皆様こんにちは、霜柱です。
私はこの間、月組公演『Eternal Voice 消え残る想い』を観劇し、その感想を書きました。
今回はその作品の役ごとの感想を書いていこうと思います。
役ごとの感想
ユリウス:月城かなと
主人公。考古学者でアンティーク・ハンター、ヴィクターの友人の役。
最初に登場した時の歌声がとても伸びやかで、すぐさま引き込まれました。歌が良かっただけでなく、演技もとても上手かったです。
物に宿る過去の記憶を感じる事が出来るという、少し特殊な役柄でしたが自然体に演じていながら、あたかも現実の様に見せる、その演技力にはやはり舌を巻きます。
それだけでなく、ちょっとした表情の機微も見事に表現していたと思いました。
非常に安定感のある上手さで、舞台をしっかりと纏めていたと言えるでしょう。
今作で月城さんは宝塚をご卒業されます。
5月には同期の柚香光さんがご卒業したばかりで、今度は月城さんかと思うと非常に寂しいですし、何だか1つの時代が終わってしまいそうな気持ちになりますね。
ご卒業後もどうかお幸せな人生を歩む事を祈っております。
アデーラ:海乃美月
超常現象研究所の被験者の役。
今作では2回ほど失神する場面が出ます。また、ユリウスと同じ能力を持つという特殊な役でもあるので、アデーラという人物を築き上げて演じるのはとても大変だったと思います。
あまりトップ娘役らしい役ではない気がしますが、持ち前の実力でこの難役を演じ切っていました。海乃さんだからこそ出来たと言えるでしょう。
海乃さんも今作で宝塚をご卒業します。
生粋の月娘として活躍してきたので、非常に寂しいですが、ご卒業後もこれまで以上に多幸に溢れた日々を歩める事を祈っております。
ヴィクター:鳳月杏
ユリウスの友人で、超常現象研究家の役。
非常に伸びやかな歌声と自然体の演技に魅かれました。特に鳳月さんの歌って個人的に好きなんですよね。
超常現象を研究する役という事で、ちょっと変わった人物なのかと思いきや、真面目に真摯に取り組んでいる役です。
夢奈さん演じるザンダーに超常現象の事を馬鹿にされて怒りますが、その姿はちょっと可愛らしく観えました。
月組の次期トップスターに就任しますが、鳳月さんはどの様な役もこなします。
トップスターになってからの作品も楽しみです。
ゼイン:高翔みず希
労働者階級出身の自由党議員の役。
ゼインは悪役ですが表立って事を運ぶのではなく、後ろで糸を引いている役目を務めています。
高翔さんの演技は落ち着きがあって、いぶし銀の様な物を感じます。
ただ、今作では狼狽えたりムキになったりする場面がありますが、その辺りの演技は小物感が出ていたので(←褒めてます)、何故か親近感を覚えてしまいました。
ちょっと情けない雰囲気も出ていたのが印象的です。
因みにこの作品は高翔さんにとって約27年ぶりの月組出演作です。久しぶりに月組に出演した気持ちはどうだったのかちょっと気になりますね。
ジェームズ:凛城きら
ユリウスの叔父、骨董店のオーナーの役。
甥のユリウスに理解を示している優しい叔父を自然体に演じていました。それだけでなく練れた雰囲気が漂っており、観ていて温かみが伝わってきました。
非常に安定した演技で舞台をしっかりと支えており、専科生としての貫禄もどんどん付いてきているのも良かったです。
今作は凛城さんにとって約3年ぶりの本公演です。別箱公演でも活躍してますが、本公演にももっと出てほしいですね。
凛城さんと月城さんは雪組で一緒だったので、またこうしてお2人が共演している事に感慨深い気持ちにもなりました。
ヴィクトリア女王:梨花ますみ
イギリスの女王の役。
出番は最後の方のみ。しかし、その限られた出番の中でも、イギリスの女王としての風格をしっかりと出しており、台詞にも威厳が込められていたのは流石と言えるでしょう。
安定感のある演技と重厚感のある雰囲気も伝わってきました。
オーロラ:白雪さち花
病気の子供を持つ母親、サミュエルの妻の役。
出番は最初の方のみ。声が大きいという設定の様でしたが、それを発揮する事はありませんでした。ちょっと聴いてみたかった気もする(笑)。
正直、物語上この役が必要かどうか微妙な気もしましたが、案外印象に残りました。ただ、あまりにも出番が少なすぎます。もう少し出番を与える事は出来なかったのでしょうか?
