オーストリアのシンフォニック・メタル・バンドが2010年にリリースした7thアルバム。
全13曲収録(日本盤ボーナストラック2曲含む)。
バンドメンバー
- Sabine Edelsbacher:Vocals
- Lanvall:Guitars,Bass,Keyboards,Piano,Bouzouki,Mandolin,Percussion Frog
- Dominik Sebastian:Guitars
- Max Pointner:Drums
[ゲストメンバー]
- Robby Valentine:Backing Vocals,Choirs
- Dennis Ward:Backing Vocals,Choirs
- The Solitaire Orchestra And Choir
5th『THE GRAND DESIGN』と6th『MyEarthDream』でベースを弾いていたFrank Bindigは脱退した。しかし、新ベーシストは入れず、今作では三度Lanvallがベースを弾いている。
ただ、5thと6thではギタリストはLanvallのみだったが、今作からセカンドギタリストとしてDominik Sebastianが加入した。
そしてコーラスは引き続き、Robby ValentineとDennis Wardが担当している。
各楽曲ごとの解説と感想
①Entree Unique
荘重なオーケストラとコーラスのみのインスト。1分強程の曲。
迫力や壮大感がある演奏とコーラスであり、1曲目としてはOKである。
②Solitaire
ヘビーなギターリフが目立つ疾走曲。
オーケストラの演奏が入っているが、あまり前面には出ていない。ただ、ここぞという時に、曲を盛り上げる役目をしている。その為、バンド演奏やSabineのボーカルに重点を置いている気がした。
歌メロはAメロ・Bメロ・サビよりも5:21から(2番のサビの後のメロディ)の方が印象に残る。
ギターソロが入っているが、これはあまり印象に残らなかった。
また、間奏が少し長く感じた。
③Higher
今作のお薦め曲。
冷たい響きのあるピアノで始まるミドル・テンポの曲。
ギターソロは無く、バンドはひたすら黙々と演奏をしている印象を受けた。オーケストラやコーラスが目立つのは2:43~3:11の間奏ぐらいの所である。派手な演出ではないが、印象に残った。
歌メロは覚えやすく淀みが無いので聴きやすい。4分弱でコンパクトに纏まっているのも良い。
④Skyline’s End
ヘビー且つ異国情緒を感じる曲。
基本的には、ややスローなテンポだが、2番のサビの後(2:50~4:30)は異国情緒の雰囲気が強くなり、軽やかで踊りだしそうなテンポやメロディになる。もう少しアレンジすれば、完全にフォーク・メタルになりそうな曲だ。
だからこそ、曲全体に異国情緒風のアレンジをしてほしかった。特にBメロやサビもその様にしてくれたら、曲として纏まりが出たと思う。
後は、歌メロがやや弱かった。
⑤Bon Voyage Vagabond
ウワーンという幻想的で静かなキーボードと、遠くで弾いている様なギターのリフで始まるミドル・テンポの曲。
シンプルでメロディアスな曲だが、メタリックでもある。
オーケストラはあまり目立たず、ほぼバンド演奏に特化している気がした。
歌メロだが良くも悪くもないという感じである。また、間奏のギターが少し冗長に感じた。
⑥Inward Passage
日本盤ボーナストラック。1分20秒程のインスト。演奏はピアノと、その後ろでうっすらと聴こえるキーボードの音のみ。
音色は優しく丸みを帯びている。演奏は技巧的ではなく、淡々としており、ほぼ同じメロディを弾いている。
聴いていると癒される様な気持ちになる。
⑦Come Undone
今作のお薦め曲。
オーケストラとバンドの両方の演奏で幕を開ける曲。
Sabineの繊細な歌声がしっかり活かされている曲だ。凝った事はあまりしていない様に思えるが、その分メロディの美しさが出ている。印象に残りやすい歌メロもあるので、今作の中では中毒性が高い。
