レジナルド・ローズ『十二人の怒れる男』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
アメリカの脚本家、レジナルド・ローズ(Reginald Rose)が書いた戯曲『十二人の怒れる男』(額田やえ子・訳、劇書房)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
華やかでもないし明るくもないが
本作の登場人物は12人の陪審員達です。しかも全員中年のおじさんであり、若い男性や女性は残念ながら登場しません(笑)。
かといって、能力的に何かが秀でているという訳でもないです。ですので、華やかさは明るさはなく、正直地味な感じかもしれません。
ですが、内容的にはかなり面白かったですし、ページを繰る手が止まりませんでした。
何でそう感じたのでしょうね?
読んでいてかなり立体感があると言うかリアルに感じたのです。まるで自分がそこにいる様な気持ちになったのです。
飛びぬけて格好良いとか洗練されている人達ではないので、そこが逆にこの作品の魅力と言えるのかもしれません。
本作は陪審員第八号が主人公っぽいですが、基本的には12人の群像劇だと言えるでしょう。
ある意味スリラーかも
本作は決してホラーでもファンタジーでもありません。ごく普通の中年の男性12人が一室で少年を有罪にするべきか無罪にするべきかを話し合っている作品です。
非常にシンプルと言えばシンプルです。
でも、私としてはスリラー的な要素がある様に感じたのです。
何故かと言うと、集団心理の働き、証拠の信用性の崩れ、心理的な暴力性などがあると思ったからです。
最初は12人中11人が有罪になっていました。ほぼ全員が「証拠も揃ってるし、さっさと終わらせよう」という感じです。しかも、真夏で暑い。そういった外的要因も働いたでしょう。
もしかしたら、「皆有罪に投票しているだろう」と思って、自分も有罪に入れた、という人もいるかも。
なので、そんな中1人だけ無罪に入れた陪審員第八号。
皆は「何で無罪に入れたんだ?」といった態度を取ったり、詰問してきたりします。ある意味、第八号は集団心理になびかない様に見えます。
第八号は冷静に論理的に自分の考えを述べていきます。「本当にそうか?」と1つずつ確かめているのです。陪審員達は既に証拠とかを見聞きしていますが、それが崩れていくのです。
それにより、段々と他の陪審員達が無罪に考えを変えていきます。これが本書での見どころと断言して良いでしょう。
本作では誰かが誰かを殴ったりとかは起きません。しかし、それに近い事は起きます。特に第三号が第八号に色々と突っかかります。また、罵倒したりもします。
緊張感のある場面が進むに連れて出てくるのです。
なので、本作は身近に潜んでいるスリラーを体現したのではないか、と私は感じたのです。
第三号は傲岸不遜に見えるが・・・
12人の陪審員達はそれぞれキャラが違います。第八号は物事を冷静に考える力がありますが、それと対照的なのが第三号でしょう(第十号も似た様なキャラですが)。
第三号は自分の物差しで測って物事を決めつける様なところがあります。最初は証拠が充分だと思って有罪に入れていました。しかし、有罪の理由が段々と「あの少年が気に入らない」という方に変わっていくのです・・・。
読んでいて気持ちの良いキャラではありません。
子供っぽかったり感情的な所があるのは否めないでしょう。
でも、私は第三号に共感したのです。何故かと言うと、私にもそういう面があると思ったからです。
人は誰でも「自分はこういう人/事物は好きになれない」という傾向があるでしょう。私もあります。それを持つ事自体は悪くないです。持っていない、と言ったらむしろ嘘っぽく聞こえます。
だからといって、自分が好まない人や事物を「こういう奴らは皆ろくでもない!」と決めるのはやはり危険です。思考放棄になっていると言えるでしょう。
でも、本当は「自分の考えは間違っているのかもしれない」と、第三号みたいな人も気付いていると思うのです。
もしかしたら、それを認めたら自分が今まで気付き上げたものが全部崩れてしまう、と思っているのかもしれません。実際は崩れる事なんて無く、逆にアップデート出来るチャンスなんですけどね・・・。
第三号を「嫌な奴」と切り捨てるのは簡単ですが、では自分は本当に第三号の様な性質が無いと言い切れるのか? と私は感じます。言い切った人の方がむしろ危険そうな気がします。
ううむ、私は第八号の様な人物みたいな人とは程遠いですね・・・。
冷静になって物事を多角的に見る。言葉では簡単ですが実行は結構難しい・・・。
その他に感じた諸々
ページ数ですが、作者のことばや訳者あとがきも含めて約150ページです。なので、直ぐに読み終えられるでしょう。
ですが、読み応えや惹き付けられる部分は色々ありました。
他に感じた事を箇条書きで書いていきます。
- 少年は無罪という結論になるが、その後どうなったかは描かれていない。でも、それは本作では重要でないのかもしれない。
- 夏じゃなくて冬という設定だったらどうなっていたのだろう?
- 中年男性ではなく若い男性だけ、男女混合、女性のみとかだったら、また違った展開になったのだろうか?
色々アレンジが出来そうな作品の様にも感じました。
あと、昔この作品の映画版(シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演)を観た事があります。細部は忘れましたが迫力があった気がします。
機会があったら、久しぶりに見てみようかな?
簡単なまとめ
本作は1つの部屋に12人の中年男性が集まって、1人の少年を有罪か無罪かを論ずる話です。
内容的には地味めで華やかさはありません。突飛な事が起こる訳でもないです。
ですが、非常に濃密で緻密に作られた群像劇の様に感じました。特に第八号と第三号の緊迫感のあるやりとりは手に汗を握りました。見どころと言えます。
興味がある人は読んでみてはいかがでしょうか?
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