DARK MOORはスペインのバンド。
初期はメロディック・スピード・メタルを演奏していたが、本作『ORIGINS』ではレイドバックしたハードロックの様な感じになっている。
『ORIGINS』 は2018年にリリースされた11thアルバム。
全11曲収録。
デラックス盤には、2017年にマドリードで収録されたライブ音源のCDが付いている。全7曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)
バンドメンバー
- Alfred Romero:Vocals
- Enrik Garcia:Guitars
- Dani Fernández:Bass
- Roberto Cappa:Drums
前作『PROJECT X』の時とメンバーは変わらない。ただ、前作ではDaniはベースを弾いていない。
各楽曲ごとの解説と感想
DISC①
①Birth Of The Sun
ドラムとバグパイプの演奏で始まるミドル・テンポの曲。
バグパイプがこの曲の要になっていると言えるだろう。2:54~3:19の間奏部分はケルト要素が強くなる。が、それ以外は思った程そんなにケルト要素は無い。
正直地味な曲で、特にこれが1曲目かと思うと「う~ん・・・」という気持ちになってしまった。HR/HMの要素は薄くメロディアスでもない。ちょっとブルース・ロックっぽい。
出だしのバグパイプでは「おぉ」と思ったが、全体的には引き付ける力は弱い。
②The Spectres Dance
この曲にもバグパイプが使用されている。軽快な曲だ。
しかし、間奏(1:53~2:20)の部分以外はそれ程ケルト風ではない。
スピーディーな演奏がとても気持ち良いが、この曲もHR/HMの要素は薄い。メロウな演奏ではなく、特にギターが地味だ。
ノリは良いが、感情に訴えかけてくる曲ではない。
③Crossing Through Your Heart
甘い音色のギターで始まるミドル・テンポの曲。3曲目にしてようやく安心感を覚えた(笑)。
Aメロ・Bメロはキーボードやコーラスが無いに等しいので寂しく感じる。しかしサビにはそれらが加わりメロディアスさが増す。
ギターソロも良いが、琴線を揺さぶるまでにはいかないのが正直な感想だ。
意図的にメロディを抑えている様に感じてしまった。
④Raggle Taggle Gypsy
スコットランドのトラッドのカバー曲。アップ・テンポでノリが良い。踊るのに適している曲と言えるだろう。
Alfredがスペイン語訛りで早口で歌っている事が印象に残る。
美メロは無いが、フォーク風味のある曲なので、もう少しアレンジすればフォーク・メタルになりそうだ。
⑤In The Middle Of The Night
ややハードなミドル・テンポの曲。
再結成後のFAIR WARNINGが、演奏していてもおかしくない雰囲気がある曲だ。
サビになると美メロがやや出てくるが、琴線を揺さぶるまではいかない。
良い曲だが、色々と惜しい。
後はやはり、ギターの音が地味・・・。
⑥And Forever
ケルト風のバラード曲。
沢山入っている訳ではないが、フルートやバグパイプがケルトのメロディをここぞとばかりに奏でている。
3:56からはコーラスが入ってきて、ゴスペルっぽくなる。
ゆったりとしたメロウな曲で、聴き入るのに良い曲だ。
⑦Druidic Creed
この曲もケルト風味のある曲。アップ・テンポでノリが良い。
前奏・2番のサビの後の演奏・アウトロのバグパイプがバンドと一緒に演奏しているが、それが聴いていて気持ち良い。
HR/HMというよりR&Rに近いシンプルな楽曲と言えるだろう。
美メロがある訳ではないが、今作の中では良い方だと思う。
⑧Iseult
ケルト風味のあるミドル・テンポの曲。
Enrikは所々で少しずつではあるが、ギターソロの様なのを奏でている。
メロディ的には正直イマイチだが、郷愁を感じる。ストリングスを導入すれば、より良くなったのではないだろうか?