キーラン:春海ゆう
カトリック教会の主教司祭の役。
物語の半ば辺りで登場します。
非常に腰が低く丁寧な口調で話しており人が良さそうです。しかし、企んでいるのは国教改宗という事。
今作には悪役が登場しますが、個人的に1番の悪役はキーランな気がします。自分の望みを叶える為ならどんな事も厭わないという負のオーラを感じました。
難しい役だったと思いますが、この役の怖さをしっかりと体現していたと思います。
ザンダー:夢奈瑠音
特定秘密局の局長の役。
ちょっと頭が固く短絡的に物事を決めてしまう性格ではありますが、コミカルさもあったのがポイントです。
ヴィクターと会話をする場面で、時折丁々発止な感じになります。それが客席から笑いを誘っており、特に印象に残りました。
セバスチャン:佳城葵
バチカンの守護戦士の役。
守護戦士というのがよく分かりませんが(笑)、それだけ聞くと正義の味方の様な気がします。しかしそうではなく悪役です。
もう見た目から「あっ、只者ではないな」という危ないオーラが出ています。ゼインやエゼキエル・マクシマス姉弟等と一緒に国教改宗をしようとしますが失敗して捕まります。
基本的に落ち着いていて、低めの声で話しているので、堂々とした雰囲気が出ていました。
ただ、実を言うと登場した時、佳城さんだとは最初分からなかったのです。他の役とは全然違っており、完全にダークサイド寄りになっていたからかもしれません。
「こういう一面もあるのか」と改めて驚きました。
物語を進める上で、非常に重要な役だったと言えます。
アンナ・クリフトン:麗泉里
メアリー・スチュアートの侍女の役。
登場するのは回想の場面のみ。メアリーと一緒に苦楽を共にして歩んできた事が、限られた出番の中でもヒシヒシと伝わってきました。
それだけでなく、ソロの歌声も朗々としていて心に響きましたね。
今作で麗さんは宝塚をご卒業されます。
生粋の月娘として活躍しました。しかし、もっと注目されても良かった娘役だと思います。個人的にはあまり良い役に恵まれていなかった気がするので・・・。
ご卒業後も、幸多き人生になる事を祈っております。
サミュエル:英かおと
病気の子供を持つ父親、オーロラの夫の役。
出番はオーロラと同じく最初の方のみ。
子供の病気の治療代を手に入れる為に、ユリウスにメアリー・スチュアートの首飾りを売ります。
切羽詰まっている姿を演じており、苦しい状況というのが観ていて伝わりました。また、プロローグにおいて非常に重要な役だったとも言えます。
エゼキエル:彩みちる
霊媒師でマクシマスの姉の役。
今作の登場人物の中で1番印象に残りインパクト大でした!
霊媒師というと私の勝手な思い込みですが静かそうなイメージがあります。
しかし、今作でこの役を演じた彩さんはそれを見事に破壊してくれました(笑)。
もうとにかく一言一言をいちいち大きい声で話していて大仰なのです。それも登場している間はほぼずっとそんな感じなので、印象に残らない訳がない。とにかく賑やか!
後半の方では台詞を噛んでおり、その場面は笑いを誘っていました。ただ、これはアドリブではなく台本上そう書かれている気がします(勘ですが)。
一癖や二癖どころではありません。十癖や二十癖もある人物です。彩海せらさん演じるマクシマスはよくこんな姉と一緒にいられるなと思いますが、多分したい事や考えが一致しているから一緒にいられるのでしょう。それとも単に対応の仕方が分かっているだけか・・・。
ハッキリ言うと、頭のおかしい性格でもあります(霊媒の力はちゃんとある様ですが)。
客席から観る分にはかなり個性的な役なので面白く感じますが、こんなのがもし身近にいたらたまったもんじゃありません。絶対に関わりたくないですね。もし令和の現在にこんなのがいたら間違いなくメディアに注目されるでしょう。そしてネット上のオモチャとして扱われるでしょう(笑)。
先に書きましたが、ずっと大きい声で喋っている役です。ですから公演が終わった時の疲労感は途轍もない程ある気がします。私だったら1回演じただけでぐったりしてダウンするでしょう。
しかし彩さんは休演する事無く、この難役を演じています。改めて彩さんのバイタリティーは凄いと思いました。
下級生の頃から演技がとても上手い彩さんですが、今作はまた新たな一面を魅せてくれました。一体彩さんにはどのくらいの演技の引き出しがあるのでしょうか? 「彩さんに演じられない役は無いのでは?」と思っていまいます。
本当に見事な怪演でした。もし今作が映画だったら間違いなく助演女優賞を受賞出来るでしょう。それ程凄かったのです。
ダシエル:風間柚乃
特定秘密局の局員の役。
ダシエルはどちらかというと真面目で、特段面白みがあった役ではありません。しかし風間さんの安定した演技や歌で、観る者を見事に物語の中へ引き込んでいってくれたと言って良いでしょう。
エイデン:天紫珠李
特定秘密局の局員の役。
聡明で仕事が出来る女性という雰囲気が出ていました。
出番や台詞も多く、ソロでの歌もあり、活躍していたと言えるでしょう。
次期トップ娘役に就任しますが、鳳月さんとどの様なトップコンビになるのか?
