内田百閒『東京日記 他六篇』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
日本の小説家、内田百閒の短篇小説『東京日記 他六篇』(岩波文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
ポーンと突然やってくる奇妙奇天烈
全部で7話収録されていますが、どの話も文体が淡々としていて読みやすいです。
一見すると日常的な事を描いている様に見えます。しかし、そこに突然非日常的な得体の知れない奇妙奇天烈な出来事を投げてくるのです。特徴的なのはそういった非日常をあくまで日常の延長で描いている事だと言えるでしょう。
主人公がとんでもなく驚いている訳ではないですし、非日常の描写も細かく描いている訳でもないです。その点が大きなポイントだと感じました。
読者は多分、読んでいても「ギャーッ!」と驚く事は無いでしょう。そういった展開ではないので。しかし、何とも座りの悪い不気味さや奇怪さを感じると思います。
面白い作品とそうでない作品の差が大きいかも
私の主観ですが、本書は「面白かった! また読みたい!」と思う作品と、「もういいや…」と思う作品に分かれそうな気がします。どう分かれるのかは人によって違うと思いますが。
私は「青炎抄」と「東京日記」が特に面白く感じました。「そういう展開や結末を迎えるのか!?」と驚く部分が多かったのです。なので、これらを読んでいる時は「内田百閒の頭の中ってどうなっているんだ?」と思った程です。
でも、刺さらない作品は全然刺さりませんでした・・・。
「ここまで引っ張っておいて、この終わり方なの?」「で、その後は?」と言う風に腑に落ちないと言うか、尻切れトンボの様に感じたのです。
何となくですが、内田百閒って案外好き嫌いが分かれる作家かもしれません。
各短篇について
白猫
文体は綺麗でしたが、何だか色々と不気味に感じました。怖いというより不可解な感じです。主人公の隣の部屋にいた男女は何者だったのか? 白猫はただの猫だったのか? など謎がそのままになる作品でした。
合いの子弁当が美味そうに感じました(笑)。
長春香
1番不気味だったのは鍋の場面です。位牌を具材として入れています・・・。
それだけでなく、それに対して誰1人として不審に思わないのが「どうなっているんだ?」という気持ちになりました。位牌って食えるのか? いや、そんな筈は・・・。
「何を入れている!?」「そんな物入れるな!」と誰もツッコまない事に、ある意味恐怖を感じましたね。
ただ、全体としての物語の内容はよく覚えていません・・・。
柳撿挍の小閑
盲目の柳と言う琴の男性が主人公。
正直、この作品は起承転結があまりなく「起承承承」の展開に感じられました。特にこれと言った場面も無く、あんまり面白くはなかったというのが本音です・・・。
青炎抄
この話は5つの小話で構成されています。それぞれの話は繋がっていません。
でも面白いと感じました。
〈一 夕月〉は出だしからして何か不気味です。
〈二 桑屋敷〉の女先生は何故自ら命を・・・? また、穴から白い犬が5~6匹飛び出したというのはどういう事なのか?
〈三 二本榎〉に登場する男性は本当に殺人をしたのか? それとも出まかせを言ったのか?
〈四 花柘榴〉に登場する下女と絣(かすり)の着物を着た男性は、結局どういう関係だったのか?
〈五 橙色の灯火〉も現実っぽいけど異世界っぽい様な。
どの話も謎や疑問がそのままになっています。また、怖いのではなく不可解さや奇妙さが、薄くしかし重く残る感じでした。
東京日記
奇妙な事が色々描かれています。
牛よりでかい鰻、少し浮きあがっている車、消えた丸ビル、鼠みたいな歯の無い生き物、沢山の木菟、目玉を舐める芸妓、かなり小さいヴァイオリニスト、隣の電話ボックスにいた顔が大きい美女、などなど・・・。
とにかく日常の中に怪異がふと混ざるのです。淡々とした文体が逆にリアル感を強くしていると言えるでしょう。じわじわと来る不気味さがクセになりそうですね。
南山寿
本書の中では少し長めの話でしたが、正直「柳撿挍の小閑」と同じく展開が「起承承承」の様に思われました。
印象には残らなかったです・・・。
サラサーテの盤
この話も正直、印象にほぼ残りませんでした。結末もよく分からなかったですし・・・。
でも、不気味さは感じました。あと、サラサーテという設定には何か意味があったのでしょうか?
簡単なまとめ
怪異の短篇を集めた作品です。ただ、ジャンプスケア的なホラー作品ではありません。
どの物語も淡々と静かに進みます。ボーっと読んでいると見過ごしそうになりますが、突如非日常的な怪異がやってくるのです。
その部分が来ると「おっ、おおぉ!?」みたいな気持ちになりました(笑)。
ただ、確かに面白い作品はありましたが、そうではない作品はほぼ印象に残らなかったというのも本音です。
「幻想的なのか?」「耽美的なのか?」などと思うかもしれませんが、それらともまた違います。
普通のホラーとは明らかに違うとは言えるでしょう。
優しい文体で読みやすいですが、好き嫌いが分かれる作風な気がします。
ですが、一風変わった怪異的な作品を読みたいという人には良いかもしれません。
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