オーストリアのシンフォニック・メタル・バンドが2008年にリリースした6thアルバム。
全11曲収録(日本盤ボーナストラック1曲含む)。
※今作からシンフォニックの要素が強くなったので、シンフォニック・メタル・バンドとする。
バンドメンバー
- Sabine Edelsbacher:Vocals
- Lanvall:Guitars,Keyboards,Piano,Bouzouki,Pipa
- Frank Bindig:Bass,Growls(Track 11)
- Max Pointner:Drums
[主なゲストメンバー]
- Sebastian Lanser:Drums
- Robby Valentine:Backing Vocals,Choirs
- Dennis Ward:Backing Vocals,Choirs
- The Czech Film Orchestra
1st『SUNRISE IN EDEN』から前作『THE GRAND DESIGN』までドラムを叩いていたRoland Navratilは脱退。新ドラマーとしてMax Pointnerが加入したが、レコーディング終了後の加入の為、今作でドラムを演奏しているのはSebastian Lanserという人物である。
また、前作に引き続き、Robby ValentineとDennis Wardがコーラスで参加している(どの曲でRobbyが歌っているか、Dennisが歌っているかまでは分からない・・・)。
各楽曲ごとの解説と感想
①The Force Within
1分程のインストで、荘厳なオーケストラの演奏である。静かに始まり、少しずつ盛り上がっていく。
1曲目としての掴みはバッチリである。
②Shadowplay
ヘビーなギターリフから始まる、ややハイ・テンポの曲。Aメロにはシタールの演奏が入っていて、異国情緒の雰囲気を出している。
荘厳なオーケストラの演奏も入っており、曲に壮大感をもたらしている。ただ、肝心のサビの歌メロが弱い。せっかくAメロとBメロで盛り上がってきたのに、サビで悪い意味でゆったりした演奏になってしまっているので、サビの部分でもヘビーなままで演奏してほしかった。
③Paramount
Aメロでヘビーなギターサウンドに絡まる、打ち込み風のキーボードが特徴の曲。しかしメロディアスで印象に残る歌メロを聴く事が出来る。
また、Sabineの美しく優しい歌声がとても心地良く感じるだろう。
オーケストラはここぞという時に導入されており、曲に重厚感を与えている。ただ、ギターソロが無いのを寂しく感じる人はいるかもしれない。
④Undying Devotion
今作のお薦め曲である。
やるせない旋律を弾くオーケストラが、とても印象に残るバラード風の曲。Aメロでは民族楽器(Bouzoukiか?)の音が出て来て、異国情緒の雰囲気になるが、Bメロになるとオーケストラの演奏やコーラスが入ってくる。そのメロディは琴線を揺さぶる。
サビではオーケストラも主旋律を弾いており、Sabineの歌声と作用し合って荘厳で高貴な感じになる。
とてもドラマ性があり、素晴らしい曲だ。
⑤Adamantine
ギターの演奏から始まるミドル・テンポの曲。
正直、この曲は全体的に単調でイマイチである。メロディもリフも弱く、印象に殆ど残らない。
盛り上がる曲でもなければ、聴き入る曲でもない。それでも、まあまあ良かったのは3:24~4:32はギターソロである。爽やかな雰囲気でありながら、泣きのメロディを演奏していたのは良かった。
⑥Whale Rider
楽器の演奏はピアノとオーケストラのみである。Sabineの歌声を堪能出来るバラード曲だ。
厳かな演奏だが、大仰にはなっていないオーケストラがSabineの透き通った歌声を活かしている。聴いていると心が洗われ、落ち着いた気持ちになる曲である。
⑦Remember Me
キラキラしたピアノの音色が特徴のミドル・テンポの曲。Bメロになると、カラフルなキーボードの音色になる。
Sabineの歌声、バンドの演奏、そしてコーラスやオーケストラの演奏が、それぞれ良い具合にマッチしている様に思えた。
ヘビーさはあまり無いが、流れる様なメロディが良い。
⑧Fallen From Grace
軽めのギターリフから始まる曲。ただ、全体的にはギターリフが目立つメタリックな曲である。ややハイ・テンポの曲だが、どうもノリずらいので盛り上がりはしないと思う。
オーケストラやコーラスも健闘しているが、メロディがイマイチな為、あまり美しくは感じないだろう。
⑨Place Of Higher Power
オーケストラとバンド演奏で始まるミドル・テンポの曲。イントロでオーケストラはサビのメロディを演奏している。
2:52~4:01の間奏は、民族楽器を用いた中国的なフレーズから、ギターソロへとと繋がる展開だ。民族的なフレーズを取り入れるのはEDENBRIDGEの得意とする所である。
