皆様こんにちは、霜柱です。

ユダヤ系アメリカ人の作家、I.B.シンガー(Isaac Bashevis Singer/アイザック・バシェヴィス・シンガー)の短篇小説『お話を運んだ馬』(工藤幸雄・訳、岩波少年文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。

感想

バラエティに富んでいる短篇集

本書には8つの短篇が収録されています。心温まる話もあれば、ファンタジー的な話もあります。かと思えば「ガハハ!」と思いっきり笑いそうになる話もあります。
とてもバラエティに富んでいる短篇集だと言えるでしょう。

どの話も面白かったですが、1番良かったのは「おとなになっていくこと」です。子供らしい微笑ましい言動がある一方、旅人が語る言葉に感化を受け成長をしていくであろう展開が心りにグッときました。

この話に限らず、分かりやすい且つ深い物語が多かったと思います。

各短篇について

お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語

主人公のナフタリが本当にお話が好きというのが伝わってきました。ラストはちょっと感動的です。心が温まる気がしました。

また、この話に書いてある

人が、おかねのためだけではなく、愛の心から自分の仕事をするとき、その人は他人からも愛を引き出すものである。

は、名言ですが実行がとても難しいと言えるでしょう。でも、少しはこれを意識するだけでも仕事に対する向き合い方が変わるかもしれません。とは言っても、なかなかね・・・。

ダルフンカ―金持ちが永遠に生きる町―

まず登場人物の名前が面白いです。
大とんまグロナム、ぼんくらレキッシュ、とんまツェインフェル、ぬけさくトレイテル、ろばすけゼンダー、能なしシュメンドリックと言ったキャラが登場します。
もう1人、雑用係のシュレミールというキャラもいますが・・・。

とても面白くて笑いを堪えるのが大変な話でした。

誰一人としてまともな人がいないのですから(笑)。いや、シュレミールがこの話の中では1番賢いのかもしれません。頓智が閃いているキャラなので。

また、彼が最後に言う、

右に倒れたら、おれの負け。左に倒れたら、そっちの勝ち

この言葉って何かを皮肉っている様に感じました。

ただ、全体としては少し落語っぽさがあった気もします。

ランツフ

本書の中では印象が薄かったですが、少しファンタジー的な話でした。

ワルシャワのハヌカ前夜

ユダヤ人小学校での孤立している姿や、降りしきった雪の中を帰る途中で迷子になった描写はリアリティがあると感じました。また、声をかけてきた老人に嘘を言ってしまったのは何となく気持ちが分かります。

また、主人公のお父さんが良い味を出していましたね。

なかなか良い話だったと思います。

ヘルムのとんちきとまぬけな鯉

登場人物は「ダルフンカ」とほぼ同じです。
この話もとても笑える話でした。

鯉を死刑にしようとする内容なのですが、やる事なす事がその逆をしているのです。

ドタバタ劇で間抜けながらも、ちょっと憎めない様なキャラ達です。でも、実際にこういう人がいたら、イライラするのかもしれませんが(笑)。

レメルとツィパ

レメルとツィパはどちらもぼんやりしている性格です。特にレメルはその傾向がとても強いので騙されてばかりいます。

でも2人とも心優しい性格です。

最後はハッピーエンドになるのが良かったですね。落語の人情噺を彷彿とさせる話だと言えるでしょう。

自分はネコだと思っていた犬と自分は犬だと思っていたネコのお話

鏡が無い家庭に鏡がやってきた事による騒動を描いた話です。

この話で印象的なのは以下の言葉です。

鏡に映るのは体の表がわにすぎない。人間の真実の姿は、その人の心がけにある―(略)人生で行き会う人みんなに、できるかぎり親切をつくす、その心がけだ。

確かにその通りです。どんだけ表側を綺麗に装っていても、言動がそれに伴っていなければ何の意味も無いでしょう。
勿論表側を綺麗にするのが無意味とは言いません。でも、それをしたら、中身も入れ替えて、その人自身の精神的な向上に繋げる必要性があると思います。

おとなになっていくこと

主人公と友人のフェイフェルは一緒に出版を計画しようとします。その為に意気込んだり、そして失敗をしたりする場面は子供らしい微笑ましさがあると感じました。

その場面を読んでいる時は、「自分も似た様な事があったかな?」と思い出したりもしました。

後半になると主人公の家にレブ・ウルフ・ベアという旅人がやって来ます。彼が言う、

一頭の羊が悪い病気を持っていると、羊の群れぜんたいに病気がうつる。人間も同じことで、一人の性悪が、みんなに広がるってこったな。

これは本当だと言えるでしょう。性悪までいかなくても、それに近い人が1人いるだけで、その場の雰囲気が悪くなったり、和が乱れた経験を味わった人は多いのではないでしょうか?

この言葉は「自分はネコだと~」で引用した言葉と結びつく気がします。

結構深い話だと感じました。

簡単なまとめ

どの話も読みやすくて分かりやすいです。それだけでなく、中には人生や人間形成について考えさせられる事も書いてあるので、読み応えがあると言って良いでしょう。
「お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語」「自分はネコだと思っていた犬と自分は犬だと思っていたネコのお話」「おとなになっていくこと」などが、そうだと思います。

かと思えば「ダルフンカ」「ヘルムのとんちきとまぬけな鯉」は笑いが止まらない話です。

興味がある人は是非とも読んでみてほしい作品です。

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ABOUT ME
霜柱
宝塚(全組観劇派)を観たり、読書(特にジャンルは決めず)をしたり、HR/HM(特にメロハー・メロスピ・シンフォニック)を聴いたり、スイーツ(特にパフェ)を食べる事が好き。これらを主に気儘なペースで記事にしています。 Xやインスタも気儘に投稿中。