スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
アメリカの小説家、スティーヴン・キング(Stephen King)の小説『トム・ゴードンに恋した少女』(池田真紀子・訳、新潮文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
ほぼトリシア1人のストーリー
本作の主人公はトリシア・マクファーランドという9歳の少女です。他の登場人物はトリシアの両親(離婚済)や兄などがいますが、物語はトリシア1人でほぼ進みます。
登場人物が少ないと物語の展開が難しい部分がある気がしますが、この作品は物語を引っ張る力がとてもありました。ストーリーは破綻が無いだけでなく、しっかりと臨場感があり、読んでいると自分もその場にいる様な気持ちになったのです。
文章に特別な技巧は無いと思いますが、それでいてここまで読者を引き付けるのは、本当に凄いと言えるでしょう。
森の中の描写
トリシアは森の中で数日間迷子になります。その間に色々な事が起きますが、それがリアルなんですよね。「実体験を基に書いたのでは?」と思う程です。
沢山の蚊に襲われて刺される場面を読むと、こちらも何だか肌が痒くなってきましたし、川の水を飲みお腹を壊して、嘔吐や下痢をする場面もとても生々しかったです。
トリシアの精神が変化していく描写も見事でした。
ホラー描写は他の作品と比べてかなり薄いです。でも、森の中で迷子という状況はある意味ホラーなのかもしれませんが。
トリシアの家庭はどうなるのか・・・
トリシアの両親は離婚して母親が親権を持ちました。しかし、この母親とトリシアの兄はとても仲が悪いです。
どちらにも言い分はあるのかもしれませんが、この状況をどうする事も出来ないトリシアにとってはやり切れないでしょう。
あくまでトリシア目線で見た父親は良さそうに見えますが、それもまた正直分からないでしょう。
最後の場面では父親も現れますが、果たしてトリシアの家族は再生するのか?
それは描かれていないですが、そうなってほしいと思います。
トリシアが好きな曲
物語を進める上ではほぼ関係無いですが、トリシアが好きな曲やアーティストが出てきます。
まずはボーイズ・トゥ・ダ・マックス。英語表記だとBoyz 2 Da Maxxの様です。
YouTubeで検索したら「Girl」という曲だけ出てきました。他は無かったです。試しに聞きました。
正直思ったのは「一体何だこれは???」です。トリシアは本当に気に入っていたのか? と思ってしまいました。他の曲が無いので分かりませんが、それにしても・・・。
サビで声が重なる部分は微妙に拘りがある様な無い様な、という感じです。でも、ある意味芸術的・・・かな? 曲は好きです。
この曲は2008年に出たっぽいです。ただ、『トム・ゴードンに恋した少女』は1999年刊行なので、トリシアが聴いていたのはこの曲ではないでしょう。
Hansonの「MMMBop」もお気に入りの様です。この曲も聴いてみました。
この曲のリードボーカルはテイラー・ハンソンでしょうか? 夾雑物が無い純な彼の歌声が胸に響きました。懐かしい感じのサウンドが良いです。明るいポップな曲で、各楽器の音がクリアに聴こえるのも大きなポイントと言えるでしょう。スクラッチ音が曲を更に盛り上げているとも感じました。
「Take Me Out To The Ball Game」って、どんな曲なんだろう?と思っていました。
聴いてすぐに「おや、この曲どこかで聞いた事あるぞ」と思ったのです。多分、宝塚歌劇団でも使われていた気がします。
因みにこの曲は1908年に誕生したとの事。原曲を歌っている特定の歌手はいないみたいです。その為かYouTubeで検索すると色々なバージョンが出てきます。
フランク・シナトラも歌っていたのは知らなかったです。
往年の歌手という味のある歌声がやはり良いですね。
トム・ゴードンの言葉
本書のタイトルにあるトム・ゴードンという人物は実在するアメリカの野球選手(当時)です。
トリシアは彼のファンです。
トリシアは森の中で彼に出会い(勿論、幻ですが)、彼と会話する場面があります。
現実に言ったのかどうかは分かりませんが、トム・ゴードンはリリーフの秘訣について語ります。
引用はしませんが、その言葉が私としてはヘルマン・ヘッセの『デミアン』に登場するマックス・デミアンが言う「だれかをこわがるとすれば、その原因は、そのだれかに、こっちを支配する力をゆずりわたしたことにある。」と重なると感じました。
簡単なまとめ
冒険譚とは違いますが、それに近い要素はあるでしょう。9歳の少女、トリシアが1人で森の中を数日迷子になり、その間に起きた諸々が書かれています。
他の登場人物も出て来ますが、直接関わるというより、ラジオの声やトリシアの夢や回想だったりするので、ほぼトリシア1人で物語は進んでいくと言って良いでしょう。
森の中の描写は決して甘くなく、かなり辛い環境です。そんなサバイバル的状況をしっかりと臨場感がありながらも緻密にキングは描いていたのです。ですので、「この先どうなるんだ?」とワクワク感が止まりませんでした。
興味がある人は是非とも読んでみてほしいです。
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