日本のメロディック・デス・メタル・バンドが2003年にリリースした5thアルバム。
全11曲収録。
バンドメンバー
- HIYORI:Vocals
- MASA:Guitars
- KENTA:Guitars
- AKIRA:Bass
- HIME:Drums
今作をリリースした3年後の2006年にHIME、HIYORI、KENTAが相次いで脱退した。
各楽曲ごとの感想
①Spiral Chaos
ズーンズズズズーンというヘヴィなリフから始まるミドルテンポの曲。
1分10秒程のインストだが、途中からヒトラーっぽい演説が入ってくる。それがより曲を不穏にさせている。
非常に惹き付けるサウンドになっており、1曲目としての掴みはバッチリだと言える。
②The Eternal War
前曲と繋がった状態で始まるハイテンポでノリの良い曲。
HIYORIが金切り声とデスボイスを巧みに使い分けているが、それだけでなくノーマルな歌声や囁き声の時も少しある。色々な歌声を駆使しているのが見事だと言える。
キレのあるギターと、忙しないドラムとベースもかなり良い。
展開もAメロ→Bメロ→サビの繰り返しになっていない所にも拘りを感じる。ギターソロのバトルも印象的。
何回聴いても気持ちを高揚させられる名曲だと思う。
③Impulse Wave
この曲もまたドラムの演奏やギターのリフが忙しない感じになっている。
HIYORIは基本デスボイスや金切り声だが、サビになるとノーマルで歌っている時もある。
激しい曲だが音を詰め込んでいる時と、隙間がある時を上手く構築させているので、聴く者が飽きない様に工夫されていると感じた。この曲もとても良い。
④Reflections Of Mine
低めのゴボゴボとした様なギターの音から始まる。出だしはミドルテンポだが、すぐにハイテンポへと変わる激しい曲。
印象的だったのはサビの時に弾いている、ゆったりとしたギターのリフだ。特別な事をしている訳ではないが情緒さを出している。これがあると無いでは、曲のインパクトが大分変わったものになったのではないだろうか?
この曲も良い。
⑤Subliminal Self
アコギで静かに始まったと思ったら、HIYORIのデスボイスと爆音の演奏で、聴く者を地獄へ堕とす容赦ない強さがインパクト大。
基本ミドルテンポだが、2:35頃からちょっと疾走感が出てきて、終わりは再びアコギとなる。
HIYORIのデスボイス、うねるギターやベース、喧しいドラム、全てが手加減無しというのが伝わってきた。ギャングコーラスもちょっと入っていて、それが良いスパイスになっている。
⑥Deep Fault
ちょっと明るめでポップになっているのが特徴的(あくまで今作の他の曲と比べたらの話)。ノリが良くて聴き易い。
理由を聞かれても上手く答えられないが、この曲を聴いていると夕焼けの情景が浮かぶ。私だけだと思うが(笑)。
出だしのギターリフは特に叙情性があって良い音色だ。ツインギターソロも良く、アウトロでまたギターソロが入る。なので、ギターが特に活躍していると言えるだろう。
HIYORIのノーマルな歌声がサビの終わり少し入るが、それがアクセントにもなっている。
とても印象的な曲に仕上がっていると感じた。
⑦Evoke
演奏と同時に歌も始まるミドルテンポの曲。不穏な出だしに惹き付けられる。
他の曲と比べるとデスボイスが力強くなっており、重々しいサウンドが堪らない。うっすらと入っているギャングコーラスも良い仕事をしている。
全体的に迫力がある良い曲だ。
⑧F.N.K.
ややハイテンポの曲。
ドラムのスネアが目立つ音作りになっており、ギターソロは綺麗なサウンドでグッとくる。
HIYORIは基本、金切り声だが時折デスボイスで歌っているので、それが緩急になっていると思った。
⑨Above and Beyond
ハイテンポな曲。
2分50秒程の曲だが、とにかく疾走感に溢れている。
うねうねしたギターや喧しいドラムが心地良く感じる程だ。
メロディアスの要素は抑え気味な印象を受けた。
⑩Nowhere To Run
ハイテンポな曲。
緩急があって展開にも凝っている様に思えた。激しくもメロディアスなサウンドが耳を惹きつけ、特に1:21~1:35辺りのHIYORIのノーマルな歌声が印象的だった。
⑪Keen Of Phantom
2本のアコギのみのインスト。素朴で奇を衒っていない優しい演奏になっている。
全体的な感想
非常に優れたメロディック・デス・メタルの作品になっている。激しい演奏の中に哀愁の様な物を感じさせる音作りをしているのが、非常に高いポイントだ。
メロディアスすぎず、激しすぎずという絶妙に良いバランスが取れている。
こういった作品を作るのは非常に大変だったかもしれないが、本当に素晴らしい作品に仕上がっていると断言して良いだろう。
今作『EVOLUTION OF NEW ORIENTAL METAL』は全11曲で、収録時間は約34分というコンパクトな作品だが、この点も非常に評価に値する点だと思う。
短めの時間だが、物凄く濃密に凝縮されていると言って良い。1曲1曲の破壊力が凄まじいので、決して物足りなさを感じる事は無いだろう。
勿論、「もう少しボリュームが欲しかった」と言う人もいると思うが、その場合は繰り返し聴けば良いのである。実を言うと私も1回目を聴き終わった時、「もう終わり?」と思ったが、2回目以降聴いたら「いやいや、このぐらいの長さで丁度良いんだ」と痛感した。
もしも、今作が50分とか60分とかの長さになっていたら、冗長になっていたかもしれないし、ここまで強烈な印象を与えなかったのではないだろうか?
メンバーのスキルも非常に高い。
HIYORIは金切り声、デスボイスを使い分けているが時にはノーマルな歌声も披露している。数種類の歌声を駆使出来る力に脱帽する。
正直、金切り声の時はほんのちょっと線が細く感じる時があるが、それでもここまで歌いこなせるのだから素晴らしい。個人的にはノーマルな歌声ももう少し聴きたい気持ちになった。
MASAとKENTAは目まぐるしく展開するヘヴィなギターを、これでもかと言う程演奏するが、ソロの時は一変して心にグッとくる叙情的な音を出す。なので片時も聴き逃してはいけない気持ちになる。
AKIRAとHIMEはリズム隊として、曲を何事にも動じない鉄骨の様に支えている。この2人がしっかりと地盤を固めているからこそ、それぞれの曲が強固になっていると言っても過言ではない。
どの曲も良いが特に惹かれたのは①②⑥⑦だ。メロディーやパワー、曲の展開などどれも凄すぎる。是非聴いてみてほしい。
巷間に知れ渡ってほしい作品だが、YOUTHQUAKEというバンド自体ももっと知られてほしかった。過小評価されている気がするが、こういったバンドはなかなか出て来ないと思う。だが、YOUTHQUAKEは2013年に解散してしまった。
メンバーチェンジが激しいバンドだったが、やはり1番の痛手はボーカルのHIYORIが2006年に脱退してしまった事だろう。その後はAKIRAがボーカルを兼任したが、もしもHIYORIが脱退していなかったらどうなっていたのか?
それは今となっては分からないが、この5人体制での作品をもっと聴きたかった気持ちはある。
繰り返し書いてくどいかもしれないが、今作は非常に聴き応えがあり聴く者を圧倒させる力を強く持っている作品なので、メロデスが好きな人は本当に聴いてみてほしい。
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