スペインのメロディック・スピード・メタル・バンドが1999年にリリースした1stアルバム。
全10曲収録。
発売当時は日本盤は見送られたが、2005年に当時のデモ音源(全7曲)を収録したボーナスCDを付けて、スペシャル・エディションとして日本盤が発売した。
バンドメンバー
- Elisa C.Martin:Vocals
- Enrik Garcia:Guitars
- Albert Maroto:Guitars
- Anan Kaddouri:Bass
- Jorge Sáez:Drums
- Roberto P.Camus:Keyboards
各楽曲ごとの解説と感想
DISC 1
①Shadowland
30秒程のインスト。キーボードのみの演奏。
出だしは静謐だが、すぐに幻想的なフレーズが入り、そのまま2曲目へと繋がる。
②Walhalla
1曲目から繋がった状態で始まる、メロディアスな疾走曲。7分程の長さ。
琴線を揺さぶるギターソロと力強いElisaの歌声、そして曲全体に彩られている、あまり輪郭のはっきりしない(←褒めてます)憂いのあるキーボード。これらはメロスピ好きなら気に入るであろう。
ノリが良く歌メロも印象に残りやすいので、ライブでは盛り上がる良い曲だと思う。
5:25頃の所でバンド演奏は終わり、アコースティックギターとキーボードと男性コーラスのみの演奏に変わるが、正直この部分は蛇足だと感じた。
③Dragon Into The Fire
ギターソロから始まる疾走曲。ギターソロは出だしの他、Bメロ・2番のAメロ、勿論間奏でも演奏されている。ただ演奏されるメロディはほぼ同じである。
また、2:56~3:49のギターソロは音量が小さく感じたので、もう少し大きくしても良かったかもしれない。因みにギターソロの音はぼやけた音になっている。
最初聴いた時は「何故こんなにぼやけているんだろう?」と思ったが、Elisaのボーカルやコーラスとは対比的で面白いと感じる様になった。
④Calling On The Wind
切ないピアノと優しく女性らしいElisaの声(実際女性ではあるが)で始まる曲。バラード曲かと思いきや、Elisaのシャウトが入って疾走曲へと展開する。
基本的に、楽器陣はリフやリズムを刻んでいる。その為、Elisaの男勝りな歌声に重点を置いている気がした。
非常にノリが良い曲である。この曲ではAメロで、ハープがポロンポロンと演奏している音が印象に残った。
⑤Magic Land
硬く乾いた鋭いギターリフで始まる曲。ただ全体的にはシンフォニックで浮遊感のあるキーボードが施されており、ピロピロしたギターソロが入ってる曲である。
憂いのメロディが入っているので、それが好きな人は気に入るであろう。
⑥Flying
ドラムの演奏から始まる、展開が多い曲。
ただ展開が多い割には印象にあまり残らない。メロディの力が他曲よりも弱かったのが、主な原因だと思う。それゆえ、曲の世界観に入り込めなかった。
唯一印象に残ったのは、他曲と比べて、ドラムの演奏が目立つ音作りをしていた所である。
⑦Time Is The Avenger
全体的に重々しく暗い雰囲気の曲。暗い音が多く使われている為、不気味さを感じる。ギターリフも他曲と比べると、ヘビーであり、メロディアスの要素は薄い。ただ、5:15~5:45のギターソロは琴線を揺さぶる、メロディアスな音になっている。
Elisaは力強く歌っている箇所もあるが、低い声で絞り出している様に歌っている所も多い。
やや異質な曲かもしれない。
⑧Born In The Dark
やや乾いたギターリフが特徴の疾走曲。
この曲は正直、中途半端な感じがした。歌メロやノリ、それぞれの楽器演奏陣のリフなど、どれをとってもイマイチで印象に残らない。
⑨The King’s Sword
荘重でシンフォニックなキーボードから始まるバラード曲。
Elisaはこの曲の大部分を、優しく繊細な声で歌っている。少し線が細く感じるが、力強いだけではないElisaの別の一面を感じた。
また、この曲ではアコースティックギターが多用されている。アコースティックギターでも憂いの表現を出来ているのが分かるだろう。欲を言えば、もう少しシンフォニックさを出したら、よりドラマチックになったのではないかと思う。
⑩The Call
アコースティックギターとミステリアスなキーボードで始まるミドル・テンポの曲。神秘的なキーボードの音色が、全体的に演奏されており、シンフォニック・メタルに近い曲である。
