早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
日本の歌手/元書店主、早川義夫さんが書いた『ぼくは本屋のおやじさん』(ちくま文庫)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
本屋は大変だ!
タイトルや表紙だけを見ると「本屋でのゆったりとしたエッセイなのかな?」と思いました。
でも、読んでみると違いました。
読み終わって思ったのは「あぁ、本屋ってこんなに大変なのか!?」という事です。当時、早川さんが経営していた早川書店は小さな書店でした。なので、大型書店とは構造が多少違うかもしれません。
それでも、やはり取次や出版社から本がちゃんと届かない事があったり、変な客がやってくるとウンザリしたくなるでしょう。
因みに本書の解説を大槻ケンヂさんが書いていますが、大槻さんは本書を読んで「本屋のおやじになるのをやめて、バンドを続ける事を決めた」と書いています。
でも、大槻さんが本屋の書店主になってたら、どんな感じで、どんな本を売っていたのか?
それを想像すると面白いですね。
とにかく、本屋は大変という事です。本書は1982年に刊行されましたが、時代が変わっても根本的な大変さは2026年現在も同じでしょう。いや、今はデジタル化の対応や、ネット販売にどう対抗するかという問題があるので、昔よりも厳しいかもしれない・・・。
本屋は結構神経を使う仕事だと言えます。「本屋を開きたいなぁ」と思っている人は本書を読んでから、本屋を開くか否かを決めた方が良さそうだと思います。
本屋以外の職業にも当て嵌まる事が多い
著者の早川さんが本屋で体験したあれやこれやが書かれていますが、決して本屋だけの事ではないと思います。
まず、接客業ならほぼ完全に当てはまるでしょう。頼んでいた品物が業者から届かないとか、迷惑な客の対応など、「あ~、あるある!」と感じる筈です。
接客業でなくても人と人が一緒に関わり合う仕事だったら「ウチも似たような事が起こるよ」と同じ気持ちになるでしょう。
早川さんは理不尽な目に逢ったり、自身の不甲斐なさなどを書いていますが、それもまた共感出来る内容なんですよね。
身近さや親近感を誌面上から感じました。
もし、早川さんが凄腕の書店主だったら、逆にここまで魅力的な作品にならなかったのではないでしょうか?
刺さる名言!
読みやすくて本屋の世界が垣間見える内容ですが、読んでいて刺さる言葉が色々ありました。
印象に残ったのをいくつか引用します。
ホントに買う人というのは、文句一つ言わず買っていく。買わない人に限ってなんだかんだあるのである。
これは本当にそう! 私も経験があります。勿論一概には言えませんが、色々注文つける人はそんなに買ったり利用したりしないのです。
なので、「あれだけ色々言って買わないのかよ!」と愚痴を言いたくなった事があるのは言わずもがなです(笑)。
接客業あるあると言って良いでしょう。
知れば知るほど、知っているという態度をせぬような、もしくは、知っていることが、恥であるような人間になりたいと思うのである。
人間って言うのは色々と知りたがる生き物です。それ自体は決して悪い事ではなりません。むしろ、知らないままでいたら仕事が出来なかったり、生きるのも大変な事になる可能性があるでしょう。
でも、現代(昔もそうだったでしょうが)は知識マウントを取る人がいたりします。そこまでいかなくても、「自分はこれだけ知ってるぞ!」と何気なく誇示している人もいます。
私も正直、そういったのをした事があるので、決してその人達を責める事は出来ません。
ですので、早川さんのこの言葉は・・・かなり刺さりました。
孤独には強いようなふりはするくせに、甘えたいだけにすぎないのだなと思った。
私は孤独には平気なつもりでいましたが、実は他人に甘えたい部分があるという事に気付かされたのです。
ですので、強いストロークを喰らった気持ちになりました。
優越感を持とうとすることは、劣等感を持っている証拠である。
あぁ、今度は強烈なボディブローを喰らいました(笑)。
これは本当にその通りだと言えます。
詳細は省きますが、私は過去に色々ありそのせいでデカい劣等感を抱えて今も生きています。ですので、それを隠す為に優越感を持ちたいという気持ちに駆られる事があるのです。
優越感も劣等感も、それ自体は悪いものではないのかもしれません。しかし、人間はその扱い方が途轍もなく下手糞な気がします。勿論、私もそうです。
劣等感は自己否定に、優越感は他者否定に繋がりかねないですし・・・。
良書を読んでいる人間が必ずしも良い人間だとは限らない。
これも本当にそうですね。
そもそも「自分は良書を読んでいる」と思っていたら、自惚れていると言って良い気がします。
それに良書って何? 人によって基準は違うでしょう。自分がこれは良書だと思っても相手は悪書だと思うかもしれない。
その前に本は良書と悪書の2種類だけではありません。良書でも悪書でもないごく普通の本もあれば、悪書寄りの良書、良書寄りの悪書だってある筈です。
良書を読むことに異議はありませんが、それで人間形成が出来上がる訳ではない事を知るべきだと思います。
他にもまだまだ印象に残った言葉はありますが、以上にします。
簡単なまとめ
早川さんが本屋を経営している時に体験した諸々が書かれています。タイトルや表紙はほのぼのとしている様に見えますが、中身は本屋の厳しい現実でした。
でも、それを単に被害者意識で書くのではなく、「こういった事があったんだよね。何でこうなっちゃうのかな? あ~あ・・・」みたいなボヤキに近いです。
なので、それを読んでいると身近に感じましたし、「そういう経験は自分もある」と手を取り合いたい気持ちにもなりました。
また、優しめの文体ですが、時には鋭い意見が書いてあるので、名言を発見した喜びも味わえたのです。
1982年という昔の時代ですが、根本はそんなに変わっていないと思うので、「町の小さな本屋について知りたい」「本屋を開きたい」と思っている人にとっては、本書が結構参考になると思います。
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