日本のメロディック・スピード・メタル・バンドが2014年にリリースした4thアルバム。
全12曲収録。
バンドメンバー
- Leo Figaro:Vocals,Growl
- Takao:Guitars,Growl,Chorus
- Mizuki:Bass,Chorus
- Ochoco:Drums,Chorus
- 葵:Keyboards,Chorus
[ゲストメンバー]
- Enrik Garcia(DARK MOOR):Guitar solo(Track 4)
各楽曲ごとの解説と感想
①Fanfare-Fade Into Darkness
1分強のインスト。荘重で勇壮なストリングス風のキーボードのサウンドである。このインストから既にこの『CHRONOSTRINGS』に対する期待が高まると言っても過言ではない。
因みに②のサビのメロディが引用されている。
②Sandglass
出だしからクサメロ全開のキーボードリフとギターソロを聴く事が出来る。所々に琴線を揺さぶるメロディが盛り込まれており、聴き所も沢山ある曲である。淡く流れているキーボードに、泣きの要素もあるギターが重なり、そこにLeo Figaroの歌が入る。それにより、この曲が強固になっている。勿論、リズム隊も活躍している。
この曲はメロスピ好きなら、もう堪らない曲という事は間違いないであろう。
③Saving All My Love For You
サビで始まる疾走曲。最初から最後まで殆ど疾走している気持ちの良い曲である。その疾走さの中にも、ちゃんと琴線を揺さぶる覚えやすいメロディがしっかりと入っている。特にBメロやサビに演奏されているキーボードの音色が、より曲に輝きを与えていると思う。
Leo Figaroも力強く歌っており、ライブでは間違いなく盛り上がる曲であろう。
名曲である。
④SAKURA Tears Drops
引き続き疾走曲である。この曲ではギターリフやギターソロが前面に力強く出ていて、ギターが曲を引っ張っていっている感じだ。
この曲にはスペインのメタル・バンドDARK MOORのギタリスト、Enrik Garciaが2:32~3:02の間でギターソロを弾いている。繊細で味わい深い音色がMinstreliXのサウンドと合っている。
2013年11月にDARK MOORが来日した際に、MinstreliXも共にライブを行っている。
メロディは勿論良いが、どちらかというとパワー重視の曲だと思う。
⑤叡智の華
出だしのフレーズはイタリアのヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ(1782~1840)が作曲した「24の奇想曲第24番」を引用している。
(ニコロ・パガニーニは「ヴァイオリンの鬼才」とも称されている。その理由は、かつてそこまでヴァイオリンを弾ききった事が無いと思われる程の超絶技巧者だかれである。)
この曲も疾走曲である。この曲にも哀愁のあるメロディやサウンドを聴く事が出来る。また、2番のAメロは1番のAメロとはメロディが少し異なっており、Bメロは1番よりもスローに演奏しているなど展開にも凝っている事が感じられる。
ギターソロとキーボードソロのユニゾンもあり、緩急もあるので聴き所が多い曲だと思う。
⑥Monochrome Season
ミドル・テンポのメロデス風味のある曲。冒頭とAメロでは重々しいギターのリフが演奏されている。また、Aメロではグロウルもしている。
ギターはソロが無く、リフに徹しており、リズム重視の曲の為、キラキラ感は少ない。その為、少し地味に感じる曲かもしれない。しかし趣があるので、別の面のMinstreliXが聴ける曲だろう。
⑦陽炎
風鈴の音で始まる曲。タイトルの通り、暑い夏に合いそうな爽やかな曲である。曲の雰囲気としてはHR/HMよりもJ-ROCKに近い感じがする。ギターソロはあるが、短くてピロピロしていない。それもあって、メロスピの雰囲気は皆無である。
メロスピ好きの人にとっては物足りなく感じるかもしれない。ただ、ノリが良く、メロディは覚えやすい為、ライブ映えする曲かもしれない。
⑧Runaway Faraway
勇ましく力強い曲である。ギターはメロディアスでありながらも、リフはメタリックである。Leo Figaroは低い声で朗々と歌う箇所も多い。低い声も魅力的であり、ただのハイトーン・ボーカリストではない事が確認出来る。
展開が多い曲だが、ミュージカルで使われてもおかしくない程の、聴者を引き付ける華のある曲である。その為、サビの部分はライブで合唱するのに向いていると思う。
⑨Life Is Just A Miracle
歌謡曲風のミドル・テンポの曲。リズミカルでノリの良いヴァイオリンの音色が入っているのがこの曲の特徴である。
2:22~4:20の間奏はヴァイオリンソロ・ギターソロ・キーボードソロなどを、それぞれ堪能出来る。
歌メロの展開はシンプルだが、その分覚えやすく、気持ちの良いメロディとなっている。クサメロの要素満載で、私にとってはクセになる曲である。
⑩Future Retrospective
疾走感のあるメロデスの曲。出だしは重々しいギターのリフと激しいドラムの演奏だ。AメロとBメロはほぼグロウルで歌っており、結構攻めに入っている感じを受ける。サビになると、やや物悲しくありながらも優しい歌声を聴く事が出来る。
また、ギターソロやキーボードの音色も物悲しいサウンドである。
この曲は激しさと物悲しさが共存している曲の様に思えた。
⑪End Of All Days
雷の音から始まるミドル・テンポの曲。Leo Figaroは全体的に、低い声で不気味な雰囲気を漂わせながら歌っている。キーボードも不穏な音作りをしている。
展開が多く、複雑なメロディラインもある。曲の雰囲気はダークだが、メロディアスの部分もある。
ただ、この『CHRONOSTRINGS』の中では、好き嫌いが1番分かれる曲かもしれない。
⑫Heart Hope Dream Love
ギターのタッピングで始まる疾走曲。メロスピ好きな人なら、その時点で「キター」と思う曲だろう。
叙情的なメロディと激しくも彩りのあるギター、曲をより華やかに美しく装飾しているキーボードを聴く事が出来る。
歌メロもノリが良く気持ちの良い曲である。クサメロさは申し分無い。
全体的な感想
名盤である!!
この『CHRONOSTRINGS』には捨て曲が無く、全ての曲が輝いていて素晴らしいのである。⑦⑪の様な曲は好き嫌いが分かれるかもしれないが、それは単に毛色が違う様に感じるだけであって、パッとしない訳ではない。
全体的にメロスピの曲が多い中でも、その様な曲を作る事が出来、メロディもしっかり盛り込まれているのは、並大抵の技術や能力では作れないだろう。
「それなりに良い」「普通に良い」作品は沢山あっても、「他作品を凌駕する程の素晴らしい」作品は実はなかなか無いと思う。
HR/HMファンであっても頭が古い人は未だに「1980年代が1番HR/HMが輝いていた」「日本のバンドは欧米に劣っている」などと言う。それは非常に狭く偏りがあり、勿体無い考え方である。2010年代の日本で、この『CHRONOSTRINGS』という作品が出た事を日本人は誇りに思うべきである。
興味を持った人は勿論だが、メロスピが苦手だという人、上記の様な考え方をしている人にこそ聴いてほしい。聴いた上で、どうしても受け入れられないなら仕方ないが、どうか聴かず嫌いはしないでほしい。
哀愁があり、琴線をこれでもかという程揺さぶるメロディが詰め込まれている作品である。
逆にこの作品を聴いて何も感じなかったら、メロスピとは無縁で生きた方が良いかもしれない。
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