歌メロは覚えやすく、Sabineの繊細な美しい歌声をしっかりと活かす事が出来ている。
⑩MyEarthDream Suite(For Guitar And Orchestra)
日本盤ボーナストラック。サブタイトル通り、ギターとオーケストラのみのインストである。
素朴で優しい音色のアコースティックギターが全編で演奏されている。テクニカルな演奏は無いが、その分味わい深いサウンドとなっている。
1:15からはオーケストラが少しずつ入り、曲を盛り上げていく。しかし、大仰になる事はない。あくまで、ギターの演奏を活かす為の演奏をしている様に思えた。
個人的には3:26~3:39の、少し演奏がゆっくりになる弦楽器のメロディが琴線に触れた。4:00~4:37は唯一のエレキギターの演奏で、ソロを弾いている。しかし、音色が中途半端な感じで、浮いて聴こえてしまった。もう少し高めの透き通った音色にしてくれた方が、オーケストラやアコースティックギターともっと調和したのではないかと思う。
⑪MyEarthDream
12分40秒程の曲で6部構成となっている。
Ⅰ)The Road Aheadはまるでモダンメタルの様なゴリゴリしたギターリフから始まり、Bメロでもそれを弾いている。ここではギターリフが1番目立つ。
また、荘厳なオーケストラが重なり、サビの歌メロは印象に残る仕上がりになっている。
3:58頃からⅡ)Pristineに入り、オーケストラのみのインストとなっている。
壮麗で雄大な演奏をしており、ハリウッド映画に使われそうな曲となっている。
5:01頃からⅢ)Agent Of Changeのパートとなる。
バンド演奏、Sabineのボーカル、男性コーラスが入り急展開していく。
5:28頃からⅣ)The Uninvited Guestに入る。このパートにはオーケストラは入っておらず、次へ繋ぐ為のパートという感じがする。
6:46~8:00はギターソロである。途中でややスピードを落として弾く所から、よりメロディアスになる。ただ、もう少しグッとくる物が欲しい。歌メロは良くも悪くもない。
8:01頃からⅤ)The Last Cardのパートとなる。再びヘビーなギターリフが炸裂する。サビのメロディはⅠ)The Road Aheadと同じ。また、Frank Bindigのデスボイスが、ほんの少し出てくる。
AメロやBメロはひたすらヘビーで急いている様な演奏だ。ヘビーになったりメロディアスになったりするパートである。
11:05頃からⅥ)Slumbersのパートだ。ピアノとオーケストラとSabineのボーカルと男性コーラスの演奏となっている。
優雅で落ち着きのある演奏が、エンディングに向かっている事を思わせるパートである。Sabineの美しい声と、少し物悲しいメロディが良い。
ただ、もう少しこのパートで盛り上げるアレンジをしてほしかった。そうすればSabineのボーカルと相俟って、より印象に残ったのではないかと思う。
後は、曲の終わり方が急な気がした。
この大曲は、全体的に緩急がとてもあり、印象に残る所もあったが、少し冗長の様な気がした。ⅠやⅤのパートを少し短くして、最後のⅥのパートをもう少し琴線を揺さぶるメロディを入れたら、よりドラマティックになり、起承転結がはっきりしたのではないかと思う。
全体的な感想
今作『MyEarthDream』は生のオーケストラを起用しているのがポイントだ。オーケストラは厳かな演奏をしており、作品に上品さや貫録を与えている。
ただ、曲としては良い曲と、そうでない曲の2つにハッキリ分かれる気がする。その理由はLanvallのギターにあると思う。
前作『THE GRAND DESIGN』がPOP寄りな雰囲気で、ギターも激しくなかったが、今作『MyEarthDream』では打って変わってヘビーなギターを弾いている。
そのヘビーなギターがリフもソロも中途半端なサウンドになっており、聴いていて不自然さを感じる時があった(②⑤⑧など)。それだけでなく、琴線を揺さぶるメロディが減退しており、Sabineの繊細で美しい歌声を活かしきれていない曲も多かったのが残念なポイントである。
歌唱力や演奏力は1st『SUNRISE IN EDEN』の頃と比べると、とても飛躍している。しかし、その飛躍した力を上手く活用出来ていない様に思った。
Lanvallは非凡なメロディアスな曲を作る事が出来、それがSabineのボーカルと合わさった時、比類を見ないと言っても良い程の美しい曲が出来上がるのである。勿論、今作にも美しく良いメロディを持った曲はある(③④⑥⑦など)。
だから決して駄作ではない。しかし、過去作を聴いた人にとっては好き嫌いが分かれる作品になるかもしれない。逆に初めてEDENBRIDGEを聴く人は、今作『MyEarthDream』から聴いても良いと思う。
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