ドイツのメロディアス・ハード・バンドが1992年にリリースした1stアルバム。
全12曲収録。
2006年にボーナストラック2曲を追加して再発した。
バンド・メンバー
- Tommy Heart:Vocals,Backing Vocals
- Helge Engelke:Guitars,Keyboards,Backing Vocals
- Andy Malecek:Guitars
- Ule W.Ritgen:Bass,Backing Vocals
- CC Behrens:Drums
FAIR WARNINGはZENOというバンドから始まっている。ZENOはZeno Roth(2018年2月5日死去)という稀有なギタリストがいたバンドある。Uleは最初ZENOにいて、そこにAndyを除いたメンバーが集結する。しかし、ZENOはレコード会社からまともな支援を受けることが出来ず、Zeno Rothはバンド活動に嫌気が差して辞めてしまう。その後、残ったメンバーにAndyを加えてFAIR WARNINGが結成された。
各楽曲ごとの解説&感想
①Longing For Love
出だしからTommyのハイトーンが聴けるややハイ・テンポの曲。瑞々しいサウンドがとても心地良い。ノリが良く、歌メロも印象に残りやすい。1曲目として最適な曲である。シンプルな楽曲だが、その分メロディの良さが目立つ曲である。
②When Love Fails
ギターの単音弾きで始まるミドル・テンポの曲。この曲も歌メロが印象に残りやすい。サビでのコーラスがより曲の印象を強くし、輝かせている。同時に、やや物憂げな雰囲気がするのもまた良い。
③The Call Of The Heart
切ないサウンドのギターから始まるバラード曲。ただ、バラード曲と言ってもギターのサウンドが強く出ている曲である。キーボードも所々で曲を輝かせている。2:07~2:35のギターソロも琴線を揺さぶるメロディである。力強さとメロディの美しさの両方が成立している曲である。
④Crazy
出だしはハードな演奏だが、全体的には軽やかさも感じるミドル・テンポの曲である。Bメロやサビでのキーボード・サウンドが曲を彩っている。
明るくノリの良い曲(パーティーに合いそう)でありながらも、哀愁を持ち合わせている曲だ。
⑤One Step Closer
神秘的なキーボード・サウンドが少しずつフェイド・インし、そこにバンド・サウンドが重なって始まるミドル・テンポの曲。全体的に楽器にリバーブがかかっており、アメリカン的な雰囲気が漂っている。他の曲とは違ったキラキラ感があるが、ただキラキラしているだけでなく、印象に残るメロディをしっかりと持っている曲である。
⑥Hang On
ピコピコした煌びやかなキーボード・サウンドが全体的に入っているミドル・テンポの曲。0:09~0:21ではいきなり早いギターソロが出てくる。曲の終わり(3:15以降)でも早いギターソロが導入されていて、そのままフェイド・アウトする。メロディよりもノリを重視している気がした。
⑦Out On The Run
疾走感があり、ライブでは間違いなく盛り上がりそうな曲だ。出だし(0:14~0:22)からギターソロがあり聴く者をノリノリにさせてくれる。勿論、ノリだけでなくメロディの美しさも忘れていない。ハードなだけでなく、印象に残る歌メロがしっかりある。また、鮮やかなギターソロも良い。
⑧Long Gone
アコースティック・ギターから始まるバラード曲。他の曲もそうだが、この曲は特にメロディの美しさが際立っている。少し物悲しい雰囲気の曲であり、Tommyの情感のある歌声が見事にマッチしている。
ドラマチックな曲だが、大仰にはなっていない。バンドとしての力量を感じると思う。同じバラードでも③程ハードではない。また、他の人も絶賛しているが、琴線を揺さぶるギターソロが何よりも堪らない曲である。
⑨The Eyes Of Rock
疾走感がとてもある曲。聴いていると自然に体を動かしたくなる曲である。ドライブをする時に合いそうな曲だ。この曲もライブで盛り上がる曲であろう。メロディも良いので、気持ちが良く爽快さも感じる曲である。
