川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
日本の農学博士/鳥類学者、川上和人(かわかみ かずと)さんの『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮社)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
こんなに面白い鳥類の本が今まであったか?
おにぎりを食べていると、しばしば愕然とさせられる。なんと、梅干しが入っているのだ。
出だしがこれで始まるのですよ。「一体何事だ?」と思ってしまいます。川上さんは酢豚にパインを入れるのも反対の様ですし(笑)。
とにかく、そこかしこに「ガハハハ!!」と大笑いをしかねない部分があちこちにあるのです。本の帯に書いてある通り、本当に抱腹絶倒でした。色んなユーモアが織り込まれているので、その知識や表現にも感服しました。
何故か、のび太、プレデター、カーミラ、キョロちゃんなども出てきます(笑)。
具体的に面白い箇所をもっと引用したいですが、あまりにもありすぎるのでそれはしません。
とにかく面白くて笑える。
ですので、電車やバスの中などで読む時は要注意です。
鳥類の知識が無くても大丈夫
とは言っても、「私は鳥に関する知識は何も無い」と思う人がいるかもしれません。でも、鳥に関する知識や造詣が無くても全く大丈夫です。
私も鳥類の知識は全くありませんが、充分に楽しく感じ読み進める手が止まらなかったほどです。なので、その点は安心してOKと言って良いでしょう。
ただ、逆に言うなら、専門的な内容を求める人にとっては「もう少し深掘りしてほしいかな・・・」と感じる可能性はあるかもしれません。
本書の内容はそんなに専門的という感じではなかったと思うので。
ですので、本書は鳥類初心者向けの本と言える気がします。
印象に残った内容や知識
ユーモアに溢れる内容ですが、その中で個人的に印象に残ったのを箇条書きで書きます。
- ジェームズ・ボンドという鳥類学者が昔いた
- 著者の川上さんはウグイスと仲が悪いらしい
- 小笠原や南硫黄島などで虫が入り込んだ話は恐怖だと思った
- UVスルーシャツ
- 糞は極めて魅力的な研究対象
- 鳥の排泄物は白色部が尿で、黒色部が糞
- 外来種の対処は一筋縄ではいかないと感じた
- カラスは鹿の血を吸血する
「鳥が関係あるのか?」と思う部分があるかもしれませんが、川上さんの軽快な文は読んでいて心地良さを感じます。それと同時に鳥類に関するちょっとした事も読めるのですから、一石二鳥ですよ。
ユーモアの中で光る現実に対しての厳しい言及
基本的に面白い内容となっていますが、時には環境に対しての厳しい意見も書いています。それがまた的確でアクセントになっていると思いました。
例えば、
原生の自然が美しいなんていうのは、都会派の妄想に過ぎない。現実の自然は死体にまみれ、口にハエがあふれ、心の中に悪態が湧き、心身共にダークサイドに堕ちていく。
そのままの自然が1番良い様に感じますが、実はそうではない。人間が思い描いている自然は人間に都合良く加工された自然なのでしょう。
国内外の色んな場所でフィールドワークをしている川上さんだからこそ、重みや説得力を感じる言葉です。
生態系保全といえば聞こえは良いが、現実は大型哺乳動物を殺す行為である。(略)担当者は文字通り血と汗にまみれる。環境保全という綺麗な言葉の裏にある泥臭い現実を忘れてはならない。
これは媒島(なこうどじま)でヤギの駆除を行った際の言葉です。
環境保全がどれほど大変で難しく頭を悩ますか? その辛さや覚悟が伝わってくる言葉です。
表面だけの自然/環境保護はいくらでも言えるかもしれませんが、では自分が体を張って、それを実行出来る人がどのくらいいるのか? かなり少数だと思います。
「本気で環境保全を思うなら、目を背けたい現実を直視してほしい」という事なのかもしれません。
簡単なまとめ
とにかく面白い本です。ユーモアやウィットに富んでいますが、時に環境や自然などの厳しい現実も書いています。
途轍もなく魅力的で、ページを繰る手が止まらなくなる本と断言して良いでしょう。
本書のタイトルだけ見ると、「鳥類が好きではないのかな?」と思うかもしれませんが、そうではありません。むしろ鳥類を含んだ生態系や環境に対して、ここまで真剣に、且つ綺麗事ではないシビアな現実を見ているのです。
その姿勢は簡単に真似出来るものではありません。
現実をしっかりと見据える力に圧倒されながらも、ユーモアな文章がやっぱり良いです。
鳥類に関しての知識が無くてもとても面白く読めるので、是非とも読んでほしいと思います。
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