この曲が他曲と違う所は、デスボイス(Enrik Garciaの声?)が入っている所であろう。デスボイスといっても、力強い声ではなく弱弱しく、しゃがれた不気味な声である。
しかし、印象に残るメロディは少なく、やや盛り上がりに欠け、冗長に感じてしまった。
DISC 2
①God Save The King(Intro)~Walhalla(Demo)
①God Save The King(Intro)は未発表曲である。甘いギターの音色と行進曲風のドラムが特徴的な曲だ。本編の「Shadowland」とは違い、神秘的な感じはしない。
0:43から「Walhalla(Demo)」になる。基本的には本編に収録されているバージョンとあまり変わらない。
違いといえば、出だしが激しくヘビーなギターリフである事と、キーボードが結構リフを弾いている所だ。
他には、最後のアコースティックの演奏になる部分は、本編では男性コーラスだが、このDemoバージョンはElisaだけで歌っている事である。
②Flying(Demo)
本編のバージョンとほぼ変わらない。
私が気付いたので、違う所というと、0:57~1:11と5:06~5:18にギターの変なギュインという音が繰り返し入っていた所である。
③For You
未発表曲。ヴァイオリン風の音色で始まるミドル・テンポの曲。雰囲気としてはダークである。サビの部分ではElisaが低い声で不気味に歌っている。それ以外の所では力強く歌っており、高い声で叫んでいる箇所も多い。
4:40~5:45はアップ・テンポになる。
しかし、印象に残る程のメロディやリフが無く、冗長な感じがしたので、曲としては正直弱い。
④Infinite Dreams
本編に収録されている「Calling On The Wind」のDemoバージョン。
この曲が本編と大きく違う所は、キーボードの演奏が減っている所である。例えば、本編ではAメロにポロンポロンという音色が入っているが、それが無い。
他にもキーボードの音色が無い所があるが、その分、他楽器の激しい演奏とElisaの力強い声が目立っている。その為、神秘的な雰囲気は減退した。
このDemoバージョンの方が、音が粗い分生々しく聴こえる。
⑤Dreams Of Madness
未発表曲のインスト。
出だしは魅惑的で妖しく、ゆったりとした雰囲気の演奏である。
1:33~3:32は疾走する速さに変わり、その後も何回か転調をする。特に5:09~5:21の間奏はRAINBOWの「Gates Of Babylon」を思い出させる展開だ。
この曲は正式に録音される事は無かったが、是非しっかりとした音質で録音し、構成もより整えていたら、名曲として残っていたのではないかと思う。
⑥Time Is The Avenger(Demo)
本編のバージョンとほぼ変わらない。ただ、このDemoバージョンの方が、Elisaがより力強く歌っている気がする(喉をあえて締め付けている感じ)。
⑦The King’s Sword(Demo)
本編と違う所は多々ある。
1番の違いは、本編では荘重でシンフォニックなキーボードから始まるが、このDemoバージョンでは、それが無くアコースティックギターから始まっている所である。
他には、本編で男性コーラスは主にサビとCメロの所で入ってくるが、Demoバージョンではサビには入っておらず、Cメロにも殆ど入っていない。逆に本編では入ってないAメロ・BメロにDemoバージョンでは入っていたりする。
出だしやコーラスの入っている箇所が違うだけで、大分曲の印象が変わる事が確認出来ると思う。
全体的な感想
まず全体的に音質が良くない。音自体もこもった様な音になっている。また、楽器のミックスのバランスが取れていない時があった。
演奏に関しては、これも粗い所があり、曲のアレンジも単調だったりしていたので、冗長に感じてしまう時があった。ただ、それでも曲によっては、メロスピ風の速いギターソロがあったり、神秘的なキーボードや疾走するドラムを聴く事は出来る。
では、DARK MOORを初めて聴く人にお薦め出来るかというと、正直「NO」である。今作『SHADOWLAND』はDARK MOORの他のアルバム(特に2nd『THE HALL OF THE OLDEN DREAMS』、3rd『THE GATES OF OBLIVION』)を聴いてからの方が良いと思う。
先に書いた様に音質や演奏に課題があるので、厳しい人なら「退屈だ」と言ってしまうかもしれない。その為、今作は「原石時代」の様な感じで聴けば、抵抗感が無く楽しめるのではないかと思う。
お読み頂き有難うございました。ブログ村に参加しています。
にほんブログ村