皆様こんにちは、霜柱です。
私は先日、『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』を観劇し、感想をブログに載せました。
今回は、印象に残った役の感想を書いています。
役ごとの感想
ジミー・ウィンター:柚香光
ハンサムなプレイボーイで、ミリセントの息子役。4回目の結婚をする予定。キャラ的には、『麗しのサブリナ』に出てくるデイヴィッド・ララビー(壮一帆さんが演じました)に似ています。
ジミーはビリーやクッキー、アイリーンと接しながら本当の愛を見つけていき、最後にはなんやかんやありながら、ビリーと結婚します。
ビリーとのやり取りでは『はいからさんが通る』を思い出させる場面も出てきました。
今作では酔っぱらう場面が最初の場面であります。その酔っぱらった演技も上手で絵になっていました。前作『はいからさんが通る』では、華さんが演じた、酔っぱらった花村紅緒に注意する場面がありましたが、今作では逆の立場になり、華さん演じるビリーに呆れられていました(笑)。
柚香さんは、まずとにかく、その場にいるだけで絵になります。端正かつ個性的な柚香さんのスタイルは、観る者を引き付けました。
ビリー・ベンディックス:華優希
クッキー、デュークの2人と共に酒の密売をしている役。年齢的には20歳前後という所でしょうか。荒っぽい言動のキャラですが、華さんは上手く演じており、声の感じに少年っぽさ(少年の役ではありません)が出ていた所が良かったです。
おぉと思ったのは、ジミーに色仕掛けをする場面です。ビリーはそんな事は出来ない性格ですが、ジミーの別荘の地下室に隠した密造酒が、ジミーにバレない様にする為に行います(勿論全く上手くいきません)。その体当たり的な、ぎこちない色仕掛けが良かったです。
特に印象に残ったのは、アイリーンの家族とジミーが食事をする場面です。お玉で寸胴鍋を叩きながら「♪おめでとさん、お似合いだよ」(←ちゃんとした歌詞は忘れましたが、こんなニュアンスでした)と歌いながら、スープをお皿に入れます。しかし、それをとても雑に行い、ジミーにはワザとスープをこぼしたり、お玉で頭を叩いたりします。この時のぶっきらぼうな演技で観客の笑いを取っていました。
ビリー・ベンディックスはトップ娘役が演じる様な役柄ではありませんが、華さんは体を張って懸命に演じていたのが感じられました。
クッキー・マクジー:瀬戸かずや
ビリー、デュークの2人と共に酒の密売をしている役。3人でジミーを上手く欺いて、ジミーの別荘の地下室に密造酒を隠し通そうとします。
クッキーはジミーの別荘に執事として侵入します。しかし性格が粗雑なので、執事として上手く機能していません。しかし、ジミーはそんなクッキーを最後の方で、「最高の執事」と褒めます。
1番印象に残ったのは、ビリーの時と同じく、アイリーンの家族とジミーの食事の場面です。クッキーは上手から「パンだよ」「サラダだよ」と走りながら、机の上にドンと置き、下手に捌けます。特にサラダの時は、調理してある物ではなく、野菜そのものを机の上に置きます(笑)。アイリーンの家族とジミーが呆然としていると、下手から走ってきて、パンやサラダを回収して上手に捌けます。
また、エストニア侯爵夫人とは、お酒や音楽についての考え方の違いがあり、衝突しますが、最後には何と結ばれます。
クッキー・マクジーは汚れ役に近いですが、それでも瀬戸さんは洗練された格好良い雰囲気を纏っていました。また、背が高くスタイルも良いので、特にダンスの場面になると、より見栄えました。
アイリーン・エヴァグリーン:永久輝せあ
今作での1番の功労者でしょう!!
永久輝さんは今作で、モダンダンサーで女役を演じています。エストニア公爵夫人の姪で、マックス上院議員の娘です。
永久輝さんの女役は正直、男っぽさが出ているかと思いきや、あにはからんや、完全に女役になっています。声も完全に女性の声になっており、目を瞑って聴いたら、永久輝さんだとは分からないでしょう。
声だけでなく、見た目も素晴らしいです。足が長くスタイルも良いので、他の娘役が霞んでしまう程でした。永久輝さんが出てくるだけで、その場が明るくなる感じです。
アイリーンは、いちいち動作や喋り方が大仰です。しかし、不自然だったり大袈裟には感じませんでした。また、ビリーやクッキーを小馬鹿にする場面がありますが、決して嫌みな感じはせず、軽いけど品性を保っていた様に思えました。
ただ、ソロで歌う場面が入浴シーンの所であります。この場面は話題を呼ぶと思います(笑)。なんせお風呂場のシーンですから・・・。しかし下品さは無いのでご安心下さい。
因みに最後の場面で、実はジミーの腹違いの妹という事が判明します! ビックリな展開でしたが、これは『Ernest In Love』の結末と通じると思いました。
実際にアイリーンの様な女性がいたら、振り回されて疲れそうになりますが、永久輝さんは、この1歩間違えれば、下品で嫌みになりそうな女性を、その様な事にはならずに品性を保ちながら見事に演じ切りました。とても『はいからさんが通る』で作家の高屋敷要を演じた人と同一人物とは思えません。
永久輝さんは今作で、更に役者としての力量が高まった事は間違いないでしょう。女役に転向してもイケるとは思いますが、女役にしては背が高すぎるので劇団側がOKと言うとは思わないですし、何よりスポンサーの三井住友カードが許さないでしょう(笑)。
とにかく永久輝さんは素晴らしかったのです。
バーソロミュー・ベリー署長:汝鳥伶
仕事一筋の警察署長の役。
