オーストリアのメロディック・メタル・バンド、EDENBRIDGEが2001年にリリースした2ndアルバム。
全11曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。
バンドメンバー
- Sabine Edelsbacher:Vocals,Backing Vocals
- Lanvall:Guitars,Keyboards
- Andreas Eibler:Guitars
- Kurt Bednarsky:Bass
- Roland Navratil:Drums
[ゲストメンバー]
- Dennis Ward:Mixing
前作『SUNRISE IN EDEN』の時は4人体制だったが、この作品からAndreas Eiblerというギタリストが加入し、5人体制になった。
また、前作から引き続き、Dennis Wardが今作をミキシングしている。
各楽曲ごとの解説と感想
①Ascending
1分程のインスト。最初は静かに始まり、その後壮大なオーケストレーションへと展開していく曲。
②Starlight Reverie
1曲目から繋がった状態で始まる疾走感のある曲。メタリックなギターリフが、全編に渡って響くストレートな曲だ。キーボードよりもギターが前面に出ている。
③The Palace
出だしは厳かだが、全体的にはリズミカルな曲だ。
7分程の長さだが、決して冗長に感じない曲。何故なら覚えやすいメロディは勿論、リズムにも乗りやすいからだ。曲の展開もシンプルの様でいて凝っている。
④A Moment Of Time
アコースティック・ギターの音色で始まるバラード曲。Sabineの繊細で優しい歌声に心洗われる感じだ。
2番のサビからバンド演奏になる。曲としてはシンプルでコンパクトに纏まっているので、肩肘張らないで聴ける。夜の湖の畔で聴くと、よりロマンティックに感じるかもしれない。
⑤Fly On A Rainbow Dream
サビ始まりのメロディアス・ハードの雰囲気を感じる曲。
3:57から始まる大サビから雰囲気を盛り上げるが、すぐに終わってしまう為、正直中途半端な感じがしないでもない。もう少し演奏してくれれば、より印象に残るだろう。
⑥Color My Sky
出だしはやや疾走感があるシンフォニック風味のある曲。歌が始まると、ややリズミカルになる。
イントロ・アウトロ・間奏に入るキーボードのサウンドが、曲にアクセントを付ける役割を果たしている。
⑦The Whisper Of The Ages
日本盤ボーナストラック。シタールの演奏で始まり、他曲と比べてエキゾチックな雰囲気がある。また、Sabineの細やかな声質が曲と相俟っており、聴く者を引き付ける力を持っている曲である。特にサビのメロディと4:29から始まるギターソロは琴線を揺さぶる。
1st『SUNRISE IN EDEN』に収録されている同名曲と通じるものがある。
お薦め曲である。
⑧Into The Light
東洋的な雰囲気で始まる、シンフォニック・メタルのテイストが強い曲。流れる様に彩る美しいキーボードの音が幻想感を高める。ただ、歌メロはあまり印象に残らない。それより、楽器の音に身を任せて聴いた方が、この曲の世界を堪能出来るかもしれない。
⑨Suspiria
部分部分で雰囲気が変わり、展開が多い曲。
Aメロはリズミカルでノリが良いが、Bメロに入ると叙情味が増す。サビに入ると、ヘビーなギターリフが入る。ヘビーと言っても、Sabineのボーカルとコーラスが相乗効果の役割を果たしており、互いの良さを活かしあっていると思った。
ただ、2番にはBメロが無い。サビよりもBメロの方がメロディの良さや美しさは上なので、入っていないのは勿体ない気がした。それでも2:47からのギターソロが始まる間奏は、浮遊感を気持ち良く感じさせる所がある。
また、曲の終わりにはCメロの様なものがあるが、Sabineの繊細な歌声を活かしている作りになっている。
⑩Winter Winds
涼やかなキーボードとアコースティック・ギターで始まるバラード曲。
Sabineの声質を活かしている。ただ、美しい曲だが正直リフもメロディもあまり印象に残らない。
因みにAメロは爽やかだが、Bメロの終わりからサビにかけては、憂いのある雰囲気になる。
⑪Arcana
名曲である!!
静かに始まるキーボードの音からの、甘い音色のギターへの繋がりは、メロディック・メタルが好きな人は堪らないと思う。全体的に幻想的な世界へ誘い込む為の、キーボードの音が装飾されている。
ギターはあえて必要以上に前面に出ず、しかし、この優美な世界を成立させる為に必要な役割を果たしている。そこにSabineの嫋やかなボーカルが入る事によって、より美しいメロディラインが強調され、聴く者を引き付ける。
10分近くかかる曲だが、飽きる事は無く、すぐに終わってしまう印象を受けた。その理由は多分、メロディが良いに尽きると思う。
また、曲の世界観を保つために、必要以上の技巧を取り入れていないからこそ、成立するのかもしれない。
後半は違うメロディになるが、それも自然に聴ける。フェイドアウトで曲は終わるが「もっと聴きたい」という気持ちにさせる。
今作『ARCANA』の中で1番のお薦め曲だ。
全体的な感想
どの曲も清爽感あるキーボードが散りばめられている。そこにSabineの優美な歌声が重なった時、幻想感溢れる神秘的な世界が開かれる。その為、聴いていてとても心地の良い作品だ。前作『SUNRISE IN EDEN』程、浮遊感のある音作りにはなってはいないが、聴く者を引き込むには充分である。また、前作よりもバンドとしての纏まりのある音になっている。
特にバッキングのギターは前作よりも引き締まった音になっている。Sabineも上手くなり、表現力が上がっている。
ただ、前作と同様、他のメタル・バンドと比べると大人しい感じがして、物足りないと感じる人もいるだろう。それでも、他のメロディック・メタル・バンドやシンフォニック・メタル・バンドで、ここまで繊細で美麗な音を作る事が出来るバンドはいそうでいないと思う。
例えば、NIGHTWISHやWITHIN TEMPTATION、EPICAなどと比べても、EDENBRIDGE程の優美さは無いと私は思う。
優美な音や世界観が嫌いでないなら、是非この『ARCANA』を聴いて、ゆったりとこの世界に溶け込んでみてはいかがだろうか?
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