テオフィル・ゴーチエ『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
フランスの作家、テオフィル・ゴーチエ(ゴーティエ/Théophile Gautier)の短篇小説集『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』(田辺貞之助・訳、岩波文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
美しくて幻想的な怪異
本書には短編が5編収録されています。どの物語も美しくて幻想的です。悪魔、吸血鬼、霊などは出てきますが、そんなにホラーっぽくは感じません。勿論スプラッター的な展開は無しです。
本書に登場する異形の登場人物は読者を怖がらせるというより、主人公の感情や言動の変化をより際立たせる為の、名脇役の様な存在と言えるでしょう。
ですので、劇的な期待している人にとっては、本書が物足りなく感じるかもしれません。正直に書くと、私も最初は「思った程劇的な展開じゃないな」と思いました。
でも、読み直してみると、むしろそれが良いのかもと感じました。
これがもし、怒涛の展開だったらその時は面白くても、後にはそんなに残らないのではないでしょうか?
1回読んでガツンと来る作品ではないかもしれませんが、その美しい怪異は静かに身体の奥底に染み渡った気がします。
各短篇について
死霊の恋
ロミュオーという老人が主人公。若い頃の恋の話をしていますが・・・。
読み終えて思ったのはクラリモンドという女性が、一体どのくらい美しかったのか?という事です。そこまでして忘れられない程美しかったという事なのでしょう。現実にいたら見てみたい気もします。
セラピオン師のおかげでロミュオーは助かったと言えるでしょう。
ポンペイ夜話
現実には殆ど魅力を感じないオクタヴィヤンという若者が主人公。
19世紀からティトゥス帝の時代に行ってしまいますが・・・。
アッリア・マルチェッラの最期が灰になる結末は驚きました。
まあまあ面白かった短編です。
二人一役
大俳優を夢見ているハインリッヒという若者が主人公。
悪魔が登場しますが、主人公に災いをもたらす訳ではありません。いや、主人公の代わりに舞台に立ったから、その点では主人公にとっては災いだったのかな?
何となくですが、この悪魔は主人公の虚栄心を律する為に具現化されたのではないか? と思いました。
コーヒー沸かし
ざっくり言うと物が動き回る話です。
主人公であるテオドールが出会ったアンジェラは実は2年前に・・・。
まあまあな話でした。
オニュフリユス
これもなかなか不思議な話でしたね。
主人公である画家のオニュフリユスはある日、自分が死んで、作品を友人に剽窃された夢を見ます。現実っぽくもあり幻想的でもありました。
気になったのはこの作品に登場する気取り屋です。一体何者だったのでしょうか? 人間ではない様な? 悪魔?
ペーター・シュレミールの影の話が出て来た時は「おっ!」と思いました。まさかシャミッソーの『影をなくした男』の主人公の名前が出てくるとは予想しなかったので。
面白い部分もありましたが、冗長さも感じたのが正直な所・・・。
簡単なまとめ
怪異の話ですが、背筋が凍る様なホラーチックな展開がある訳ではありません。
この世ならざる者は登場しますが、突飛な存在と言うより、人間の持つ弱さや迷い、邪心などを具現化した様な存在に思えました。また、そういったキャラが良い味を出して、主人公を際立たせているのです。出すぎず引っ込み過ぎずという良い塩梅だと言えるでしょう。
派手な展開は無いので人によっては物足りなく感じるでしょう。正直、そういう風に感じる話もありました。でも、そういった作品でも静かな怪異にある美しさに惹かれた様な気がします。
耽美系の怪異が好きだという人は、是非とも読んでほしいですね。
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