有島武郎『一房の葡萄 他四篇』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
有島武郎の童話集『一房の葡萄 他四篇』(岩波文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
童話集だが・・・
本書は童話集なので、ほのぼのと平和的な話が収録されているのかと思いきや、そうではありませんでした。むしろその逆かもしれません。
どの話も子供が主人公ですが、子供を通して人間の弱さ、醜さ、どうしようもなさなどを真正面から目を背けずに描いているのです。
個人的にはそういった話は好きです。子供と言えど、いえ、子供だからこそ、より負の面がリアルで蠢いて見えるのかもしれません。
一応童話ですが、本書に収録されている作品を子供が読む時、少し成長してからの方が良いかな・・・? 例えば、5歳くらいの子が読んだら、ちょっとショックを大きく感じるかも。
でも、どの作品も短いながらもとても面白くて濃かったです。
各短編について
一房の葡萄
私としては主人公の気持ちが痛い程分かります。勿論盗みを働くのは良くありません。しかし、そこまでに至る経緯の心情をそばで見ている程現実的に感じたのです。この描写は本当に見事と断言して良い。
主人公がした行為は責められて当然ですが、彼を許した友人のジムはかなり偉いと言えます。
私だったら許せないかもしれない。許せたとしても「また盗むのでは?」と猜疑心が芽生えてしまい、以前の様に仲良くは出来ないかも・・・。
それにしても、主人公が食べた葡萄ってどんな感じだったのでしょうか?
普通の葡萄だと思いますが、この様な出来事があった後なので、特別な味に感じたのは間違いないでしょう。
溺れかけた兄妹
この話もまた人間の弱さを描いています。
しかし、妹だけ置いて自分だけ逃げた兄を責められるでしょうか?
海で溺れた時は大人だって大変だと言うのに、子供に何かしろと言うのは現実的ではないでしょう。
ですので、兄が妹を置いて助けを呼びに行ったのは正解だと私は思っています。
結末はちょっとビックリ!
何故、友人のMが後に殺された、なんて設定にしてしまったんでしょうか?
碁石を呑んだ八っちゃん
兄弟喧嘩から始まる話です。最初だけだと兄弟あるあるな光景に見えるかもしれません。
でも、碁石って小さい子供が誤って吞み込んでしまう大きさですからねぇ・・・。
成長するまで手が届かない所に置いた方が良さそうです。
それにしても、兄が気付いたから良かったですが、もし気付くのが遅れていたら、弟は窒息死していてもおかしくなかったでしょう。
うろたえながらも兄の優しさが出ていたと感じました。
僕の帽子のお話
主人公の帽子が勝手に逃げてしまい、それを取り戻す不思議な話です。
夢の中の出来事が印象的でした。
主人公が通っている学校の先生が出て来て「一銭銅貨を何枚呑むとお腹の痛みが治りますか?」なんて問題を出しています・・・。
また、主人公の父親と母親が主人公を探している場面に遭遇しますが、本やタンスの中を探しているのです・・・。
あぁ、何とも奇妙ですが、これらって夢あるあるだと言えるでしょう。
火事とポチ
出だしから主人公の家が火事になっている大変な状況です。
火事になった際の人々の描写が上手かったです。
個人的には火事の最中に行方不明になってしまったポチを探そうとして、その最中に妹に八つ当たりをしてしまう場面が象徴的でした。
八つ当たりをするのは良くないですが、こんな非常事態です。ましてや小さい子供です。平静でいろと言うのが無理でしょう。
ポチは見つかりましたが亡くなってしまいます・・・。
非常に辛い出来事ですが、恐らく主人公はこれを経て精神的に成長したのではないか、と感じました。
簡単なまとめ
優しい文体で読みやすいです。どの話も短めなので直ぐに読み終わります。しかし、内容はどれも濃いです。
考えさせられる内容となっており、決して子供騙しな作品ではない事が分かります。
大人が読んでも、いえ、むしろ大人が読んだら、よりこの作品に描かれている子供心が刺さるのではないでしょうか?
どの作品も後世に語り継ぐべき作品です。
興味のある方は是非とも読んでほしいと思います。
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