今作で「オォ!」と思ったのは汝鳥さんが歌っただけでなく、何と踊った事なのです。踊るといっても激しかったり、動きが早い踊りではありませんでした。しかし汝鳥さんは、私の中では踊るイメージが無かったのでビックリしました。汝鳥さんが踊っていた作品といえば、月組組長時代の作品『EL・DORADO』ぐらいしか思い浮かびません。(私事ですが、私が宝塚を観始めたのは2002年からです。その為『EL・DORADO』はビデオで見たのみです。)
ですので、その意味でも、結構珍しいと思います。
因みに、ビリーがジミーの奥さんという事にして、周りを欺く為に、メイド服を着ている場面があります。不審に思ったベリー署長はジミーに「何故奥さんにメイド服を着せているんだ?」と問いかけ、ジミーは「僕の趣味です」と答えます。それを聞いたベリー署長は「私も昔、妻に着させた事がある。同胞がいて嬉しい」と喜びます(笑)。
汝鳥さんは登場するだけで舞台が引き締まります。出番も多く、笑いも沢山取っていました。
ミリセント・ウィンター:五峰亜季
ジミーの母親で実業家の役。1幕目は全く出番が無く、2幕目の最後の方で、ようやく登場します。出番はとても少ないですが、今作で1番、展開のカギを握る人物です。何故なら以下の事を言うからです。
- マックス上院議員は昔の恋人で、ジミーの父親だという事(それによりアイリーンはジミーの腹違いの妹という事が判明)
- ビリー、クッキー、デュークの密売のボス、ブラウンベアードはミリセント自身だという事
もうどんでん返しの展開です。ただでさえドタバタな場面が多い作品なのですから(笑)。
五峰さんも登場するだけで、舞台が引き締まりました。それだけでなく貫録や迫力も出ており、少ない登場シーンでも、観客に印象を与えたと思います。
とは言うものの、もう少し出番を増やしても良かった様な気もします。
エストニア公爵夫人:鞠花ゆめ
マックス上院議員の妹で、アイリーンの叔母。禁酒主義婦人会の会長を務めており、お酒を追放する事に尽力している人物。
「お酒は絶対ダメ! 音楽はヨハン・シュトラウス!」と徹底している堅物です。エストニア公爵夫人はレモネードが好きな人物ですが、クッキーに酒入りのレモネードを飲まされ(お酒が入っているとは知らずに)、べろんべろんに酔っぱらってしまいます。また、クッキーとの掛け合いの歌もあり、それぞれ印象に残りました。
エストニア公爵夫人は堅物ですが、国や人の事を誰よりも強く思っています。しかし、何事にも白黒を付けないと我慢できない性格なのでしょう。
年齢や立場は異なりますが、『ガイズ&ドールズ』のサラ(黒木瞳さん、映美くららさん、妃海風さんが演じました)を彷彿とさせる役柄だと思いました。
鞠花さんは迫力のある歌・演技で観客に強い印象を与えた事は、間違いないです。
マックス上院議員:和海しょう
アイリーンの父親。エストニア公爵夫人の兄。上院議員・裁判官・牧師という3つの職業を兼業しています。
エストニアと同じく、堅物で、禁酒法を支持しています。ただ、アイリーンの事は可愛がっており、娘の幸せを願っています。
最後の場面で、ミリセント・ウィンターから、ジミーが自分の息子だという事を知らされ、驚愕します。しかし、その事実を受け入れ、ジミーに自分の後を継いでほしいと言い、ビリーとの結婚も認めます。
和海さんは、最初は堅物でも、最後の場面では寛大な心を示した、この役を、ユーモアを交えながら、舞台で演じていました。
デューク・マホーニー:飛龍つかさ
ビリー、クッキーの2人と共に酒の密売をしている役。頭の回転はそんなに良くなく、女性を前にすると緊張する性格。
ジェニー・マルドゥーンから、デュークという名前だから、イングランドの公爵ではないかと、思わぬ勘違いをされます。デュークは否定しようとしますが、クッキーが調子に乗って「そうだ」と言ってしまい、イングランドの公爵という事にさせられてしまいます。
最後の方の場面で、ビリーに「デュークは私の仲間」と言われてしまい、イングランドの公爵ではない事がばれてしまいます。デュークは「当初は騙していたが、本当に好きになってしまった」と言い、ジェニーに告白し結ばれます。
うろたえたり、振り回されたりする事が多い役柄ですが、そんな役を飛龍さんは笑いを上手く取りつつ演じていました。
ジェニー・マルドゥーン:音くり寿
ジミーの友人。何故かイギリスの女王になる事を目標としています(笑)。
ジミーと同じ様に軽いノリみたいな所がある性格です。デュークと初めて会った時、同じ名前のイングランドの公爵と間違えます。同じ名前だからといって、そんな簡単に間違えるものなのかと、観ていて思いはしましたが、そのまま騙されてしまいます。
最後の場面で、デューク・マホーニーがイングランドの公爵ではない事を知り、騙されたと言って憤慨します。しかしデュークから真っ直ぐの偽りの無い告白をされた時、それを受け入れて結ばれます。
理想が高すぎて、勘違いしやすい性格ですが、同時に素直さも持っている女性だと思いました。
音さんは歌の場面も多く、持ち前の3拍子揃った実力で、安定した舞台を見せてくれました。
上記以外の出演者は、あまり目立った役は与えられず、その他大勢という感じだったので、そこは少し残念でした。
しかし、ドタバタ感はありつつも纏まりのある舞台でしたし、特にダンスの場面は明るく楽しく良かったです。
今作『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』は、本当に楽しく明るいミュージカル・コメディなので、観劇し終わった後は「観て良かった」という気持ちになるでしょう。
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