篠田桃紅『百歳の力』を読んだ感想

皆様こんにちは、霜柱です。
日本の美術家/エッセイスト、篠田桃紅(しのだ とうこう)さんの『百歳の力』(集英社新書)を読みました。

今回はこの本を読んだ感想を書いていこうと思います。
感想
自由に生きるとは?
著者の篠田さんは1913年生まれで、本書が刊行された2014年の時には101歳になっていました。戦前・戦中・戦後という時代を生き、様々な苦難や波乱万丈な人生を送ってきました。
特に戦前や戦中は今よりも男尊女卑があったり、個性的な生き方を選択するのが難しかったでしょう。
周りが世間の常識に従う中、篠田さんはそうしませんでした。そうしなかった事によって周りより苦労した部分はあったかもしれません。
ですが(ご本人はそう思っていないようですが)一貫して芯のある生き方をしていると感じました。どんな事があっても自分という軸をずらさない強さを持っています。
ですので、読んでいて「おぉ!」と圧倒させられる部分がありました。だからこそ、世界で活躍出来たのかもしれません。まぁ、篠田さんは「そんな卓越した事してないわよ」と言うかもしれないですが・・・。
また、篠田さんは自由についても本書で語っています。
自由になるというのは、超越するというのとは違います。客観視する事ができる、ということです。客観視するためには、自分が独立していなければなりません。(略)だから自分の位置を客観視するためにも、自由でなければならない。なにかにとらわれていては、客観視はできない。
至言だと思います。
そうなると、私の人生って型にはまった、篠田さん流に言えば「紐つきの世界」で生きている事になるのでしょう。
自由に生きるとは何か? を本書を読んで考えさせられましたね。
ある意味、自惚れや図々しさが必要なのかもしれません。
刺さった名言/至言
本書は小さい頃からの生い立ち、戦争の経験、渡米、富士山などについて書かれています。
その中で、刺さった言葉が幾つかあるので、それを引用します。
私は長く生きてきて、自殺するほどの、だめな世の中でもないと思うけど、生きてきてほんとうによかった、と讃美するほどの世の中でもないと思いますね。それほどの期待を持たなければいいんです、この人生というものに。夢のような期待を持ったらまちがう。といって、絶望しちゃえっていうほどのものでもない。
誰か忘れましたが、これと似た様な事を言った作家が昔いた様な・・・。
篠田さんのこの言葉を読むと、この世界にそんなに期待や絶望もしなくても良いんだと、少し楽な気持ちになりました。だからと言って、無関心になれという訳でないと思います。
自分を見失う程の期待や絶望を相手に向けるな、という事なのかもしれません。
人間は、個人というものをまず立てて、それからみんなで考えて、お互いに一緒にやるべきときはやったほうがいいし、個人としてやるべきことは個人がやる。
分かりやすい言葉で書いてあり、一見「当然じゃないか」と感じるでしょう。
でも、日本は昔も今も全体主義的なところがあります。それが悪い訳ではありませんが、それが強すぎると、他人とは違う個人の才能や能力を活かせないばかりか、潰してしまう事もあるでしょう。
ですので、どういう時に個人でやった方が良いか、みんなでやった方が良いか? それを柔軟的に考えて動ける力が必要なのかもしれません。
他にもまだまだ刺さったのはありますが、特にぶっ刺さったのは〈一流の仕事とは〉の項です。
この項はほぼ全部引用したい程ですが、それは流石に良くないかもしれないので、簡単に要約すると「自分の身の周りで不都合な何かが起き、それを仕事が上手くいかない言い訳にするのは甘えだ」「周りの人も甘やかしているのが多い」という感じでしょうか。
結構厳しめかもしれませんね。
でも、これは「失敗は許さない」「年中ストイックでいろ」という訳でありません。人間なので、どうしても上手くいかなくて失敗する事や、甘えたくなる事はあるでしょう。私もしょっちゅうあります(笑)。
しかし、それによって仕事の質にムラが出るのは良くない、という事だと思います。
全てを割り切る事は出来ませんし、相成れないところも出てくると思いますが、「これはこれ、それはそれ」と切り離して、何かに努める気持ちを忘れてはいけないという事のかもしれません。
簡単なまとめ
全体的に読みやすくて面白かったです。篠田さんの子供時代から美術家として活動するまでの事が書いてあります。
今も難しいところはあるかもしれませんが、大正生まれの篠田さんの時代は、女性が結婚せずに独立して仕事をする事に対して、かなり奇異の目で見られたでしょう。
しかし、そういうのに翻弄されずに101歳(当時)まで生きてきた篠田さん。だからでしょうか? 文体は柔らかくて優しいですが、ブレない芯の強さが誌面上からヒシヒシと伝わってきました。
時には厳しめな事も書いてありますが、鼓舞された気持ちになりました。
人生論的な本だとも思うので、興味がある人は読んでみてはいかがでしょうか?
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