⑧Out Of This World
デジタルサウンド的なシンセの演奏で始まるミドル・テンポの曲。
AメロやBメロは、そのデジタルサウンドを伴ったままだが、サビになると、バンド演奏に変化し、物悲しいメロディを奏でる様になる。
3:38~4:53はギターソロであり、力強く瑞々しいサウンドでありつつも、泣きの要素もあり、曲をドラマティックにしている。ギターソロ後はピアノの演奏が少しだけ入って終わる。
⑨Further Afield
琴の様な音で始まる曲。その為、民族音楽的な要素を持った曲なのかと思ったら出だしだけである。ヘビーでシンフォニックな曲だ。
Aメロ・Bメロはハイ・テンポだが、サビになるとミドル・テンポになってゆったりとなる。
その為、AメロからBメロにかけては盛り上がる展開になるが、サビになると、少し盛り上がりが欠ける様に感じた。サビももう少し疾走感のあるメロディやテンポだったら良かったと思う。
⑩Eternity
日本盤ボーナストラック。Dominik Sebastianのアコースティックギターのみの演奏である。
あっさりとした演奏で、派手な技巧は無い。
音がややこもっている様に聴こえたが、聴いていると落ち着いた気分になってくる。しかし、メロディの力は正直弱く、3分程の曲だが、それでも冗長に感じてしまった。
⑪A Virtual Dream?
ヘビーなギターで始まるハイ・テンポの曲だが⑨と同様、サビになるとゆったりとした感じになる。
正直イマイチな曲である。歌メロは印象に残りにくく、サウンドも中途半端にヘビーで、中途半端にメロディアスだ。間奏や曲の終わりの方には、荘厳なコーラスが少し入るが、曲全体が色々と噛み合っていない印象を受けた。
⑫Brothers On Diamir
7分弱の曲。出だしから5秒程はメロディの無いオーケストラの演奏だが、そこから、幻想的なギターのリフに変わり、Sabineのボーカルへと繋がる。
正直、前半はピンとこないが、4:11からは曲がドラマティックになる。Sabineの美しく輝きのある歌声が活かされており、バンドとオーケストラの演奏も良い具合に出過ぎず、引っ込み過ぎずという均衡を保っている。
⑬Exit Unique
オーケストラとコーラスのみのインスト。①と対になっている曲。曲は殆ど①と同じだが、こちらの方は2分50秒程の長さで①よりも長い。
壮大な曲で圧巻だが、この曲は正直蛇足だと思う。この曲単体では良いのだが、⑫のドラマティックな展開の後にこの曲が来ると、しつこく感じた。もし①と対にするのなら、①とは違うアレンジをしてほしかったと思う。
全体的な感想
前作『MyEarthDream』に続いて、オーケストラを導入した壮麗で美しい作品となっている。ただ、オーケストラはインストの①と⑬を除いて、あまり前面に出ておらず、むしろバンドの引き立て役の様な印象を受けた。
収録されている曲だが、前作と同様、良い曲とそうでない曲の差がある様に思えた。そうでない曲の主な原因は歌メロだろう。特にAメロ・Bメロは良くても、サビになると急に気勢を殺がれた様になったり、変にゆったりする曲が目立つのである(②⑤⑨⑪など)。
それにより、Sabineの美しく繊細な歌声が上手く活かされず、勿体無い事になっているのである。勿論歌メロが良い曲もある(③⑦⑧⑫など)。その様な曲はSabineの歌声が活かされているし、バンドとしての演奏も纏まりがある様に聴こえた。
また、ヘビーなサウンドも前作から引き継がれているが、EDENBRIDGEはヘビーなサウンドよりも、美しく琴線を揺さぶる様なサウンドで真価を発揮するのである。例えヘビーなサウンドになったとしても、メロディを活かすような曲を多く作ってほしいと私は思っている。
その為、今作『SOLITAIRE』は駄作ではないが、名作とも正直言えない。ただ、Sabine Edelsbacherの歌声が好きという人は聴いてみてはいかがだろうか?
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