人の考え方や気持ちではないでしょうか?
旅を経た事によって、2人は精神的に成長をして、幸せはどこか別の場所にあるのではなく身近にあるものだ、と気付けたのだと思います。
私見ですが、最後に精神的成長・変化を遂げると言う意味で『青い鳥』のチルチルとミチル、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』に登場するスクルージには共通点を感じました。内容は全然違いますけどね。
両者とも幸福や価値の本質、他者や身近なものの大切さなどに気付いたと言える気がします。
印象に残った登場人物
青い鳥を探しに行く時、2人の仲間になってくれるキャラがいます。その中で特に印象に残ったのは猫です。
2人に従っている様に見せて、隙あらば裏切りをしようとする・・・。ずる賢くて何を考えているのかよく分からないキャラでした。でも、猫が1番人間に近い性質を持っていると感じました。また、もし猫が登場しなかったら、この作品は単調になっていた可能性もあります。猫が良いスパイスになったと言えるでしょう。
犬は猪突猛進なところがありますが、最初から最後までチルチルとミチルの為に健気に頑張る姿が良かったです。
他に、火、水、砂糖、ミルクが擬人化して登場します。これらが登場したのはやはり人間の営みに深く関わっていて重要だからでしょう。
仙女ベリリュンヌの名言
本作の中でベリリュンヌの言葉にインパクトを感じました。
引用すると、
石なんてみんな同じものさ、石なんてみんな宝石なんだよ。ところが人間ときたら、そのうちのいくつかしか目に見えないのさ……
その辺に落ちている石と宝石って何が違うのでしょうね? 誰が「これは宝石だ。これは宝石じゃない」と区別しているんでしょうね?
簡単なまとめ
『青い鳥』は「幸せは近くにある」みたいなメッセージが特に強いと思いますが、それだけでなく、チルチルとミチルの精神的成長、沢山の独特で個性的なキャラなど見所もあります。
子供向けの作品の様に思えるかもしれませんが、そんな事は決してなく、むしろ大人になって読んだ方がより内容が深く刺さると思います。
世界中で読まれているのはやはりちゃんとした理由があるのですね。
興味がある方は是非とも読んでほしいです。
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