それを今から心待ちしています。
カイ:礼華はる
ユリウスの友人で、骨董店の店員の役。
今作は特徴的な役が多いですが、カイはごく普通の青年という感じの雰囲気でした。ですので、舞台に登場するとゆったりとした空気になった気がします。
特段、個性的という役ではありませんでしたが、それが逆に難しかったのではないでしょうか? しかし、礼華さんは気負う事無く演じ、変に印象付けたりしなかったのが良かったと言えるでしょう。
マクシマス:彩海せら
呪術師でエゼキエルの弟の役。
エキセントリックな性質を持つ姉のエゼキエルとは違い、マクシマスは冷静な感じです。エゼキエルと違って大仰に話したりはしませんが、その分怖いのは弟のマクシマスの様に感じました。
登場する時は、奇矯なエゼキエルといつも一緒にいるので、その力に負けそうな気がしますがそうはなりませんでした。むしろ性格が全然違うキャラに確立されているのが良かったのかもしれません。
彩海さんも演技や歌がとても安定していて上手いです。それだけでなくイケメン度も上がってきた気がします。
メアリー・スチュアート:白河りり
16世紀頃に処刑されたスコットランド女王の役。
儚げな雰囲気が出ており、凛とした佇まいに目を引かれました。ソロでの歌も綺麗で、高音が伸びやかだったと思います。
登場する場面はほぼ回想だけです。限られた出番でしたが、その分非常に重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。個人的には娘役が演じた役の中で2番目に印象に残りました。
アリスター:瑠皇りあ
カトリック教会の助祭の役。
出番や台詞は多くはなかったですが、可愛らしい雰囲気を漂わせており、まだ少年の雰囲気がある青年の様な感じが良かったです。
アマラ:羽音みか
骨董店の店長の役。
ジェームズと一緒に骨董店を経営している役です。最初ジェームズとアマラは夫婦だと思っていたのですが違いました。
しかし、ジェームズとは仲睦まじいので、そう観えてしまいます。
人生の先輩としての貫禄が出ており、ユリウスを温かく見守っている女性としての役を肩肘張らずに演じていたと思います。
ハリエット:きよら羽龍
バチカンの守護戦士の役。
出番は少なめでしたが、ダークな雰囲気が漂っており、表情をあまり変えない所や低めの声が印象に残りました。
パンツスタイルも似合っていて格好良かったです。
イリス:妃純凛
ハミッシュ:大楠てら
マレイ:彩路ゆりか
この3人はフォザリンゲイ城に埋められているメアリー・スチュアートの心臓を見つけてくれる役です。
ちょっとした役でしたが、キーとなる非常に重要な物を見つけてくれたので、物語上必要不可欠な存在だったと言えるでしょう。
さすが〈お芝居の月組〉と言える充実さ!
今作の演出家である正塚晴彦先生の手腕もあるかもしれませんが、1人1人が真に迫る演技をしていたと言えるでしょう。
出番や台詞が少しだけだったり人も、その場面や台詞にとても心を込めて演じている様に観えましたね。
どうしてここまで巧みな演技が出来るのか? それを聞きたい程です。
それに今回の作品はヴィクトリア女王統治下のイギリスが舞台ですが、本当にその時代に行った気持ちにもなりました。
上級生から下級生まで、演技に関しては粒ぞろいだと断言して良いでしょう。
先に書きましたが、特に良かったのは彩さんです。もう凄すぎます。あそこまでの怪演はそうそう出来るものではありません。
彩さんのファンなら是非観てほしいですね。
月城さんと海乃さんのトップコンビでの作品はこれで最後になります。お2人の舞台を宝塚で観れなくなるのは本当に寂しいですが、後を継ぐ鳳月さんと天紫さんの次期トップコンビになっても、〈お芝居の月組〉はしっかりと保たれると確信しました。
月組は安泰と言えるでしょう。
以上が『Eternal Voice 消え残る想い』の役ごとの感想でした。
皆様はどの役が印象に残りましたか?
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