また、この曲は聖飢魔Ⅱがリリースした『PONK!』に通じるものがあると思う。
⑨Mazy
3分ほどのややハイ・テンポの曲。完全にバンド主体の演奏。
シンプルに攻めている感じの曲になっている。美メロは無くノリ中心と言える。
ただ、攻めた感じにするなら、もう少し激しくすればより良くなったと思う。
⑩Holy Geometry
やや重めのギターリフから始まるミドル・テンポの曲。
この曲ではAlfredのシャウトを久しぶりに聴く事が出来る。
アメリカン・ハードロックの様でグルーヴ感がある。
美しいメロディがある訳ではないし、DARK MOORっぽくもない曲だが、それが良い意味で他曲と異なる雰囲気を出している。それにより印象深い曲になっていると思う。
サビの時のキーボードは、ややDARK MOORらしさを出しているかも。
⑪Green Lullaby
ゆったりとした柔らかみのある曲。この曲はケルトの子守歌との事。
Alfredの優しい歌声が印象に残る曲と言える。
DISC②(デラックス盤のみ)
①The Chariot
最初はプレゼンターショーのJose Maraという男性が話している。スペイン語なので何を言っているか分からない。しかし「ダルク・モール」という言葉が聴こえる(地元スペインではDARK MOORをダルク・モールと呼んでいる様だ)。
Jose Maraの話が終わった後、前奏として『AUTUMNAL』に収録されていた「Fallen Leaves Waltz」が流れる。
その後「The Chariot」の演奏が始まる(3:28から)。ライブだから仕方が無いと思うが、ギターやコーラスが薄くのっぺりとした印象を受けてしまった。
ただ、コーラスに関してはBerenice Musa(DARK MOORの『ANCESTRAL ROMANCE』『ARS MUSICA』にゲスト参加した事あり)がいるのだから、彼女にもっと歌わせても良かったのではないかと思う。
サビになるとAlfredのボーカルが浮いている様に感じた(MIXの問題?)。
ただ、それでもこの曲が名曲である事に間違いはない。
②Love From The Stone
原曲に忠実に演奏している。
ギターソロになると音が物足りなく感じるが、それは仕方が無いのであろう。
AlfredとBereniceはライブでも、感情や緩急を豊かにして歌いこなしている。
③Together As Ever
基本は原曲通りだが、レコーディング時よりもギターの音が粗めで強く出ている。
Alfredが「ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ」と観客を煽っている所があるが、正直そんなに盛り上がる曲ではないので、観客の声はあまり聴こえない。
④Nevermore
元メンバーのElisa C.MartinとAlbert Marotoがゲスト参加している。
Elisaはこのライブでも力強く歌っており、DARK MOORを離れた後も健在である事が分かる。
Alfredが合いの手を入れたり、サビではElisaと一緒に歌っているが、完全に押されている状態。
音作りとしては原曲と『PROJECT X』に収録されているリメイク版を、混ぜた様な感じになっている。
いつ聴いても名曲だ。
⑤Tilt At Windmills
Alfredは原曲よりも伸びやか且つ力強く歌っている(右から聴こえる声はEnrikの声か?)。
演奏自体も原曲よりダイナミックになっていると言える。ライブで聴けた人は感動したのではないか?。私もその場で聴いてみたかったと思った次第。
⑥The Road Again
原曲よりも長い7分という長さだ。アコースティックギターとエレキギターで始まる。
最初はアコースティックの演奏中心だが、2:21からはバンド演奏になる。
ギターの音がよく聴こえ、原曲よりもハードで力強い。
1:45~2:15ではサビを観客に歌わせている。
⑦On The Hills Of Dreams
日本盤ボーナストラック。
この曲ではBereniceは歌っておらず、歌声はAlfredとEnrikのみである。
原曲と比べるとこぢんまりしていて、ちょっと物足りない仕上がりに感じてしまった。
全体的に迫力にも欠けている。
因みに原曲のタイトルは「On the Hill of Dreams」とHillにsが付かないが、このライブ盤ではHillにsが付いている。
全体的な感想
率直に言って「う~ん、これは・・・」という内容である。
今作はケルトの雰囲気やメロディを伴った曲が多い。個人的にはケルトのメロディは郷愁感を覚える。しかし、今作は「ただ、ケルトの要素を取り入れているだけ」という曲ばかりだ。
その為、「DARK MOORは進化した、新境地を開いた」というのとはハッキリ言って違うと思う。
「悪い意味でDARK MOORは別のバンドになってしまった」
過去の作品を沢山聴いてきた人ほど、そう思うのではないだろうか?
以前はあった琴線を揺さぶるメロディや、劇的でスリリングな展開を持った曲は皆無だ。
それだけではなく、HR/HMから脱却し始めているのではと不安になってしまう。
とにかくギターの音が地味! 「ブルージーだ」という意見もあるだろうが、それはDARK MOORには合わないと思う。
中には美メロが出てくる曲もある。しかしそれは「サビだけ」とか限定的なのである。
初めて聴いた人は「これって本当にHR/HMなの?」と疑問を抱くかもしれない。
そもそもEnrik自身がライナーノーツに「ロックを感じる曲」とか書いている時点で、もうHR/HMはおろか、ロックからも離れてしまっている事になるのではないだろうか?
デラックス盤のライブ音源についてだが、曲によって良し悪しが異なる内容になっている。
1番の聴き所は元メンバーのElisaが参加している④だろう。ElisaはDARK MOORに所属していた時よりも力強く歌っている。この曲はDARK MOOR屈指の名曲なので、ファンなら大喜びするに間違いない。
また、⑤は原曲よりもダイナミックな演奏で、Alfredも伸びやかに歌っているのがとても良い。
しかし、①⑦はギターがEnrikのみだから仕方が無いのだが、聴いていて物足りなさを感じた。
ただ、DARK MOORは今作より前にライブ盤をリリースした事が無いので、貴重な音源と言える。
貴重な音源ではあるが、もう2~3曲収録してくれても良かったのではないかと思う。特にElisaが参加した「Maid Of Orleans」を収録してくれたら、ファンは更に歓喜しただろう。
因みにこのライブは2017年にDARK MOORが20周年を祝う為に行われたのだが、何の20周年なのだろうか?
結成は1993年、Demoを初めて出したのは1996年、1stアルバムを出したのは1999年だ。
どれをとっても20年にはならないが、一体何なのか気になる。
先に書いた様に今作『ORIGINS』は過去の作品を聴いた人ほど、「う~ん」と感じるだろう。
では初めて聴く人になら良いかというと、正直それも違う。
本音を書く。
ハッキリ言ってお薦めは出来ない。
厳しい事を結構書いたと思う。しかし、これもDARK MOORが好きだからこその意見だと思って頂けたら嬉しい。
お読み頂き有難うございました。ブログ村に参加しています。
にほんブログ村