⑩Take A Look At The Future
ミドル・テンポの曲で、今作の中では1番地味に感じる曲かもしれない。キーボードは少なく、ギターソロはあるが、ひたすらリフに徹している気がした。ただ、サビではコーラスが活躍しており、印象に残るメロディも合った。
⑪The Heat Of Emotion
Zeno Roth作曲のハイ・テンポの曲。もう出だしから美しいサウンドを聴く事が出来る。出だしのギターとキーボードの音は堪らない。勿論出だしだけでなく、全体的に美旋律が入っている。その為、とても躍動感のあるサウンドに仕上がっている曲だ。
⑫Take Me Up
アコースティック・ギターで始まるバラード曲。出だしに小さくエレキ・ギターのソロも混ざっている。この曲も悲しげだが、美しいメロディを聴く事が出来る。Tommyの哀愁ある歌声を満喫できる曲だ。
⑬In The Ghetto
2006年再発盤のボーナス・トラック。ELVIS PRESLEYのカバー曲。アコースティックの演奏である。力強いアコースティック・ギターの演奏が耳に残る。Tommyは抑揚を付けながら熱唱しており、悲しげな歌メロと合っている。
原曲を知らない人が聞いたら、FAIR WARNINGの曲と思うのではないだろうか? ELVIS PRESLEYというのは意外な選曲の様に思えたが、FAIR WARNINGの持つメロディ性と合っているので違和感は無い。
⑭Hold Me
2006年再発盤のボーナス・トラック。出だしからギターソロが演奏されている、明るいミドル・テンポの曲。全体的にリバーブがかかったサウンドになっている。80年代のアメリカのバンドのサウンドを思い出すサウンドだ。フワフワ感がある。
私的にはオーストリアのメタル・バンドEDENBRIDGEにカバーしてもらいたい(出来たら初期の頃のサウンドで)。合うのではないだろうか。
全体的な感想
もう名盤である。名盤‼ いや超名盤である。
と、いきなり興奮してしまったが、本当にそうなのである。どの曲もシングル・カット出来る程のとてもレベルの高い楽曲が揃っているのである。捨て曲は勿論、いまいちな曲が1曲も無い。これは本当に凄く稀有な事である。
この『FAIR WARNING』の何が凄い事なのかというと、メロディの質の高さである。どの曲も印象に残る美しいメロディが必ず入っている。それも「ここにギターソロやキーボードを入れておけば良いだろう」というそんな安易で大雑把な感じではない。メロディ愛好家のツボを完全に押さえているサウンドなのである。どうしてここまで追求して作れたのか? そのコツを教えてほしいと思うくらいだ。
また、全ての曲が4分前後というコンパクトな時間になっているのもポイントである。曲の時間が短い分、非常に濃い内容となっているのだ。その為、飽きる事が無く、何回も聴きたくなってしまう。
バンドによっては無駄に時間を延ばし、間延びした様に感じてしまう曲を作っているのがいるが、この『FAIR WARNING』にはそれが一切無い。奇を衒う様な事はしていない事に、実直な思いを感じる。
実は私はこの『FAIR WARNING』を聴いて、HR/HMを聴き始めるようになった。この作品に出合わなかったらHR/HMを絶対に聴いていないと断言出来る。『FAIR WARNING』を聴く前は「HR/HMはゴリゴリしたヘビーなサウンドを長髪、もしくはスキンヘッドのがたいが大きい男性が演奏している」というイメージがあった。しかし『FAIR WARNING』はその固定概念を破壊した。「HR/HMにもこんなに美しいメロディを持ったバンドがいるのか!」とノックアウトされた。
貴方が美しいメロディを好むのであれば、一切疑問に思わず、この『FAIR WARNING』を聴いてほしい。再度書くが超名盤である。これを聴かなかったら人生損すると言っても過言ではない。
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